【週刊グランドスラム296】新監督に聞く2025──number7森山 誠(三菱重工West)

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森山 誠監督は選手との対話も重視し、「自分で考える力をつけて、成長につなげていってほしい」と語る。 【写真=宮野敦子】


 緊張が入り交じったような笑顔で「監督になりました」と、新しい名刺を差し出された。『三菱重工West硬式野球部 監督 森山 誠』と書かれた名刺を受け取ると、新監督の覚悟が伝わってくるようで、こちらまで緊張してきた。一枚の名刺がとても重く感じたのは、そのせいだろうか。
「監督になったからといって、選手の見方はコーチ時代と変えないようにしたい。それが正解かどうかはまだわかりませんが、自分の経験に基づいて身構えることなくやっていきたいです」
 そう語る37歳の指揮官は、専修大から2011年に三菱重工神戸へ入社し、2018年には主将として都市対抗準優勝に導く。その後、チーム統合によって2021年に誕生した三菱重工Westでもプレーし、2022年はコーチ兼アナライザー、翌年はコーチ兼任で現役復帰。2024年はコーチ専任となり、今季から監督に就任した。捕手出身の森山監督はどんな戦いをするのか楽しみだ。まずは、4人の正捕手争いがどう展開するのか注目したい。
「昨年は石井雄也が最もマスクを被りましたが、現状では4人ともフラットに見ています。見極めるポイントは、自分で責任が取れるかどうか。例えば、アウトコースに構えてボールが真ん中に入ったとします。もちろん投げたのは投手ですが、もっと投げやすい構えはなかったか、投げる前に声かけができたか、ジェスチャーも必要だったかと考えられるか。そこまで突き詰めて、突き詰めて、打たれたのなら仕方ない。でも、策を講じずに打たれて、『自分のせいじゃない』ととらえては、そこで信頼を失ってしまいます。それは、ベンチに戻ってからの表情や言動でも伝わってきますから」
 そう厳しい言葉を発しながらも、「私もレギュラーになった当初は、まったくできていませんでしたけどね。当時の富 光男監督に、こっぴどく叱られていました」と頭をかく。正捕手の座に就いたのは3年目だったが、この年に都市対抗出場を逃す。4年目に捕手出身の富監督が就任すると、徹底的に基礎を叩き込まれた。
「打たれた時には『捕手のせいだ』と厳しく指導していただきました。もちろん、そこに至るまでの対話がしっかりできた上での言葉です。この時期の経験がなければ、正捕手もすぐに奪われて、もっと早くに引退していたと思います」

「下手くそで不器用」だった現役時代の経験も生きるはず

 そうした経験を積むにつれて、富監督の言葉の意味を理解することができた。それを象徴していたのが、2018年の都市対抗だ。大阪ガスとの決勝、先発は絶対的エースの守安玲緒(現・コーチ)。0対0で迎えた8回裏一死二塁、2ボール2ストライクから投じた125球目を峰下智弘に弾き返され、先制タイムリーを許す。0対2で敗れた試合後、守安に「打たれてすみません」と頭を下げていた。「あんなにコントロールのいい投手が打たれたら、100%自分の責任です」と言い切る。2020年の都市対抗近畿二次予選もそうだ。崖っぷちの第四代表決定トーナメント三回戦、新人だった森 翔平(現・広島)が、9回裏二死から逆転サヨナラ2ラン本塁打を浴びた。「走者を出した時点で、マウンドに声をかけに行くべきだった。森を勝たせてあげたかった」と肩を落とした。
 現役時代の自分を「下手くそで不器用」と表現する森山監督は「だからこそ、量をこなして身体に覚えさせるしかなかった」と振り返る。不安を拭うために、ひたすら練習した。ようやく自信を持てるようになったのは、2018年頃だったという。勝敗を大きく左右するポジションでの経験は、監督になってからも生きることだろう。
「少しでも人のせいにしたら、そこで成長は止まってしまいます。いくら人に言われても、気づけるかどうかは本人次第。自分で考える力をつけて、成長につなげていってほしい」
 目標は、まず前年の成績を超えること。つまり、都市対抗4強だ。その先に、現役時代にあと一歩届かなかった黒獅子旗が見えてくる。
【取材・文=古江美奈子】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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