“For KB!!”――BREXNATION一丸でいざチャンピオンシップへ【B MY HERO!】

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4月13日、2季連続4回目の優勝を初めてブレックスアリーナで決めた 【(C) B.LEAGUE】

 ブザーが鳴って勝利が確定したその瞬間、思い浮かべたものは彼のチャームポイントである満面の笑顔。私は嬉しいのと同じくらい、チームの真ん中にいるはずの人がいないことが辛く寂しかった。普段は共存しないこの二つの気持ちになって、思わず目を潤ませていたが、空から「涙はまだ早いのでは?」と声が聞こえそうだから溢れるものをすぐにひっこめた―。

 はじめまして。田臥勇太選手と中学2年生で出会い、そこから現在も応援する田臥世代ファンのERI_ちびっこぎゃんぐです。

実はホームでの地区優勝決定は初めて

 2025年4月13日、宇都宮ブレックスvs京都ハンナリーズのGAME2。これにBREXが勝つと東地区の地区優勝が決まる日、私はいつものようにブレアリで応援していた。

 今日勝てば地区優勝を決められる、しかもホームで。Bリーグになってから地区優勝はこれまで三度あるBREXだけど、いずれもアウェー会場で決めていた。

「ホームで決められないのがBREXっぽいよね(笑)」と私は去年地区優勝が決まったアウェー会場である千葉ポートアリーナから帰りながらネタにして話してたくらいだった。

 またファンが思ってるのと同じように京都戦GAME1の試合後の会見コメントで「こういうところで決めれないのがBREX」と遠藤祐亮選手自身も話してることからこういう時のBREXあるあるではある。

 ただ、感覚的なことでしか表現できないが、この日私はベンチ横の席で応援していて“今年こそはホームで決めよう”感がチームから漂ってるような試合だと思った。

3月23日にブレックスアリーナで行われた「KEVIN BRASWELL Memorial Ceremony」 【(C) B.LEAGUE】

 ケビン・ブラスウェルHCの訃報はチームや選手はもちろんだと思うけど、ファンにとってもあまりにショッキングな出来事だった。今シーズンはベンチで指揮することはできなくても、いつかまたあの笑顔を見れるとしか私は考えてなかったし、誰もがまた会えると思っていたはず。どこか信じられないような感覚を持っては、ベンチの遺影を見て本当にいないんだ…と実感させられてしまう。あれから毎試合こんなことを感じながら応援している。

 BREXはファンと選手の交流の場は比較的多いチームだと思うが、チームスタッフとの交流の場はほとんどない。そんな中で、ケビンと言葉を交わしたことが一度だけあった。

 昨シーズンの琉球戦、いつもながら私は現地へ応援に行っていた。

 偶然チームと同じホテルになってしまい、そこでケビンと同じエレベーターに乗り合わせてしまったときのこと。

 私の乗っているエレベーターにケビンが乗り込む際、目が合ってチラっと見えるBREXのグッズと黄色のユニフォームに気づいてくれたんだと思うが、英語で「沖縄楽しんでる?」と気さくに声をかけてくれた。このなんてことないやりとりだったが、私には強く心に残っていた。

 普段、試合前後のケビンの印象と言えばバスケ全集中モードでファンの声は到底耳に入らない感じがしていた(当然なんだけど、前任のHCとの対比で笑)。そういう印象からいちファンに優しく話しかけてくれたことも嬉しかったし、私に向けてくれた満面の笑顔は忘れられない。この短い時間でもケビンの明るさと優しさを感じた。

ケビンが新たに取り入れた攻撃的なスタイルの象徴は3ポイントシュート 【(C) B.LEAGUE】

 素人からしても感じるのがケビンはBREXに新しいバスケットスタイルを加えてくれた。昨シーズンよりさらに速く、アグレッシブなアウトサイドの攻撃を取り入れたのがケビンだと思う。これまでのBREXはOFの攻撃回数は少なくいかに効率よく得点するかが基本になっていた。一方でポゼッションが少ないため、シュートが入らなくなると一気に停滞してしまい、勝てないことも課題だったところにケビンの速い攻撃が加わった印象だ。

 今では2Pより3Pのアテンプト(試投数)が多いことは最近どの試合の解説でも言われる特徴的なBREXの攻撃スタイルとなった。

ケビンの遺志を継ぐ戦いはまだまだ続く

地区優勝を決めたあともジーコHC代行に笑顔はなかった 【(C) B.LEAGUE】

 話は戻って地区優勝が決まった時、印象的だったのがケビンの意志を継いでいるジーコ・コロネルHC代行の表情だ。

 チームの写真撮影の時、ケビンの笑顔の遺影とは対照的に全く笑顔を見せなかった。それはまるで地区優勝に満足しないと誓ってるような。そんな強い意志を感じるキリッとした表情だった。それを見て私は思わず「かっこいいな」と声に出してしまった。

 ケビンの遺志を次いで代わりにチームを率いることはどれだけ大変だろう。ジーコのみならず他のアシスタントコーチもその職種柄、経験値があるように錯覚してしまいがちだけど、年齢的には私よりも若いし、

 彼らのケビンをなくしたことの喪失感は計り知れない。

 ましてやリーダーを急になくすことなど多くの人が経験しないわけだし、そんな中でも否応なしに試合は進んでいく。

 ジーコがHC代行になってから20勝5敗。試合の結果はもちろん素晴らしいと思うが、私はこの戦績というよりこんな大変な状況でもチームをリーディングするコーチとスタッフたちに頭が下がる想いなのだ。その状況になったらプロとしてやるしかないのかもしれない。それでもバスケを通じてこの状況を乗り超えていこうとする人たちの強い気持ちは毎年を超えて感じるものがある。表に出せれないたくさんの問題がきっとあるだろうに、それを感じさせずに前に進んでいる。言わずもがな、選手たちも。

 レギュラーシーズンは残り5試合(4月21日現在)。毎年シーズンが始まってしまえばあっという間と感じているが、今年はケビンのことがあって例年に増して早かったように感じる。CSを含めても最小であと11試合、最大でもあと14試合しかない。このチームを応援できるのも残りあとわずか。

 去年CSクォーターファイナルで敗退したBREXにとってはここからが本番!という意気込みだと思うが、今年はそれに輪をかけて強い気持ちで優勝をつかみ取ってほしい…とファンとしては熱望するけど、そうは言っても相手も強い。相手あるスポーツだしそんなうまく行かない場面も出てくるはずだ。

 私に何かできることは…ケビンの意志を次いでファンにできるとしたらこういうことなんだろう。

Live everyday like it’s your last!!!
(毎日を自分の最後の日だと思って生きろ)

 これはケビンのインスタのプロフィールに残してる言葉。この言葉を刻んだバンドをチームのスタッフたちがつけて毎試合臨んでいる。

スタッフが身につけているケビンの言葉が刻まれたバンド 【(C) mikimaru_6】

 人生の最後の試合だと思って応援できてるか?と聞かれたらまだまだそんなことない。

 残りのレギュラーシーズンと、ケビンが乗り越えたかったクォーターファイナルを、そしてその先の頂点をBREXNATIONで掴み取りたい。

 だから、残りの試合を人生の最後の試合だと思って悔いなく応援しよう。

GO BREX!! For KB!!

ERI_ちびっこぎゃんぐ(B MY HERO!特派員)

【(C) ERI_ちびっこぎゃんぐ】

三度の飯とバスケが好きな自他共に認めるバスケおたく。田臥勇太選手と中学2年生で出会いそこから現在も応援する田臥世代ファン。日本代表・宇都宮ブレックス・白鷗大学を中心に国内・海外含め年間100試合以上を現地観戦。最近の趣味は「マイアミ」って戦術を「宇都宮」って戦術名にするとしたらどういうアクションを入れ込むかホワイトボード片手にお酒を飲んでいます。

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