【ダイヤモンドアスリート第11期】第5回研修レポート:メディアトレーニングについて~自分をブランディングするとは?~
ここでは、第5回目研修として行われた「メディア対応」講義の模様をご報告します。
第5回研修 「メディアトレーニング」 片上千恵先生(メディアトレーナー、法政大学准教授)
ダイヤモンドアスリートに向けた研修は、オンライン形式で実施した2023年、今回同様に味の素ナショナルトレーニングセンターで実施した昨年に続いて3回目。北田選手は高校3年時から3年連続、ほかの4選手は初めての受講となります。冒頭で、室伏由佳ダイヤモンドアスリートプログラムマネジャーが、「片上先生には、歴代のダイヤモンドアスリートも指導していただいた。聞けばなんでも教えてもらえるので、実際の競技会や取材などの場で、皆さんが自然とうまく振る舞えるよう、しっかり吸収してほしい」と片上先生を紹介。さらに、「研修のなかでは、けっこう実践的なトレーニングもあるので」と含みを持たせた“予告”とともに、「心持ちを少し覚悟(笑)して、頑張りましょう」とダイヤモンドアスリートたちに呼びかけ、片上先生へバトンを渡しました。
◎「自身をブランディングする」ことの効果
「皆さん、こんにちは。メディアトレーナーの“かたかみ・ちえ”と申します」
室伏マネジャーの紹介で選手たちの前に立った片上先生は、よく通る声と聞き取りやすい口調で、こう挨拶すると、親しみやすい様子でダイヤモンドアスリートたちに次々と話しかけ、あっという間に選手たちとの距離を縮めていきました。そして、メディアトレーニングとは、「メディアを通じて、理想的なメッセージが受け手に伝わるようにメディア対応の心構えや方法を学び、練習すること」であると提示。「実は、事前に見せてもらった」と、昨年12月に実施されたダイヤモンドアスリート認定式後に受けた11期生のインタビューVTRを閲覧したことを明かし、「その映像を見て思ったことがあったので、今日はまず、ここから行こうと思う」と述べて、「アスリートにとって、なぜ、メディアトレーニングが必要なのか?」の話題へと入っていきました。」
・ブランドが確立しているとは、たくさんの人が認識・支持してくれていることを意味し、これはアスリートとファンとの関係性でも成り立つ。
・自身のブランディングによって、アスリート(=ブランド)とファン(=消費者)の絆を強める(覚えてもらえる、選んでもらえる、勝ち負けに関係なく応援してもらえる)ことが可能になる。
・たくさんの応援があれば、もう“ひと押し”頑張ることができるので、メンタル面を支える効果がある。
と、ブランディングが求められる理由を挙げるとともに、「ブランディングするためには、まず自分の情報を整理し、それを提供していくことが必要になる」と述べました。そして、「もちろん、一番効果的なのは、競技で結果を出すことではあるが、ダイヤモンドアスリートに選ばれ、これから活躍して世界に行こうとしている段階の皆さんは、ぜひ、今のうちにたくさんの味方(ファン)をつくっておきたい」とコメント。「それなら自分をブランディングしていきましょうよ」と訴えました。
そのうえで、「アスリートにとって、なぜ、メディアトレーニングが必要なのか?」の解説へ。片上先生は、メディアと呼ばれる媒体の種類や特徴、メディアが持つ役割、メディアもアスリートを取り巻くステークホルダー(利害関係者)の1つであることなどの基本知識とともに、メディアが「アスリートの情報を広く発信してくれる存在」「競技を客観的に批評してくれる存在」「ステークホルダー(利害関係者)との関係を深めてくれる存在」であると説明。より良いメディア対応によって、自身の思いをより多くの人に伝えられることを示しました。
また、もう一つ挙げたのが、「メディアトレーニングは、すなわちコミュニケーションの練習」という言葉です。メディアトレーニングによって高めたコミュニケーション能力は、アスリートとしてのさまざまな場面で大いに生かせることも示唆しました。
ここまでを「前段」として説明してきた片上先生は、いよいよメディアトレーニングの核となる部分へ話を進めていきました。まず、ダイヤモンドアスリートたちに「自分がどんなアスリートになりたいと思っているか」「周りからどんな選手だと思われたいか」を用紙に書き込んでもらうことからスタート。片上先生は、選手たちが書いた、「強い選手」(ドルーリー選手)、「競技を楽しんでいる強い選手」(中谷選手)、「強いアスリート」(古賀選手)、「強い、良い人、憧れられるようになるような選手」(濱選手)、「きっかけをつくってくれる選手」(北田選手)といった言葉を見て、感想を述べたり問いを重ねたりするなかで、各選手が目指しているイメージを、より明確にしていきました。
映像が流れたあと、片上先生は、当事者に印象や反省を求めたり、ほかの選手に感想を聞いたりするなかで、選手たち自身から「メディア対応時に留意すべき事柄」を引きだしていきます。そして「良かったところ」を示すともに、「こうすれば、もっと良くなる」と改善点をアドバイス。映像が出た瞬間に、動揺、苦笑い、羞恥、困惑、照れといった表情を見せた選手たちも、自身の映像を見て、「こうなりたい」というアスリート像とのギャップを認識すると、片上先生からの指摘に真剣な表情で聞き入り、反省点を改善して同じシチュエーションで話すことに取り組みました。
上記「インタビュー大反省会」において、各ダイヤモンドアスリートの対応を例に、1つ1つ丁寧にメディア対応時の留意点を示してきた片上先生は、全5選手の映像を見終えたところで、「良いメディア対応は、“何を話すか+どう話すか”で決まる」と改めて説明。専門用語で示すと「良いメディア対応は、言葉を用いて行う言語的コミュニケーションと、声や表情、仕草など言葉を使わずに行う非言語的コミュニケーションとの組み合わせによって実現する」ことを意味し、「メディアトレーニングは、コミュニケーションの練習」と言われる裏付けとなっています。
・正しい姿勢や立ち方、座り方を意識する。インタビュー開始前には姿勢をチェック。話しているときに適宜ジェスチャーを入れると相手に印象を残しやすい。また、お辞儀をしたり椅子に座ったりするときは、一度、動きを止めると所作が美しく見える。
・大きな声で話す。「5m先にいる人に話しかけるつもりで声を出す」ことを心掛けると、自然に姿勢も良くなり、滑舌のよい、聞き取りやすい声が出る。
・アイコンタクト:インタビュアーの目を見て話すと、話に説得力が生まれる。伝えようとするメッセージが「誰に伝えたいか」を意識する。
・自分の言葉で具体的に話すことを心掛ける。難しい言葉を使う必要はない。また、コメントするときは、エピソードや、数字、あるいは固有名詞を盛り込むと、より自分らしさを出すことができる。
・インタビュー時は、自分が思っているほどの笑顔にはなっていない。表情にも配慮し、笑顔を心掛けるとよい。
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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