「どんな形でも貢献したい」。その思いを原動力に恩返しの日々は続いていく
試合の2日前からとにかく緊張していた。昨季もメンバー入りは経験したが、出場機会はなく「自分としても出るイメージをもてていなかった」。ベンチで見守るしかなかった試合から今節で再びメンバー入りするまで約1年。プレシーズンでけがなく試合に出て経験を積み、昨季とは自覚が違った。
「出たときのイメージをしっかりもって試合に入れたので、1年間積み上げてきた結果だと思う」。試合前の緊張も鷲谷にとっては努力の証だった。
中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)に加入して4月で2年になる。同期の3人はすでにチームの中核を担い、1年後輩の新人たちにも先を越されていた。試合に出られない悔しさは当然あったが、それでも鷲谷は下を向かず、自分の役割に目を向けた。「ずっとメンバー外だったけど、今季はその中でも試合に向けてのマインドや長いリーグ戦を戦う上で自分のやるべきことを考えていた。(西川)太郎さん、青木(智成)さんという偉大な両ロックがいる中で、どう立ち振る舞えばチームに貢献できるのかをずっと考えて動いています」
その努力は周りにも伝わっていた。高校の先輩でもある西川は、「メンバーに入っていないときもチームのためにラインアウトの分析などをやってくれていた。そういうところを見ていたので、やってくれるとは思っていた」とうれしそうに話した。
学生時代はけがばかりで試合にほとんど出られなかった鷲谷が、中国RRに加入してリーグワンの舞台でファーストキャップをつかんだ。
「いろいろな人の支えや縁があって、このチームに来られたので、どんな形でも貢献したいと思って日々過ごしている」。そんな思いがいつでも原動力となっている。「ラグビーでもっと成長したいし、それ以外のところでも『鷲谷を獲って良かった』と思ってもらえるように頑張りたい。それが、僕をこのチームにつないでくれた人たち、ここで熱心に指導してくれる人たちへの一番の恩返しになる」
待望のデビューは8点リードで迎えた後半31分、鷲谷は緊張していたが、「長いディフェンスタイムになると割り切って、とりあえずタックルしようと考えていた」と自分のやるべきことに集中していた。約10分のプレー時間で「自信があるタックルを試合の場で出せて良かった」と得たものもある。チーム一丸で守り切った勝利をグラウンド上で味わい、ガッツポーズには気持ちがこもった。
「同期の中で1番出遅れていたけどやっと出られました。高校と大学でたくさんけがをしても、ラグビーを続けてきて、この舞台に出ることができたので本当にうれしいです」
2年目のロックが新たな一歩を踏み出した。「一歩一歩積み上げていって、もっと成長していきたい」。次の試合出場に向けてまた地道に取り組む。そうして鷲谷の恩返しの日々は続いていく。
(湊昂大)
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