【週刊グランドスラム294】劇的初優勝の鷺宮製作所で新人賞に輝いた島野圭太【第79回東京スポニチ大会】
第79回東京スポニチ大会は、球春を告げるにしては初日に雪が舞ったりもしたが、大谷翔平(ドジャース)の実兄・龍太が監督に就いたトヨタ自動車東日本が白星発進するなどで話題を集めた。各ブロックを突破した4強から、決勝に進んだのは鷺宮製作所と大阪ガス。昨年の二大大会出場を逃した両チームが、「今季こそ」の気概でシーズンオフを過ごしてきた成果を見せてくれた。
それにしても、鷺宮製作所は投打ががっちり噛み合っていた。5試合中、1点差が3試合。打線が苦しむ時は投手陣が踏ん張り、ワンチャンスを着実に得点につなげる。準決勝で敗れたJFE東日本の落合成紀監督が「質が高い」と脱帽した投手陣は、10人が登板と駒も揃っていた。まずは日本選手権の出場権を手にして、幡野一男監督は言う。
「最後に、キャプテンの野村が決めてくれてよかった。夢のようでした、腰が抜けました。日本選手権出場に、まずはホッとしましたが、東京ドームの出場権をとらないと。東京二次予選は厳しいですから」
投打の歯車が噛み合った戦いの中で輝いたルーキー
帝京大4年時は主にサードを守ったが、鷺宮製作所へ入社するとショートに。2022年秋季の首都大学リーグ2部では遊撃手としてベストナインを獲得しているが、社会人レベルとなると要求されるものが違う。「まだまだです」と島野は謙遜するが、毎日ノックの雨を降らせた八木 茂ヘッドコーチが「よくなっています。すこ~しずつですが」と笑顔で語るように、無失策と無難にこなした。
2019年夏、履正社高は夏の甲子園で頂点に立ったが、2年生だった島野はベンチに入れず。3年時はコロナ禍に泣いた年代だ。帝京大では1年時から定位置をつかみ、4年の大学選手権でベスト8まで進出。社会人では「必死に食らいつき、がむしゃらに」低く強い打球を飛ばすと、すぐにオープン戦に起用されて「いい感じで打てていました」という。
それでも、最初は戸惑った。JPアセット証券で実績を残し、転籍してきた門間滉介とシート打撃で対戦すると、えげつなくインコースを攻められたかと思うと、次は外に曲げられる。
それが、チーム合流から1か月強でこの活躍だ。幡野監督はこう評価する。
「本当によくやってくれた。それと、人間性がいいですね。チームを明るくしてくれています」
兄・凌多さんは大阪桐蔭高で2016年春の甲子園に出場し、妹の愛友利さんは神戸弘陵高で全国制覇。現在は巨人の女子硬式野球チームに所属する野球兄妹で、「妹は、僕の真似をして左打ちなんです」と笑う。
昨年の大学選手権2試合は、いずれも神宮球場だった。
「だから、東京ドームではプレーしたことがないんですよ。次の目標は当然、都市対抗です」と宣言した島野。文句なしの新人賞に輝いた。なお、表彰選手・監督は次の通りだ。
【第79回東京スポニチ大会表彰選手・監督】
最高殊勲選手賞/中島隼也投手(鷺宮製作所)
敢闘賞/大宮隆寛投手(大阪ガス)
首位打者賞/村上公康外野手(鷺宮製作所)=打率.571
打撃賞/猪田和希外野手(JFE東日本)
新人賞/島野圭太内野手(鷺宮製作所)
新人賞/高井駿丞投手(NTT西日本)
新人賞/井上幹太外野手(NTT西日本)
監督賞/幡野一男監督(鷺宮製作所)
特別賞/野村 工外野手(鷺宮製作所)
【取材・文=楊 順行】
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