今後は“兄弟対決”も増加? 川瀬晃・堅斗の兄弟は今季飛躍の年となるか

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福岡ソフトバンク・川瀬晃選手とオリックス・川瀬堅斗投手 【©パーソル パ・リーグTV】

怪我人が続出する所属チームにおいて、両選手ともに強い存在感を放っている

 福岡ソフトバンクの川瀬晃選手とオリックスの川瀬堅斗投手が、今季はともに序盤戦から一軍で存在感を放っている。福岡ソフトバンクは野手陣にケガ人が続出しており、オリックスではリリーフ陣の長期離脱者が複数人存在するだけに、実の兄弟としてパ・リーグで鎬を削る両選手の存在は、それぞれの所属チームにとっても大きなものとなっている。

 今回は、両選手が記録してきた指標に基づく選手としての特徴と、2025年に顕著な改善が示されている部分について紹介。2025年をブレイクの年とする可能性を示している兄弟選手の、今後の更なる活躍に期待を寄せたい。(成績は4月25日の試合終了時点)

2025年は各種の打撃指標が改善され、打者としての生産性が高まっている

 川瀬晃選手がこれまで記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

川瀬晃選手 年度別成績 【©PLM】

 通算打率.232に対して出塁率は.277であり、打率と出塁率の差を示す「IsoD」はキャリア平均の数字が.046と控えめな水準になっている。これらの数字を鑑みても、ボールをじっくり見ていくというよりは、積極的なバッティングを持ち味としていることがうかがえる。

 また、長打率から単打の影響を省いた、いわゆる“真の長打率”を示す指標とされている「ISO」に関しても、通算で.055と高いとは言えない数字にとどまっている。しかし、2025年のISOは.150とキャリア平均を大きく上回る数字を記録しており、長打力が大きく向上していることがうかがえる。

 それに付随して、長打率はキャリア平均の.286に対して今季は.450、OPSもキャリア平均の.564に対して今季は.783と、打者としての生産性も大幅に高まっている。9回2死から起死回生の同点打を放った4月22日のオリックス戦に続いて、今後もインパクトのある活躍を見せられる可能性を示しているといえよう。

キャリア初期は運に恵まれなかった部分があったが、近年はその傾向に変化が

 ここからは、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す、「BABIP」という値を見ていきたい。BABIPは運に左右される要素が大きい指標であると考えられており、一般的には.300が基準値であるとされている。

 川瀬晃選手のBABIPはキャリア通算で.280と、基準値である.300を大きく下回っている。とりわけ、一軍デビューを果たした2018年から2021年までの4年間はいずれもBABIPが.280を下回っており、4年連続で打率1割台と打撃面で苦戦した要因の一つとなっていた。

 だが、2022年以降の4年間では3度にわたってBABIPが.310を上回るシーズンを送っており、キャリア序盤に運に恵まれなかったぶんの揺り戻しが来ていると考えられる。唯一BABIPが.300を下回った2023年には打率.236とやや打率が低下していたことを鑑みても、BABIPの向上が川瀬晃選手の打率にも直結していると考えるのが自然だろう。

 柳田悠岐選手と近藤健介選手の通算BABIPがともに.350を上回っていることを見てもわかる通り、打者のBABIPはキャリア平均の値が選手によって大きく変わってくる。内野安打が出やすい俊足の左打者は高いBABIPが記録されやすい傾向にあるだけに、川瀬晃選手が自らの特性を活かして、今後はBABIPを高いレベルで安定させられるかに注目だ。

奪三振が増加し与四球が減少する、投手としての理想的な進化を示している

 続いて、川瀬堅斗投手が記録してきた年度別の指標について確認していこう。

川瀬堅斗投手 年度別投手成績 【©PLM】

 2024年は奪三振率2.61と三振の少なさが課題だったが、今季の奪三振率は7.71と大幅な向上を見せている。さらに、2024年は与四球率6.10と制球面も大きな課題となっていたが、今季の与四球率は2.89と劇的に改善され、優秀と呼べるだけの水準に到達している。

 その結果、三振を四球で割って求める「K/BB」は2024年の0.43から2.67へと飛躍的に向上しており、投手としての能力が着実に高まっていることがわかる。1イニングごとに出した走者数の平均を表す「WHIP」も、昨季は1.74と高かったものの、今季は1.18と大きく改善しており、リリーフとしての安定感が増した理由が指標の面でも示されている。

 次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す、「被BABIP」という指標に目を向けたい。川瀬堅斗投手の被BABIPは2年続けて基準値の.300を下回っているが、2024年の被BABIP.275に比べて2025年は同.286と、前年に比べて数字が悪化している。

 それにもかかわらず、防御率は3.48から1.93へと大幅に改善され、被打率も.275から.229へと大きく低下。前年よりも運に恵まれていないことが示唆されているにもかかわらず、投球の安定感を飛躍的に高めているところに、川瀬堅斗投手の成長ぶりが表れている。

2025年に兄弟揃ってブレイクを果たし、“兄弟対決”の回数も増やせるか

 川瀬堅斗投手と川瀬晃選手の“兄弟対決”は2024年に一軍で初めて実現し、弟の川瀬堅斗投手が兄の川瀬晃選手を3打数無安打に抑えていた。今季初対決となった4月8日の対戦では川瀬堅斗投手が川瀬晃選手を空振り三振に仕留めており、川瀬晃選手が兄の意地を見せて初安打を放つか、それとも川瀬堅斗投手がこのまま抑え込むのかは見ものとなっている。

 川瀬晃選手がこのまま負傷者の穴を埋める活躍を見せてレギュラーの座をつかみ、川瀬堅斗投手も主力投手の一人へと成長を遂げれば、兄弟対決の機会はより多くなっていくはず。両選手にとって非常に大きな意味合いを持つ2025年シーズンにブレイクを果たせるか、今後の川瀬兄弟の活躍ぶりには要注目だ。

文・望月遼太
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