【羽田盃】まっすぐ走らず5馬身圧勝、ダート三冠初戦Vナチュラルライズに底知れぬ可能性

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3歳ダート三冠の初戦、羽田盃は横山武史騎手騎乗の1番人気ナチュラルライズが5馬身差の圧勝で制した 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 3歳ダート三冠の初戦、第70回JpnI羽田盃が4月29日(火)に大井競馬場1800mダートで行われ、横山武史騎手騎乗の1番人気ナチュラルライズ(牡3=美浦・伊藤圭三厩舎、父キズナ)が優勝。2着に5馬身差をつける圧勝で第一冠を手にした。重馬場の勝ちタイムは1分52秒1。

 ナチュラルライズは今回の勝利で5戦4勝、重賞は前走のJpnII京浜盃に続き2勝目。騎乗した横山武史騎手、同馬を管理する伊藤圭三調教師ともに羽田盃は初勝利となった。また、キズナ産駒としてはこれがダートGI級初勝利となる。

 なお、2着には矢野貴之騎手が騎乗した地元大井の4番人気ナイトオブファイア(牡3=大井・渡邉和雄厩舎)、さらに6馬身差の3着にはクリストフ・ルメール騎手騎乗の2番人気ジャナドリア(牡3=美浦・武井亮厩舎)が入った。

1、2コーナーで引っ掛かり、最後も右へササりっぱなし

レース後のインタビューでは「少し疲れました」と横山武騎手、それでもナチュラルライズは圧倒的な強さを披露した 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 米国ケンタッキーダービーを5日後に控えた祝日の夜、日本ではひと足お先にダートの新チャンピオンが誕生した。しかも、披露した走りはかなり破天荒。コンビを組む横山武騎手が「嬉しいですけど、少し疲れました」と冗談交じりではあるが、そう勝利後の場内インタビューで思わず漏らしたほどだった。

 レースは先手を取った地元のスマイルジャンボ、JRAのジャナドリアがすぐ後ろで続く展開の中、ナチュラルライズは2頭を見る形の3番手。初手としては絶好位の確保だったが、当のナチュラルライズはとにかくうるさい。頭を激しく上げながら1コーナー、2コーナーへと突っ込んでいく姿を見ると、大丈夫かと不安になってしまう。

「スタートがあまり速い方ではないので、スピードのある馬を先に行かせて何とか壁を作れればと思っていました。折り合いはちょっと難しかったですけど、馬もよく我慢してくれたと思います」

 横山武騎手が振り返った通り、前を行く2頭を壁にした向こう正面からは折り合いがつき、4コーナー手前から外へと持ち出して迎えた最後の直線。一気に加速して先行2頭をアッという間に飲み込んだ、のだが……ここからナチュラルライズは内ラチを頼るような形で大きく右へとモタれてしまい、終始インへとササりっぱなし。これではジョッキーもまともに追うどころではなく、左の手綱を引っ張ってどうにか矯正するしかなかった。こうなると、普通なら後続との差を縮められてしまうものだが、ナチュラルライズはむしろ2着以下との差をグングンと広げていく。

「モタれる仕草は強かったのですが、とても強かったと思います」

伊藤圭三厩舎&グランド牧場で待望のGI級初制覇

数々の個性派ダートホースを送り出してきた伊藤圭三調教師、意外にもこれがGI級レース初勝利だった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 直線に入ってからゴールするまで横山武騎手がほとんどまっすぐ追えていないにも関わらず、最後は5馬身もの差をつける楽勝。言い方は悪いが、見た目にスマートな競馬ではない。それでもこれだけ離して勝ってしまうのだからモノが違った――と言ってしまえばそれまでだが、とにかくインパクト大の3歳ダート三冠初戦だった。

「ちょっと人気になりすぎているような感じもしましたので、勝ててホッとしています」

 そう安堵の表情を浮かべたのは伊藤圭調教師だ。同馬を生産したグランド牧場は師の実家でもあり、これまで伊藤圭三厩舎&グランド牧場と言えばスマートボーイ、プリエミネンスなど個性的なダートホースの数々を送り出してきた。重賞通算22勝のうち21勝がダートで挙げたもの。そんな“砂の名門厩舎”としては意外ではあったが、今回の勝利が開業28年目にして手にしたJRA、地方通じて初めてのGI級レース勝利だった。

「幾度か(GIに)挑戦させてもらっていたのですが、なかなか勝てませんでした。だけど、あまり気張らずに平常心で臨めたのが良かったのかなと思います」

次走は二冠目の東京ダービー、さらなる成長の一歩を

次走は二冠目の東京ダービーが目標、ナチュラルライズがまた一歩成長した姿を見せてくれることを期待したい 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 次走は、このまま何事もなく順調に行けば二冠目のJpnI東京ダービー(6月11日、大井競馬場2000mダート)。この気性だけに200mの距離延長がどう出るかだが、「今日はゴールを過ぎてもまだ走りたそうにしていましたから」と伊藤圭調教師は問題ないと見ている。とは言え、テンから折り合い良く走れることに越したことはない。そこは指揮官も「落ち着いて走れるトレーニングをして、次走を迎えられればと思います」と、万全を期して臨む構えだ。

 一方で、この破天荒さ、常識のかからなさがまたナチュラルライズの大きな魅力でもあることは確かだろう。横山武騎手が言う。

「本当に粗削りな子なんですけど、着実に一歩一歩成長してくれています。このままもっとより良い方向に成長していってくれれば、いち乗り役、鞍上としても嬉しいですし、そのナチュラルライズをファンの皆さんに応援していただけたらなと思います」

 前半から折り合いがつき、最後の直線もまともに走れたら、いったいどれだけのパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。およそ1カ月半後の東京ダービーは、鞍上が言う「着実な成長」のさらなる一歩を披露する舞台ともなる。そして今週は世界の3歳ダート頂上決戦・ケンタッキーダービーに挑戦するルクソールカフェ、アドマイヤデイトナに注目が集まっているが、このナチュラルライズもまた底知れぬ可能性を秘めた1頭であることを証明した。昨年に続き今年の3歳ダート戦線も粒ぞろい、楽しみがいっぱいだ。(取材・文:森永淳洋)
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