【4月19日】久保康友の国内復帰登板
帰ってきた最後の松坂世代
「今年子供が受験なんで日本にいようかなと。その間兵庫で練習させてもらおうと思ったら球団代表から選手としてのオファーを受けました」
兵庫退団後もオフシーズンは兵庫のチーム練習に参加していたこともあったが、2025年は1年間日本でのプレーを決めた。当然ながらチーム最年長。所属選手どころか監督・コーチも全員年下。何なら久保がNPBで投げていたころをしていたころを知らない選手までいる。
そんな中で久保はマイペースに、そしてそんな選手たちに質問攻めにされながら投手陣の輪の中にいた。
ドイツでの2年間
「気温も湿度も低くて、日本の夏みたいにいるだけで消耗するようなこともない。気持ちよくて快適でした。ただ3月4月は天気が悪く、日照がほとんどなくて、気分が落ち込んで大変でした。そんなせいか、普通のドラッグストアに気分を高揚させる薬が売ってて『ああ、これがこっちの常識なんやな』って思いました」
2年間コンディションもよく投げ切ることができた。2年連続地区最優秀投手のタイトルを獲得。2024年には7イニングながら完全試合も達成した。
「ドイツのレベルでいうと、トップ選手を集めたチームが、日本の独立リーグのトップといい勝負をするぐらいですね。エースクラスのピッチャーが投げるとさすがに150キロ近く投げる投手がいるんですが、2番手からガクッとレベルが落ちる。7回ぐらいまでロースコアの展開になっても終わってみたら10-2とかそんな試合がよくありました」
そんな状況のため、久保には監督から「完投指令」が出ていた。2023年は13完投、2024年は9完投とフル回転していた。「最後まで久保が投げたほうがいいから投げてくれ」という現場のリクエストもあったようだ。
「球場は河原で野球をしているようだったし野手はとんでもないスイングをしているし、投手もグニャグニャなボールを投げている」と振り返ったが、ドイツ人選手の適応能力には舌を巻いていた。
「でもドイツには日常に野球がない。国の代表とかも大体はアメリカのマイナーとかにいる選手が選ばれるからなじみがない」
今季が終わればまた海外に行くつもりではある。野球の発展という視点でも久保はもっとできることがあるのではと語っていた。
4月19日・堺シュライクス戦で
声の主は堺シュライクス・大西宏明監督。同い年、同じ大阪で高校野球を切磋琢磨し、NPBでも同じリーグでしのぎを削った仲だ。
「体大丈夫?」
「いやもうしんどい」
久しぶりの会話に二人の会話に花が咲いた。二人とも今季45歳になるのだ。
初回・2番十倉幸太の打席でこの日最速の144キロを計測。二死からフォアボールを2つ出してピンチを迎えるがしっかり切り抜けた。
このままピンチらしいピンチもなく来たが、6回にヒットと犠牲フライ・エラーで2点を失う。それでもストレートと変化球、そして名物「スーパークイック」を駆使し、最後まで的を絞らせなかった。
8回127球を投げ完投。打たれたヒットは6本。負け投手にはなったが堂々の内容だった。
「思ったより球速出てたな…実戦で投げたのが久しぶりやったからコントロールするまでが大変だったけど、試合を壊さずにできてよかった」
安堵交じりの笑みを浮かべながら試合を振り返った。
「本当は6回のあの場面、三振を取れたらよかったんやけど、(自分は)打たせて取るタイプのピッチャーだから」
「でも楽しかった。また次投げる時にこれぐらい投げられたら」と笑って話した。
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そのあと、再び大西監督が久保の元にやってきた。
「エグいわ」
いろいろなものがその一言に凝縮されていた。
打者と対戦して思ったこと
そんな打線を久保はどう見ていたのか。
「もっとホームランとか狙いに来たらいいのにな。真っすぐを待っていたら仕留められそうやのに、変化球も打とうとして半分で待ってるから変なファウルになったりしているからもったいないかなぁ。どうせなら空振りしたほうが怖さもあるし。でもこれチーム方針なんかなぁ」
大西監督にも同じ話をしていた。
「ちゃんと打ちに行って狙ってたのは8番の子(堺・桑田皐輝)ぐらいやったんちゃうかなぁ。変に変化球待って1球でアウトになってる選手も多かったので待てばいいのに」
「もっと独立リーグらしく(思いっきり振るように)行きたいな。45歳のおっさんをボロカスに打つぐらいにならないと」という大西監督の言葉には久保も絶対そうだと同意する。
なおさら上のレベルを目指すのなら。
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4月29日、久保は大阪ゼロロクブルズ相手に二度目の先発。6回を無失点で勝利投手になった。意外なことにこれが久保の独立リーグ初勝利だ。
「結果はゼロに抑えられたけど、内容はそんなに良くなかったのでもっといいピッチングができるように頑張りたい」
「そこまで年齢を重ねてここまで投げ続けることができるんですか」
インタビュアーが問いかけた答えは実に久保らしいものだった。
「毎日を楽しく過ごすことです」
その時の自分が一番力を出せるカテゴリでプレーをする。それが他にプレーする選手の力になれれば。
それが今一番楽しい。
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