【記録と数字で楽しむセイコーGGP2025】男子400mハードル:“ハードル二刀流・世界歴代3位”の豊田が連覇に挑む。パリ代表・筒江、世界選手権標準突破済・井之上も参戦

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【JAAF】

5月18日(日)に国立競技場で行われる「セイコーゴールデングランプリ陸上 2025 東京」。

世界陸連が、「コンチネンタルツアーゴールド」として開催する国際大会だ。
ワールドランキングにおいて「Aカテゴリー」に位置付けられており、順位に応じて付与されるポイントが非常に高いため、9月に国立競技場で開催される「東京世界選手権」への出場を目指す選手にとって非常に重要な大会である。

ここでは、現地観戦やTV観戦のお供に特に注目される種目について「記録と数字で楽しむGGP2025」をお届けする。
なお、原稿の締め切りの関係で、2025年シーズンの試合結果や情報は4月30日までに判明したものしか盛り込めていないことをお断りしておく。
また、記事の内容にはこれまでの各種競技会のこのコーナー(「記録と数字で楽しむ・・・」)で紹介したものもかなり含まれるが、データはできる限り最新のものに更新した。

・記録や情報は、原則として4月30日判明分。
・年齢は、2025年5月18日現在のもの。
・文中、敬称略。

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“ハードル二刀流・世界歴代3位”の豊田が連覇に挑む。パリ代表・筒江、世界選手権標準突破済・井之上も参戦

パリ五輪代表の豊田兼(トヨタ自動車/自己ベスト47秒99=24年)と筒江海斗(ST-WAKO/48秒58=24年)がエントリー。慶大4年だった1年前に48秒36でゴールデングランプリを制した豊田は連覇に挑む。
これに24年8月1日から有効となった世界選手権参加標準記録48秒50を唯一クリアしている井之上駿太(富士通)が加わる。法大4年だった9月の日本インカレの準決勝で48秒46をマークし、それまでの自己ベストを一気に0秒78も更新して代表争いのトップに躍り出た。

海外からは世界選手権で22年3位、23年6位のトレバー・バシット(アメリカ/47秒38=23年)が参戦。ほかに、48秒11(23年)と48秒54(24年)の選手が出場予定。自己ベストではバシットが抜けているが、24年のベストは6月の全米五輪トライアルでの47秒82(3着)、同年のセカンドベストは五輪・準決勝での48秒29(1組4着で落選)にとどまっている。48秒11のコスタリカの選手も24年ベストは5月の48秒56なので日本人選手のいい相手になってくれそうだ。


◆日本の層の厚さは、世界一!◆
話は変わって、110mHの項目で紹介したが、同種目の2024年世界100傑内入傑の日本人は9人で28人のアメリカ、11人のジャマイカに次いで世界3位だった。が、400mHはそれを大きく上回っている。
400mHの24年世界100位の記録は49秒58で、19人の日本人選手が入傑。これはアメリカの16人を抑えて堂々の「世界No.1」だ。3位は6人のジャマイカ、4位はイギリスの5人。日本の層の厚さは何とも素晴らしい。


◆豊田に24年ぶりの「日本新」の可能性も……◆
24年5月のゴールデングランプリ、6月の日本選手権、8月のパリ五輪の時にも紹介したが、豊田は110mHと400mHの「ハードル二刀流」で世界陸連採点表(2025年版)の両種目の合計ポイントでは25年4月30日現在で「世界歴代3位」。現役選手では「世界2位」である。なお、23年の48秒39から24年に47秒23とタイムを大きく伸ばしたC・ディーンに6ポイント逆転されたが、23年10月1日から24年6月6日は「現役選手世界No.1」だった。

<400mH48秒49以内の選手の110mHと400mHの合計ポイント「世界歴代トップ16」と400mHでの世界大会メダル実績>
・400mHのポイントの後は、世界歴代の順位(25年4月30日現在)
・「★」は現役選手

【JAAF】

【JAAF】

上記のとおり、五輪や世界選手権の金メダリストや世界記録を作った選手の上に豊田がいるのは「すごい!」のひとことである。

24年の豊田は、当初は両種目での「パリ五輪出場」を目指した。日本選手権では大会2日目(6月28日)の400mHを47秒99で制して内定を決め、3日目からの110mHに出場。予選を第4組のトップ(13秒52/±0.0)で通過したがフィニッシュ後に右ハムストリングスを痛め(肉離れ)、3時間30分後の準決勝は欠場。二刀流でのパリ五輪出場を断念した。

その後、パリ五輪に向けて懸命な治療と回復に努めたが、現地の合宿地に入って初めてスパイクを履いた時に同じ部位ではないところをまたしても肉離れ。本番ではまともに走れそうな状況ではなかったが、今後のためにも「何か持ち帰るものが欲しかった。その世界を見てみたい」と葛藤の末にスタートラインに立った。結果は、53秒62で最下位。が、「だからこそ見られた景色があった」と語り、その経験があったからこそ「このままじゃ終われない」という現在の強い思いにもつながっている。

今回の東京世界選手権に向けては、「二刀流」ではなく400mHに絞る方針だ。

195cmの長身。100m・200m世界記録保持者(9秒58・19秒19)のU・ボルト(ジャマイカ)が196cmなのでほとんど同じだ。国立競技場の観客席あるいはTV中継の画面で観る人の眼を引くことは間違いない。
小学校5年生の時に地元の陸上クラブに入って100mと走幅跳に取り組んだ。東京・国立市にある桐朋中学校2年生からは顧問の勧めで四種競技にも挑戦した。その中で、「ハードルが自分に合っているかも?」と感じ、桐朋高校に進んでからは110mHと400mHをメイン種目に選んだのだった。

高校1年生からの年次ベストは、

【JAAF】

25年は4月13日の吉岡隆徳記念の300mが初戦。33秒30で第2組の1着で、300m日本記録(32秒20)保持者の今泉堅貴(Tram SSP)を0秒26差で抑えた。
4月26日の中国・厦門でのダイヤモンドリーグでは300mHに挑戦。33秒05の世界最高をマークした400mH世界記録(45秒94=21年)保持者のK・ワルホルム(ノルウェー)と1秒17差の34秒22で3着。日本最高記録(35秒18/志村武/日本工大駒場高/24年10月16日=鹿児島国体)を1秒近くも上回った。

話は少し横道にそれるが、300mHは日本国内のレースと今回の厦門でのダイヤモンドリーグでは、スタートから1台目までの距離とトータルのハードルの台数などが異なる。
国内の競技会では1台目までが45m、ハードル間が35m、最終ハードル(8台目)からフィニッシュラインまでが10mで行われている。しかし、ダイヤモンドリーグをはじめとする世界陸連主催の競技会では、1台目までが50m、ハードル間は同じ35m、最終ハードル(7台目)からフィニッシュまでが40mで行われている。国内の規格は、アメリカの高校生の大会などで実施されているものと同じ。後者は、マスターズ大会やイギリスの高校生の女子で実施されている。
よって、単純に記録を比較するのには問題があるが、今回の豊田は1秒あまりも上回ったので8台あっても従来の日本最高を大幅に更新したことは間違いないだろう。
世界陸連は、25年4月に300mHを世界記録が公認される正式種目として採用すると発表した。よって、今後は日本国内のレースも世界陸連の規格に統一されることになるだろう。

アメリカの高校生や日本国内の規格は、1台目までが400mHと同じ45m。が、そうすると各ハードルの設置位置がトラックにマーキングされている400mHのマークよりも15mずれる。そのため、300mHの各ハードルの設置位置を別にマーキングしなければならない。が、マスターズ大会の規格であれば、スタートから1台目までを50mにすることで、400mHの4台目のマークを300mHの1台目としてそのまま使用することができ、改めてマーキングする必要がない。そんなことから、世界陸連の競技会では、マスターズと同じ規格を採用することにしたのであろう。

話を400mHに戻す。為末大さんが47秒89の日本記録をマークしたのが、2001年8月10日のカナダ・エドモントンでの世界選手権で銅メダルを獲得した時で24年前。五輪と世界選手権で行われるトラック種目では、女子も含めて最年長の日本記録だ。そろそろ更新してもらいたいところである。


野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

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