【ラグビー/NTTリーグワン】“初優勝”にも、見据えるのはすでに未来。 走り続けるリーチ マイケル<東芝ブレイブルーパス東京>

【©ジャパンラグビーリーグワン】

マッチエピソード&記者会見レポート
埼玉WK 20-24 BL東京


東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は5月26日、プレーオフトーナメント決勝で埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)を24対20で破り、リーグワン初優勝を果たした。前身のジャパンラグビー トップリーグ時代を含めると、14季ぶりの頂点に立った。

ラグビーワールドカップに4大会連続で出場し、キャプテンとして日本代表を率いた2015年イングランド大会では南アフリカを撃破、2019年日本大会では決勝トーナメント進出と輝かしい実績を残してきたリーチ マイケルにとって、初めて「日本一」に手が届いた瞬間だった。

しかし、リーチは喜びを爆発させず、落ち着いた表情でチームメート、埼玉WKの選手たちと抱き合った。

「もっと『よっしゃー!』という感じが出るのかなと思っていましたが、なんでだろうね……分からないです。(引退する)堀江(翔太)さんの最後の試合で、最後の最後まで同じピッチに立っていて、複雑な思いがあります。勝った瞬間は寂しさ半分、喜び半分でした」

常に自身を高め続けるリーチは、この日も獅子奮迅の働きを見せた。開始直後に埼玉WKの小山大輝がインゴールに飛び込むところを、リッチー・モウンガとのダブルタックルで阻止すると、前半10分にはゴールラインの数cm手前で山沢拓也の突破を阻止し、チームを救った。

苦しい時間帯もチームメートに声を掛け、選手同士のつながりが切れないように、全員が同じ方向を向けるように努めた。この日2トライのジョネ・ナイカブラは「リーチさんは体を張って、背中で引っ張ってくれるので、付いていきやすかったです」と感謝し、木村星南は「リーチさんが試合前から『こんな良い機会はないよ。楽しもう』とずっと言っていたので、みんなも笑顔で楽しめたと思います」と実感を口にした。

35歳にして、念願の優勝。満足してもおかしくないが、リーチは「今季は良いチームができたと思いますが、続くかどうかはまだ分からないです。これから継続できるようにしないといけません」と早くもチームの未来を見据えている。

練習中も同学年の三上正貴とともに先頭に立ち、全体練習終了後には若手を誘って自主練習を繰り返してきた。どこまでもどん欲に成長を求めてきたレジェンドは、まだまだ走り続ける。

(安実剛士)

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「本当に最高の瞬間をキャプテンのリーチ マイケルと共有できることをうれしく思います。これ以上誇りに思うことができないぐらい、チームのことを誇りに思います。

今日の試合の流れが、まさに自分たちのこのシーズンを表していたと思います。レジリエンス(逆境をはね返す力)を発揮して、粘り強く戦うことができました。前半25分ぐらいまでにターンオーバーを5回ぐらいできましたが、すべて相手ボールに戻してしまいました。そこから信じられないようなアタッキングラグビーでBL東京らしさを見せられたと思います。最初の25分はディフェンスが素晴らしく、スクラム、ラインアウトも力強さを見せました。それ以上に強かったのは自分たちの信念です。ハードワークをした選手たちのおかげだと思っています。

素晴らしいラグビーをできたのは、埼玉WKのおかげでもあります。どれだけクオリティーの高いチームかということを見せてくれました。最後はいろいろな展開がありましたが、一つのスローフォワードが明暗を分けました。

信じられないぐらいに素晴らしい観客の前で戦うことができました。選手たち、BL東京に関わる人々をハッピーにすることができました。自分たちに関わる人々のために大きな意味があります。誇りに思える日になりました」

──今季加入したリッチー・モウンガがもたらしたものは?
「世界中の一流の選手を考えても、決勝のピッチに入った回数がもっとも多いぐらいだと思います。チームに対しては判断をシンプルに、明確にするマスターのような感じで伝えてくれていました」

──開幕前に「指揮官から変わらないといけない」とおっしゃっていました。今季をどのように過ごしましたか?
「過去のシーズンで多くの教訓を得ました。スカッドは素晴らしく、毎週成長できています。選手たちはより良くなることを決してやめません。刺激のある環境でやれています。

これまでのシーズンで学んだことは、トライを5つは取りたい、ということと、ディフェンスで3トライ以内に抑えたいということだったので、タイ・リーバ ディフェンスコーチを加えてディフェンスを強化しました。昨季はトップ4のチームに勝てていなかったので、ベーシックな部分を変えていかないといけませんでした。

チャンピオンになることを想像したときに、どんな変化が必要かを考えて、最初にやったことはリーチにキャプテンとして引っ張ってもらうことでした。そこから良い変化を加えることができました」

──若い選手の活躍をどう感じますか?
「誇りに思います。若くて有望な選手がそろっているので、彼らの育成に注力しています。彼らはプレーする権利をつかみ取っているので、メンバーに選ぶことに迷いはありませんでした。自分たちの信念を持つことができている選手たちです。うれしいのは、これからもっと若い選手たちを輩出できることです」

──埼玉WKのロビー・ディーンズ監督との関係は長いですが、決勝で戦っていかがでしたか?
「昨日の記者会見でロビーさんが『負けるならトッドに』と言っていましたが、今日は5シーズンやってきて初めて埼玉WKに勝つことができました。今日も彼らは力を見せてくれましたし、品格のある素晴らしいチームです。ロビーさんのことは尊敬しています」

──(会見終了のタイミングで報道陣に向かって)
「記者、メディアのみなさん、ラグビーの素晴らしさを伝えてくれてありがとうございます。また、リーグワンのみなさんがしっかり運営をしてくれて、リーグワンは素晴らしい大会になっています。試合、コーチ、選手は素晴らしいクオリティーと言えます。あれだけ多くの観衆が来てくれて、このクオリティーの高さは伝わっていると思います。

このために生きてきたと思えるような、今日のような最高の瞬間を、人生において忘れられない瞬間を味わうことができました。みなさん、ありがとうございます」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「今シーズンをとおして多くのファンが応援をしてくれて感謝しています。やっと優勝できて、ホッとしています。(引退する)堀江(翔太)さんと最後の試合で、最後の最後まで同じピッチに立っていて、複雑な思いがあります。勝った瞬間は寂しさ半分、喜び半分でした。

(トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ体制で)BL東京は5年間、努力を積み重ねてきて、やっとトロフィーを持ち帰ることができるのでうれしく思います。今日は府中に帰って、ビールを飲んで一晩過ごしたいと思います」

──今季加入したリッチー・モウンガがもたらしたものは?
「ラグビーIQと言えるかなと思います。成功を収めたチーム、(スーパーラグビーの)クルセイダーズ、(ニュージーランド代表)オールブラックスで優勝や勝利をつかんできた選手です。判断力、ゲームコントロールをする能力を今日の試合でも発揮していました。チームにとって大きな存在です」

──堀江選手が出てきて、相手のディフェンスラインに変化はあったでしょうか?
「後半に入ってきて、どちらかというとセットピース、スクラムをどう変えてくるかなと思っていましたが、BL東京が圧力を掛けることができていました。ディフェンス面では堀江さんは声掛けがあります。誰が右に行くか、左に行くか、など。最後まで勝ちにいくところで声を出したり、パスをつないだりしていたと思います」

──TMOがいくつかありましたが、どのように感じましたか?
「今日も本当によく見てくれていました。試合中に気づかないことも、レフリーは見てくれていて、良かったと思います」

──今日の一番の勝因は?
「TMOじゃないですか(笑)。ペナルティを取るか取らないか本当に微妙なところでしたが、スローフォワードの判定などもあったので。全体的にディフェンスは頑張っていましたし、セットピースも安定していました。その3つですね」

──試合が終わった際にそんなに喜んでいないように見えましたが?
「もっと『よっしゃー!』という感じが出るのかなと思っていましたが、堀江さんが最後の試合ですし、なんでだろうね……分からないです。先ほど言ったように半分の感情でした。帰ってしっかり喜びたいと思います。

全国優勝は人生初で時間はかかりましたが、これから継続できるようにしないといけません。メンバーの入れ替えもある中で継続できるようにレガシーを残していきたいと思います」

──胴上げは初めてでしたか?直立のような姿勢でしたが?
「初めてです。複雑な気分で、しっかり体幹を決めてやっていました(笑)。もっと上げてほしかったですね(笑)」

──BL東京がプロクラブ化したことで、チームは変わりましたか?
「そこはあまり考えていませんでした。ただ、優勝したことによってBL東京でプレーしたい選手も増えるだろうし、ファンも増えると思うので、そこが大きいかなと思います」

──キャプテン就任の要請があった際にどう思いましたか?
「自分に集中したかったので最初はイヤだったのですが、やるとなったら責任を持って、チームのダメなところを変えて、良くできるようにフィードバックをしていきました。良いチームができたと思います。これが続くかどうかはまだ分からないです」

――若い選手の活躍をどう感じますか?
「彼らは試合に出たいというだけでなく、日本代表になりたい、世界でプレーしたいという意欲があります。5年前と比べたら練習量が多くて、向上心が高いと感じます」

――一昨日までワクワクと緊張の半々ということでしたが、今日はどうでしたか?また、表彰式でヘッドキャップをかぶっていた理由は?
「(ヘッドキャップは)なくさないように(笑)。近くに置いておこうと思っていました。

今日はワクワクと緊張で良いバランスだったと思います。キャプテンとして何ができるかを考えて、タックルとポジティブな声掛けだと思ったので、80分良い感じでできたと思います。良い状態で試合に入れました」

――序盤から終盤にかけて気持ちの変化はありましたか?またキャプテンとしてどのようにチームを率いましたか?
「自分たちの表情を気にしていました。試合中に向こうの表情が暗くなって、自分たちが生き返ったようになっていきました。ただ、僕らはショットを狙ってミスして、気持ちがダウンしました。そこから埼玉WKがどんどん攻めてきて、トライされたりして、気持ちの変化がありました。キャプテンとしてポジティブな声がけをして、全員が同じ方向性に向かっていけるようにしました」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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