Baseball5界に新風! 瞬く間に日本を代表するチームへと成長を遂げている「Spirit Bonds」に密着

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【チーム提供】

昨年4月に誕生した「Spirit Bonds」。オープンの部とユースの部2つを持ち、1月の「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回Baseball5日本選手権」では共にベスト4に入るなど、瞬く間に日本を代表するチームへと成長を遂げている。

ここまで走り抜けているのには、チームを立ち上げた宮之原健の熱い気持ちと全員でつくり上げてきた”絆”があった。


(取材 / 文:白石怜平 表紙写真:チーム提供)

「一つ新しい輪を広げたい」 宮之原の情熱から誕生

チームが誕生したのは24年の4月。22年から5STARsでプレーし、同年に日本代表入りした宮之原が創設した。

Spirit Bondsが誕生したのは、自身の状況や想いがきっかけだった。

Baseball5を始めて約2年半、その魅力にのめり込みながら輪を広げてきた。キャリアのスタートとなった「5STARs」では六角彩子や村山智美と共にゼロからチームをつくり、初代主将も務めた。

ただ、5STARsは埼玉県を中心に活動している一方で、宮之原は東京都の教職員となり都内勤務となっていた。

自身で「一般社団法人なないろ Sports」を設立し、法人スポーツ教室を都内中心で行っていたことから、自身の拠点も移す必要があった。

そしてもうひとつ、宮之原はある想いを抱いていた。

「日本にはまだBaseball5のチームが少ないと感じていました。自分がここから一つ新しい輪を広げることで、日本のBaseball5の盛り上がりに少しでも貢献したい。そんな想いを抱いていたんです」

自身の縁やSNSなどを通じて仲間が集まり、構想を描いてから約1ヶ月ほどで結成までたどり着いた。

初期メンバーは8人で、「24年の4月1日、『ここから開拓してくんだ』と新鮮な気持ちでスタートしました」と同社団法人を母体にする形でSpirit Bondsが正式に発足した。

昨年4月から新チームとして「Spirit Bonds」が始動した 【©白石怜平】

熱い気持ちと結束を組み合わせた「Spirit Bonds」

チーム名にも情熱あふれる宮之原の気持ちが表現されていた。

「すっごい考えました(笑)チーム名は自分自身が大事にしたいワードを挙げまして、その中でもスポーツをやる上においての熱い気持ち・強い魂を込めて全てに臨みたい想いから”Spirit”。

Bondsには"結束"・絆"という意味がありまして、縁で繋がった仲間を家族のように結束して取り組んでいきたい。私の最も大事にしている意味の入った二つの言葉を組み合わせました」


続けて、新たな船出を果たす上で「特に欠かせなかった」という人物を挙げた。

「チームの副代表を務めている中瀬祐も立ち上げ前から『一緒にやりたい!』と言ってくれました。チーム名もそうですし、今後の方向性も2人で考えながら決めました」

独立リーグ時代から宮之原と共にプレーしている中瀬祐 【©白石怜平】

チーム名に加えてテーマを2つ設定した。「ここにも私が大事にしている想いが込められているんです」と、語ってくれた。

「そのテーマというのが、『Baseball5を通じて人生を豊かに』『ともに成長し合う環境づくり』この2つです。

もちろん試合に勝つことも大切なのですが、私たちに関わってくれる全員が『明日からの仕事頑張れそう』・『楽しいプレイベートの時間になった』などと、日々の生活や今後の人生に明るい未来が見えてくれたらいいなと。

みんながそう感じながら過ごすことを積み重ねることで、大事な試合や掲げた目標へ自然とつながってくると考えているんです」

現役ソフトボール選手が”二刀流”で光を照らす

4月に立ち上げ後、宮之原の持つ強い発信力と熱量で同じ志を持つ仲間が自然と加わった。

野球経験がないメンバーも多く在籍しており、純粋にチームの理念に共感した面々が新たな挑戦の場に選んだり、コミュニティとしての居心地の良さに惹かれていった。

サッカーとアメフトをプレーしていた橋本勇郎 【©白石怜平】

「それぞれ異なる個性やバックグラウンドがあるので、尊重しながらそれぞれの人生へとつなげています。活動日以外でもお互い気にかけていますし、私は朝から晩までいつも誰かしらのことを思い浮かべているんです」

また、ソフトボール選手がBaseball5との”二刀流”で活躍していることも大きな特徴である。日本代表として東京五輪で金メダルへと導いた渥美万奈も1月の日本選手権に出場し、チーム躍進に貢献した一人。

「渥美さんとの出会いも大きいものでした。昨年(24年)2月に世田谷で行われた『チャレンジソフトボール』というイベントでBaseball5の体験もあって、参加したのが最初でした。

その時に渥美さんにも実際体験してもらい、後日『これから一緒に挑戦したいです!』と言っていただき、入団する運びになりました」

ソフトボール金メダリストでもある渥美万奈 【©白石怜平】

この出会いがきっかけで、さらにソフトボールとBaseball5の絆が深まることになる。

渥美がソフトボールの指導に行っている東京女子体育大学で、Baseball5の体験会を開催する機会があった。そこで同大学のソフトボール部を率いる佐藤理恵監督が「私たちもBaseball5を盛り上げたい」と、Spirit Bondsをバックアップ。

ここで入団したのが、縄明優花・秋元美幸・宮﨑眞緒の3選手だった。

宮之原は「チーム一人ひとりについて1時間以上は話せる」と語っていた通り、3選手の特徴を紹介しながら、その将来性に強い希望を寄せた。

女子ソフトボール選手の加入も大きな”補強”となった 【チーム提供】

「縄選手はソフトボール大学JAPANの日本代表でもあるのですが、今回の日本選手権で守備と打撃両方でいいプレーを見せてくれました。Baseball5を『健さんハマっちゃいました!』と、笑顔で全力でやりきる姿勢を持っている選手です。

ソフトボール大学JAPANの日本代表でもある縄明優花 【©白石怜平】

秋元選手もチームを明るくしてくれる存在で、フィールド内外で声を出して盛り上げてくれる選手です。スピード感あふれるプレーとともに、打球の強さも日に日に増していますし、守備でも複数ポジションを守れる力があります。

チームのムードメーカーでもある秋元美幸 【©白石怜平】

宮﨑は大学でクリーンアップを打ってる選手で、Baseball5でも入ってすぐに強い打球を披露してくれました。選手権は参加できなかったのですが、『来年は必ず出ます!』と早くも闘志を燃やしてくれているので、みんな将来が本当に楽しみで仕方ないです」

次回選手権での活躍が期待される宮﨑眞緒 【©白石怜平】

”楽しむ”と”責任”を両立して臨んだ日本選手権

Spirit Bondsは昨年結成から約9ヶ月にして、早くも日本選手権予選を勝ち抜き本戦へと進出した。

予選では3試合を快勝し駒を進めたが、心境としては決して余裕ではなかったという。

「ハードな戦いでした。どこも相手を読めなくて対策も立てづらかった。なので、『自分たちがやってきたことを出そう』と。

公式戦が初めての選手が大半だったので、『どのチームよりもBaseball5を楽しんで、観ている人たちに”自分もここでやってみたい!”と思ってもらえるプレーをしようぜ』という想いをチームで共有しました」


そして迎えた1月の本戦。発足していた公式応援団が駆けつけた。スタンドには横断幕やユニフォームが掲げられ、振られる旗と大きな声援を背にコートへと立った。

「関わってくれる全員と戦うんだという気持ちで臨みました。たくさんの方がアリーナに来てくれているので、フィールドに立ってる人は責任持って応援を力に変えようと伝えました」

スタンドからの応援を受けてプレーした 【©白石怜平】

初戦の内藤ロジテックス戦に勝利し、全国ベスト4を決めた。そして迎えた準決勝は宮之原がかつて所属し、自身がBaseball5を始めたルーツと言える5STARs戦。

チーム発足直後から創り上げ、共に日の丸を背負い世界で戦うなど思い出が詰まったチームと、国内最高峰の舞台で相対することになった。

5STARsはこの大会優勝を果たすことになるのだが、その王者相手に互角の試合を繰り広げた。第1セットはサヨナラ負けとなるもタイブレークでの決着、そして第2セットを制し最終セットまでもつれる展開となっていた。

大会王者となる5STARsとは接戦になった 【©白石怜平】

宮之原にとっても、選手権ではこの試合が最も印象に刻まれている試合だったと語る。

「5STARsには結果的には負けてしまいましたが、錚々たるメンバーが並ぶ選手たちがいる中で競った試合ができて、しかも1セット取り切った。
これはみんなで結束して臨めたからこそあの試合ができたと思います」

ここでも仲間の活躍を讃えた。”この一打席”のために集中して練習を重ねてきた話を明かしてくれた。

「4番で出場した阿部傑には初回の第1打席で『一・二塁間を破ってくれ』と伝えました。ここに向けてずっと練習してきましたし、結果的には六角選手のファインプレーでアウトになりましたが、本人の集中力でそれを成し遂げてくれた。

彼はいつもスタメンで出ているわけではないので、いろんな選手が役割を果たしてくれたことに強さを感じました。試合出場に恵まれない選手が当日チームが勝つために自分の役割を全うしてくれたのが嬉しかったです」

初回の第1打席に魂を込めた阿部傑 【©白石怜平】

初参加にしてベスト4という結果を残したSpirit Bonds。準決勝で負けた時は「悔しくて仕方がなかった」と語った宮之原だったが、改めてオープンの部で戦い抜いた選手権をこう総括した。

「みんなが打った時は自分のこと以上に嬉しかったですし、お互いそう思えたと感じています。ミーティングを数多くやって、考え方の共有をずっとしていました。

打った時や円陣のパフォーマンスもどうやって盛り上げるかを楽しく話をしつつ、競技を純粋に楽しむことができたので本当に素晴らしい1日だったと思います」

チームの結束力でベスト4を勝ち獲った 【©白石怜平】

ただ、Spirit Bondsの活動はオープンの部にとどまらない。未来のBaseball5を担うユースの部でも力を入れて取り組んでいる。

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著者プロフィール

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