【週刊グランドスラム298】社会人OBが中学3年生を指導してきた『MAKE PROGRESS 中3育成会』の成果と今後の展開
活動場所は首都圏の高校、大学、社会人のグラウンドなどで、毎週土・日・祝日のいずれか1日の4時間実施。1日につき、プロや社会人を経験した20名ほどの指導者の中から2~3人を派遣して、指導を行なってきた。
そうして迎えた活動最終日の3月16日。当初の予定ではセガサミーのグラウンドだったが、生憎の雨で埼玉県さいたま市の室内練習場に変更となり、時間も3時間に短縮された。それでも限られたスペースを有効に使い、時間を無駄にせず指導にあたったのは、元・セガサミーの大月将平さん、元・鷺宮製作所の川中 理さん、元・YBC柏の田山 豊さんだ。
同活動を初めて取材したのは1月13日だが、その時に比べて生徒たちの技術は明らかに高まっていた。そして、生徒とコーチの距離がより一層近づいていると感じられた。最も多く指導した大月さんは、12月26日から埼玉県加須市で実施した2泊3日の合宿の影響が大きかったと振り返る。寝食をともにすると、普段の活動では知り得なかった生徒の一面が見えてくる。合宿の最終日に、ある生徒が朝食に遅刻した。それを見た大月さんは、生徒たちにこんな話をしたという。
「野球だけでなく、私生活でもマイナスになる行動をしたら、そこからプラスにするのは大変なこと。僕がそういう失敗をしてきたから言うんだよ」
そんな真っ直ぐなアドバイスが、生徒たちの心をつかんだのだろう。
大月さんは最終日の練習後、高校入学を控えた生徒たちに伝えたいことがあったというが、練習が長引いてしまい、話をする時間を取ることができなかった。だが、片づけを素早く済ませて、コーチ陣や川上さんにこれまでのお礼を述べる生徒たちの笑顔や、仲間と一緒に写真を撮影する姿から、大月さんの思いは十分に伝わっていたに違いないと感じた。
かけがえのない仲間とともに社会人野球の魅力や高い技術を伝えていく
そのきっかけは、大月さんのSNSだった。草野球を楽しむ姿が投稿されているのを目にした川上さんは、大月さんに「そんなに野球が好きなら、指導にも興味がある?」と声をかけた。野球の指導に興味があり、セガサミーを退社してNICE BOXを設立した川上さんのチャレンジ精神にも心を打たれた大月さんは、『MAKE PROGRESS 中3育成会』の指導を快諾した。
社業の傍ら、週末の指導だけでなく、昨年末の合宿にも携わってくれた大月さんからは、この半年ほどの活動を終えて、硬式だけでなく軟式の経験者も参加するため、それぞれどう指導していくべきかという課題が出された。さらに、「指導するからには、僕がいいプレーをできなければ、生徒たちに納得してもらえない。だから、これからもっと技術を高めていきたい」と、今後にかける思いは強い。
「社会人OBたちが、コーチングを学べる組織を作っていきたい。生徒たちにどう声をかければいいのかを学べる場があれば、素晴らしい指導者を育てることができます。そうすれば、中学生に社会人OBの高い技術をより伝えられるし、社会人野球を目指すきっかけも作ることができると思いますから」
『MAKE PROGRESS 中3育成会』は2025年度も実施が決定し、この4月からホームページなどで参加者を募集中。川上さんは新たな出会いを心待ちにしながら、大月さんをはじめとしたかけがえのない仲間たちと力を合わせて準備を進めている。
【取材・文=岩崎実幸】
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