【神戸スティーラーズ/Together as a Team】 株式会社TYON 代表取締役社長 髙森 雅和さん
「コベルコ神戸スティーラーズはラグビー界のパイオニアであり続けてほしいですね」
【コベルコ神戸スティーラーズ】
名前を見てトップリーグ時代から応援していただいているSteel Matesの中にはぴんと来た方も多いのではないだろうか。
それもそのはず、髙森さんは早稲田大学で活躍した後、2003年4月、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)に入団。ポジションは、フランカー、NO8。2006-07シーズンまでの4シーズンで33試合に出場した。
「神戸製鋼コベルコスティーラーズのユニフォームを着てプレーした4年間、素晴らしい時間を過ごすことができました。これまでの人生の中でもっとも貴重な経験をさせてもらった時期だったと言えます。決めごとのない変幻自在のラグビーに触れ、試行錯誤しましたが、考える力や判断力が培われました。それに、当時監督を務めていた増保(輝則)さん(アドバイザー)、先輩の野澤(武史)さん、今回のマッチデースポンサーを提案してくれた後輩の営業担当の村上(正幸)くんには今でも会いますし、人間関係にも恵まれていましたね」
髙森さんはそう振り返る。
良い時間が過ごせたチームに対し、恩返しがしたい。
それがパートナーシップ契約やマッチデースポンサーとして協賛する最大の理由だと話す。
実は髙森さんはもともと神戸製鋼所に社員として入社し、人事労政部で働きながらトレーニングに励んでいたが、2003年からプロ制度が導入されたこともあり、途中でプロ選手へ転向。1年目から公式戦9試合に出場し、トップリーグ初代チャンピオンに貢献した。その後、アキレス腱断裂という大怪我に見舞われるも、3年目には7試合に出場。春にニュージーランドでの武者修行を経験した4年目は開幕戦からスターティングメンバーに。9試合の先発を含む11試合に出場した。さらなる活躍が期待されたが、髙森さんは決断を下す。
「4年目のシーズンにレギュラーを取れなかったら引退しようと思っていました。開幕戦から試合に出ることはできましたが、シーズン終盤にメンバー外になり、これが自分の限界なのかなと。日本代表はもちろん、海外のリーグで挑戦するという夢も持っていたのですが、ラグビートップレベルを維持する才能はないんだなと思い、そこでユニフォームを脱ぐことにしました」
能力に限界を感じ選手生活に別れを告げることにするも、その後のことは何も決めていなかったという。就職活動を通じて、ラグビー好きの方との出会いもあり、大手広告代理店へ入社。当初は契約社員だったが、必死に働いて実績を上げていき、社員へ。さらに数年後には部長へと昇進した。2020年に退職するまでの13年間では、東日本大震災の復興支援にも取り組んだ。
そして2020年7月。前職で培ったデジタルマーケティングの経験を活かして、現在の「TYON」の前身である「Cycurity Japan」を設立。神戸市をはじめ自治体からも依頼を受けるなど、順調に業績を伸ばし、TYONのほかにも、いくつかの会社を経営するように。
髙森さんには、ある思いがある。
「トップリーグ元年に神戸製鋼所でも本格的にプロ制度が導入され、そこでプロ選手になった者として、セカンドキャリアのロールモデルにならないといけないなと思っています。僕は指導者にならなかった。けど、現在プロ選手として活動している後輩や今後プロを目指す選手に、こういう生き方もあるんだよと、道を示す大きな責任があるんじゃないかと思っています」
また、チームの歴史を作ってきたOBにも感謝する。ビジネスの世界でも『神戸製鋼でプレーしていた』という経歴が1つの武器になり、実際に力を貸してくれる方も多いそうだ。
「V7という輝かしい金字塔を打ち立てた神戸製鋼のブランド力ですよね。歴史を築き上げた諸先輩方を尊敬しますし、僕も何か継承できるものを残していきたいと思っています。それも、恩返しのほかに、パートナーシップ契約を締結する理由の1つでもありますね」
彼の現役時代を知る者として、多くの試合に出場し、「これから」というところでの退団は正直驚いた。髙森さんも「あのままラグビーを続けるという選択をしていたら、また別の人生を歩んでいたのかなと思いますけどね」と感慨に耽る。
現役時代に髙森さんは子供たちを招待する「髙森シート」を行った。今では山下 楽平や李 承信が同様の企画を実施するが、チームとしては初めてのことだった。
「『髙森シート』を実施した試合に僕、メンバー外になっちゃって。ちょっと恥ずかしかったんですけどね」と笑うも、髙森さんはアイデアマンであり、先をゆく人だった。現在も、常に新しい技術やトレンドが生まれるデジタルマーケティングの世界で手腕を発揮する。
それはチームのアイデンティティにもつながるものがある。古くは故・平尾 誠二元GMの発案で革新的なフラットラインを導入、2018-19シーズンには、これまでどこもやってこなかったFW間のショートパスを駆使したアタックで頂点に立った。チームは常にラグビー界の先頭を走ってきた。
最後に髙森さんはチームにメッセージを送ってくれた。
「コベルコ神戸スティーラーズはラグビー界のパイオニアであり続けてほしいです。ラグビーのみならず、マーケティングの面でも進んでいることをやっているチームであってほしいと思いますね」
本社:〒102-0093 東京都千代田区平河町1-7-16-602 ビューロ平河町
設立:2021年7月15日
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2003年度から2006年度まで神戸製鋼コベルコスティーラーズでプレーした 【コベルコ神戸スティーラーズ】
取材・文/山本 暁子(チームライター)
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