Baseball5界に新風! 瞬く間に日本を代表するチームへと成長を遂げている「Spirit Bonds」に密着
ここまで走り抜けているのには、チームを立ち上げた宮之原健の熱い気持ちと全員でつくり上げてきた”絆”があった。
(取材 / 文:白石怜平 表紙写真:チーム提供)
「一つ新しい輪を広げたい」 宮之原の情熱から誕生
Spirit Bondsが誕生したのは、自身の状況や想いがきっかけだった。
Baseball5を始めて約2年半、その魅力にのめり込みながら輪を広げてきた。キャリアのスタートとなった「5STARs」では六角彩子や村山智美と共にゼロからチームをつくり、初代主将も務めた。
ただ、5STARsは埼玉県を中心に活動している一方で、宮之原は東京都の教職員となり都内勤務となっていた。
自身で「一般社団法人なないろ Sports」を設立し、法人スポーツ教室を都内中心で行っていたことから、自身の拠点も移す必要があった。
そしてもうひとつ、宮之原はある想いを抱いていた。
「日本にはまだBaseball5のチームが少ないと感じていました。自分がここから一つ新しい輪を広げることで、日本のBaseball5の盛り上がりに少しでも貢献したい。そんな想いを抱いていたんです」
自身の縁やSNSなどを通じて仲間が集まり、構想を描いてから約1ヶ月ほどで結成までたどり着いた。
初期メンバーは8人で、「24年の4月1日、『ここから開拓してくんだ』と新鮮な気持ちでスタートしました」と同社団法人を母体にする形でSpirit Bondsが正式に発足した。
熱い気持ちと結束を組み合わせた「Spirit Bonds」
「すっごい考えました(笑)チーム名は自分自身が大事にしたいワードを挙げまして、その中でもスポーツをやる上においての熱い気持ち・強い魂を込めて全てに臨みたい想いから”Spirit”。
Bondsには"結束"・絆"という意味がありまして、縁で繋がった仲間を家族のように結束して取り組んでいきたい。私の最も大事にしている意味の入った二つの言葉を組み合わせました」
続けて、新たな船出を果たす上で「特に欠かせなかった」という人物を挙げた。
「チームの副代表を務めている中瀬祐も立ち上げ前から『一緒にやりたい!』と言ってくれました。チーム名もそうですし、今後の方向性も2人で考えながら決めました」
「そのテーマというのが、『Baseball5を通じて人生を豊かに』『ともに成長し合う環境づくり』この2つです。
もちろん試合に勝つことも大切なのですが、私たちに関わってくれる全員が『明日からの仕事頑張れそう』・『楽しいプレイベートの時間になった』などと、日々の生活や今後の人生に明るい未来が見えてくれたらいいなと。
みんながそう感じながら過ごすことを積み重ねることで、大事な試合や掲げた目標へ自然とつながってくると考えているんです」
現役ソフトボール選手が”二刀流”で光を照らす
野球経験がないメンバーも多く在籍しており、純粋にチームの理念に共感した面々が新たな挑戦の場に選んだり、コミュニティとしての居心地の良さに惹かれていった。
また、ソフトボール選手がBaseball5との”二刀流”で活躍していることも大きな特徴である。日本代表として東京五輪で金メダルへと導いた渥美万奈も1月の日本選手権に出場し、チーム躍進に貢献した一人。
「渥美さんとの出会いも大きいものでした。昨年(24年)2月に世田谷で行われた『チャレンジソフトボール』というイベントでBaseball5の体験もあって、参加したのが最初でした。
その時に渥美さんにも実際体験してもらい、後日『これから一緒に挑戦したいです!』と言っていただき、入団する運びになりました」
渥美がソフトボールの指導に行っている東京女子体育大学で、Baseball5の体験会を開催する機会があった。そこで同大学のソフトボール部を率いる佐藤理恵監督が「私たちもBaseball5を盛り上げたい」と、Spirit Bondsをバックアップ。
ここで入団したのが、縄明優花・秋元美幸・宮﨑眞緒の3選手だった。
宮之原は「チーム一人ひとりについて1時間以上は話せる」と語っていた通り、3選手の特徴を紹介しながら、その将来性に強い希望を寄せた。
”楽しむ”と”責任”を両立して臨んだ日本選手権
予選では3試合を快勝し駒を進めたが、心境としては決して余裕ではなかったという。
「ハードな戦いでした。どこも相手を読めなくて対策も立てづらかった。なので、『自分たちがやってきたことを出そう』と。
公式戦が初めての選手が大半だったので、『どのチームよりもBaseball5を楽しんで、観ている人たちに”自分もここでやってみたい!”と思ってもらえるプレーをしようぜ』という想いをチームで共有しました」
そして迎えた1月の本戦。発足していた公式応援団が駆けつけた。スタンドには横断幕やユニフォームが掲げられ、振られる旗と大きな声援を背にコートへと立った。
「関わってくれる全員と戦うんだという気持ちで臨みました。たくさんの方がアリーナに来てくれているので、フィールドに立ってる人は責任持って応援を力に変えようと伝えました」
チーム発足直後から創り上げ、共に日の丸を背負い世界で戦うなど思い出が詰まったチームと、国内最高峰の舞台で相対することになった。
5STARsはこの大会優勝を果たすことになるのだが、その王者相手に互角の試合を繰り広げた。第1セットはサヨナラ負けとなるもタイブレークでの決着、そして第2セットを制し最終セットまでもつれる展開となっていた。
「5STARsには結果的には負けてしまいましたが、錚々たるメンバーが並ぶ選手たちがいる中で競った試合ができて、しかも1セット取り切った。
これはみんなで結束して臨めたからこそあの試合ができたと思います」
ここでも仲間の活躍を讃えた。”この一打席”のために集中して練習を重ねてきた話を明かしてくれた。
「4番で出場した阿部傑には初回の第1打席で『一・二塁間を破ってくれ』と伝えました。ここに向けてずっと練習してきましたし、結果的には六角選手のファインプレーでアウトになりましたが、本人の集中力でそれを成し遂げてくれた。
彼はいつもスタメンで出ているわけではないので、いろんな選手が役割を果たしてくれたことに強さを感じました。試合出場に恵まれない選手が当日チームが勝つために自分の役割を全うしてくれたのが嬉しかったです」
「みんなが打った時は自分のこと以上に嬉しかったですし、お互いそう思えたと感じています。ミーティングを数多くやって、考え方の共有をずっとしていました。
打った時や円陣のパフォーマンスもどうやって盛り上げるかを楽しく話をしつつ、競技を純粋に楽しむことができたので本当に素晴らしい1日だったと思います」
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