2シーズンぶり3回目のCSに臨む島根が優勝する可能性は…【B MY HERO!】

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3回目のCS出場を果たした島根スサノオマジック 【(C) B.LEAGUE】

 バスケットボール、そしてBリーグファンの皆様、皆様にとっての24-25シーズンはここまでいかがでしょうか?

 B MY HERO! 特派員の一員で、バスケットボールコメンテーターの朴航生です!

 今シーズンもレギュラーシーズンの幕が降り、いよいよここからはチャンピオンシップ(以下CS)の開幕となります。今回は、私が今季レギュラーシーズン(以下)RSのホームゲーム全30試合を担当させていただいた、島根スサノオマジックの3度目となるCS出場にあたり、「島根の優勝する可能性」と少し尖ったテーマで記事を書かせていただけることになりました。

 CS出場を決めている他の7クラブ、そして惜しくも今季はCS出場に届かなかった16クラブのファンの皆様には「あら、じゃあ今回は読むのをやめておこうかしら?」と今まさにページをスワイプしようとしているその指を少しお止めいただき、ご自身の推しクラブや推し選手、推しHCに少しここでの話を置き換えた場合どうだろうと想像しながらお読みいただけたら幸いです。

チャンピオンシップのフォーマットを確認

ファイナルは今季も横浜アリーナで開催 【(C) B.LEAGUE】

 まず、各地区の上位2クラブとワイルドカードから2クラブが出場するCSの舞台は、それぞれ上位クラブのホーム戦が最大3試合行われ、その内の2つを先に勝ち取ったチームが次のラウンドへ進出していきます。セミファイナルまでは同様に行われ、ファイナルに限っては中立地である横浜アリーナにて5月24日から最大3試合が行われ、ここでも先に2勝したチームが今季の王者となります。

 この辺りのフォーマットは昨年と同様ですから、Bリーグを追い続けているファンの皆様には特別新しい部分はありませんが、今季からBリーグを見始めた新しいファンの皆様や、群馬クレインサンダーズのように初出場となるチームのファンの皆様の中にはこの辺りも理解を少し深めながら、最後の最後まで楽しんでいただければと思います。

 このフォーマットの中でいくつかのポイントがありますが、「ワイルドカード以外の全てのチームがセミファイナルではホーム開催の可能性を秘めている」というところが一番大きなポイントです。次に「ファイナルはどちらのホームでもない中立地で行われる」、これが二番目に大きなポイントとなっています。

 少し話が逸れますが、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が昨季戦ったMLBのチャンピオンシップシリーズや、八村塁選手がロサンゼルスレイカーズの一員としてつい先日まで戦ったNBAのプレーオフのように、お互いのホームを行き来するということがありませんから、ホームコートアドバンテージが生まれるのはセミファイナルまでに限られますが、やはり勝敗を左右する大きな力になるのは間違いありません。

 しかし、Bリーグの歴史を振り返ると、常にホームチームが次のラウンドへ進んでいく、というわけでもないようです。こちらは昨季の特集ページ(https://basketballking.jp/cs23-24)になりますが、クォーターファイナルでは勝ち上がった4クラブ中3クラブがホームチームではありませんでした。ということは、同時にRSの順位下位チームがそれだけ上位を打ち倒し勝ち上がっていったということになりますから、今季もシンプルに上位チームが有利である、という見方をするのは些か短絡的すぎるように感じます。各チームの相性や戦術、ロスター状況、マッチアップの噛み合いなど、様々な要素が複雑に絡み合う中で、CS用の手札を持っているか、また突然変異のようなXファクターまで、何が勝負の分かれ目となるかの予測は困難を極めるでしょう。

CSを勝ち上がりリーグ優勝の可能性を算出

CSを制したチャンピオンクラブに贈られるトロフィー 【(C) B.LEAGUE】

 少々前置きが長くなってしまいましたが、ここからは島根の優勝の可能性とその道筋、そのために必要なものが一体なんなのか、個人的に今季の島根戦はアウェー戦を含めてもおそらく見ていない試合はありませんので、その上で私見となりますが探っていきたいと思います。

 先立って、少し仮定の話をさせていただきますが、仮に出場8クラブがそれぞれ五分五分の力を持ち合わせているとした場合、つまりQF、SF、そしてFをそれぞれ勝ち上がる可能性が50%とした場合は、優勝する可能性は0.5*0.5*0.5=0.125、12.5%ということになります。

 これは単純に1/8の確率ですからもう少し分解して考えてみたいと思います。各試合ごとに50%で勝つ力がどのクラブにもあると仮定した場合、こちらは統計学の二項分布を用いて計算することができます。

 3試合中2勝する確率は、3C2(3つの中から2つを選ぶ組み合わせ)× (1/2)^2 × (1/2)^(3-2) で表され、3C2 = 3! / (2!(3-2)!) = 3なので、確率は 3 × (1/2)^2 × (1/2) = 3 × (1/2)^3 = 3/8 = 0.375 です。

 これらの式を覚える必要は全くありませんが、つまり、50%で試合に勝つチームが3試合中2勝する確率は37.5%です。優勝するには各ラウンドでこの確率で繰り返すので、単純に 0.375 × 0.375 × 0.375 = 0.052734375となります。

 8クラブが五分五分だと評価した上で、あるチームが優勝する確率、それは『約5.27%』です。おおよそ『20回に1回』です。

 皆様はこの数字を見てどう思いますか?

 5%以上あると思うのか、もしくは5%程度しかないと思うのか、人によって受け取り方は様々だと思います。しかし、私は現在のBリーグでチャンピオンシップを勝ち抜き、優勝を手にするというのはおそらくこれぐらい細い道筋を辿らなければ達成できないのでは、と感じております。これはRS一位クラブも、WCの下位クラブも同様で、今季も昨季以上に、最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もクライマックスなチャンピオンシップとなるはずです。(そうです、地面師ファンです)

新体制で臨んだシーズンで新しいラインナップを構築

島根のけん引する安藤誓哉 【(C) B.LEAGUE】

全試合出場を続けるダブルキャプテンのニック・ケイ 【(C) B.LEAGUE】

 それでは、島根スサノオマジックが優勝する確率がその5.3%より高いか低いか、ですが、個人的にはもう少し高いと思っております。それには様々な要素が絡むので“現時点(執筆時はRS最終節直前)では”、とさせていただきます。

 ではなぜ高いのか、というところになりますが、まずはロスター状況です。安藤誓哉選手とニック・ケイ選手がダブルキャプテンとしてチームを牽引していますが、過去2シーズン(22-23/ 23-24)を含めても安藤選手は僅かに4試合の欠場、ケイ選手に至っては全試合出場継続中、そして今季はそこに怪我から返り咲いたジェームズ・マイケル・マカドゥ選手の3名が不動のスターディング5として58試合に出場しています。中でも、マカドゥ選手はBリーグのキャリアの中で初となるRS全試合出場達成を目前としており、彼ら三人が今季も浮き沈みがある中でそれでも西地区2位での出場を決めた理由の一つなのは全会一致の意見でしょう。

 今回の島根はホームコートアドバンテージがありませんが、過去にアルバルク東京に追い込まれ、勝ち上がった初のチャレンジ、そして同様に追い込まれ敗退した2回目とホームだからこそのプレッシャーというのが第3戦には必ずのしかかってくるものだと感じます。リーグ屈指のホームコートを有する琉球ゴールデンキングスとのQFで最初の2戦のうちどちらかで勝ちを掴むことができれば、その圧倒的な声援が琉球の選手たちには大きなプレッシャーとなって襲いかかる可能性も大いにあるだけに、とにかく1勝を上げること、その第一歩を沖縄サントリーアリーナで踏み出せることができれば、自ずと道が開けるでしょう。

 戦術面では、琉球の岸本隆一選手のシーズンアウトが確定している中で、琉球のピックアンドロールに対しての守り方、そこに対する手札をどう切るかがゲーム展開への大きな要素となりそうです。島根のRS最終戦第2戦で見せた「アンダー」のカードを最初から出し続けるのか、ジャック・クーリー選手とアレックス・カーク選手のクリアアウトからのオフェンスリバウンドへの参加を難しくさせ、同時に確率の高くないであろうプルアップ3PTへ仕向けることでロングリバウンドを誘発させ、押し込む形のセカンドチャンスポイントを減らせる可能性は高まります。現代バスケットはそれだけで勝負が決まる手というのはあり得ませんが、こと今回の状況を加味すると、琉球のオフェンスリバウンドへのアンサーがこのシリーズの一つのポイントになりそうです。

琉球攻略のキープレーヤー、ジェームズ・マイケル・マカドゥ 【(C) B.LEAGUE】

 CSにおいて、RSの平均値をしばしば言われるステップアップではなく、ジャンプアップするような選手が出てくるか、というのも勝ち上がるためには必要不可欠です。RS最終盤に復帰したコティ・クラーク選手や、今季を通して昨季以上の活躍を見せている津山尚大選手、晴山ケビン選手、北川弘選手がそのような要素になり得る可能性は大いにあるでしょう。

 最後に、再度になりますが、今季CS出場クラブのそのどのチームも簡単に2連敗するようなチームはないと思っており、これは島根も同様で、優勝するためにはとにかく最初の2戦の内1つを勝ち取ること、そして”GAME 3”へ持ち込むことが勝ち上がるために最も必要な要素でしょう。24点差を逆転された日も、オーバータイムで敗れた日も、そのどれもが最後に糧となるかもしれません。

Xファクターになるべく可能性を秘めた(左から)晴山ケビン、コティ・クラーク、津山尚大 【(C) B.LEAGUE】

”WIN THE DAY” このスローガンの元、その日がまるで最後かのように死力を尽くし勝利に向かう選手達に対し、地球上でこれ以上ないぐらいに虫のいい話かもしれませんが、やりきったと思えるシーズンとなってほしい、そのためにも島根だけでなく全てのチームの選手にCSでは大きな怪我などのトラブルが起きないことを心から願う事、これを今回の締めくくりとさせていただきたいと思います。

朴航生(B MY HERO!特派員)

【(C) 朴航生】

岡山学芸館高校を卒業後、アメリカ留学を経て、SHIZUOKA GYMRATSの一員としてABAへ参戦。帰国後bjリーグトライアウトの門を叩き、現B1の島根スサノオマジックへ入団、2シーズン在籍した。その後、Bリーグ開幕に伴いご縁を頂き、現在はバスケットボールコメンテーターとして島根のホームゲームを中心に奮闘中。ホーム、アウェーを同様に解説する姿勢、わかりやすい戦術解説に多くのファンを持つ。

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著者プロフィール

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