<国内男子ゴルフ>杉浦悠太のプロ転向の舞台裏

日本ゴルフツアー機構 (JGTO)
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■第50回記念「ダンロップフェニックス」11月16日ー10日 フェニックスカントリークラブ(宮崎県)/ 7042yard・par71 ▼ 19日・大会最終日

史上7人目のアマV達成が、すなわち新たなプロ誕生の舞台となった。

ここからは、敬称略させていただく。
杉浦悠太(すぎうら・ゆうた)が、50回大会の表彰式でプロ宣言。

「まずプロとして、1勝が目標です」と、その場で決意表明した。

4差で出て、一度も首位を譲らず、2打のリードを保って入った18番で、ピンそばバーディのウィニングパットを待つ間、福井工業大付属福井高校時代の同級生キャディ、伊予翼さんとなにやら談笑。

「あれでいくら賞金が上がったんだろう・・・。凄いよね」と、同組で回ったナショナルチームの先輩、中島啓太(なかじま・けいた)のバーディ締めに惚れ惚れ。

これから自分も何度でも味わうことになるプロの1打の重みを想像して震えていた。

無事3差で逃げきり、岩﨑亜久竜(いわさき・あぐり)や桂川有人(かつらがわ・ゆうと)や清水大成(しみず・たいせい)ら、大学の先輩プロの祝福でもみくちゃになりながら、スコア提出所に入った。

【もみくちゃです】

通算では7人目だが、日本大学の学生が、プロの試合でアマ優勝したのは、史上初の倉本昌弘(くらもと・まさひろ、1980年中四国オープン)に続く2人目。

「ずっと目標にしていたので本当に嬉しいです」と、浸る間もなくスタッフに取り囲まれた。

本大会をアマで出場した杉浦は、優勝賞金4000万円は受け取れない。

でも、この場でプロになると決めるなら、V副賞の「メルセデスベンツ EQS450 4MATIC SUV」や、宮崎牛一頭分など、豪華賞品はいただけるという。

「ぜひ受け取っていただきたい」と、主催者さんからの申し出に戸惑った。

もともと次々週にはQTサードも受験するつもりで、近々の予定ではあったが、すぐこの場で、となるとは思ってもいない。

父親には「ユウタがなりたいと思うときになればいい」と任されていた。
「でも監督には一度聞いてみないと・・・」と、本人が言うが早いか、スタッフが和田光司・ゴルフ部監督にその場で電話。

「いいよ、ぜんぜんかまわない」とあっさりと返ってきた。

それよりなにより「人生、変わるぞ」と、教え子の快挙に興奮していた和田監督。「来週も、再来週も、出てまた優勝しちゃえ」と、本人以上に前のめり。
恩師の威勢に押されてすぐその場でプロ転向届けにサインした。

【即サイン】

杉浦プロの誕生である。

「3日目の朝から緊張していて。今朝もゴハンが入らない」。50回目の大舞台でプレッシャーをはねのけた。

11番のダブルボギーと12番のボギーで2打差に詰められ、「一番狭い」と、畏れる14番のティショットは恐怖で震えた。

でも、「ドライバーを持って行かなきゃいけない。本当に自分を信じて打つことだけ考えた」と、自分の弱さにも打ち克った。

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「私は80を切ったことはない」と、笑うゴルフ好きの父・博倫(ひろみち)さんの手ほどきで3歳からゴルフを始め、小学6年間は少年野球との二刀流。
どちらも手を抜かなかった負けず嫌いの頑張り屋さんだ。

お父さんが自宅の庭に作った“鳥かご打撃場”と、お手製のグリーンを練習場所に、小学校低学年ですでにお父さんのベストスコアを抜いていた。

石川遼の史上最年少優勝に憧れ、石川主催のジュニア大会を制した会場で、生リョウくんに祝辞をもらい、大喜びしていた少年が、ビッグタイトルを手にしてプロの一歩を踏み出した。

左林に入れてボギー発進した1番のグリーンサイドでは動揺もプレッシャーもあるだろうに、随行のボランティアさんに気付いて「宜しくお願いします」と、スタート時にしそびれたご挨拶と、握手を交わす様子に、実直な性格がにじみ出ていた。

【表彰式後のサインの列にも】

表彰式後に取材に応じたお父さんは、ジュニア期から息子の成長に合わせたクラブフィッティングについに最後まで無償で対応してくれ、将来のマスターズ出場を楽しみにしながら亡くなった地元愛知の恩人を思って目を赤くしていた。

1985年の12回大会で、大会初の日本人Vを達成した中嶋常幸が「けれんみが、ないのがいい」と、大会初の杉浦のアマ快挙を表した。

「けれんみ=外連味」は、歌舞伎用語から派生し「奇抜さやごまかしで、客を喜ばせる演出」が元々の語源という。
杉浦にはそれがない。自然体。だからいい、と中嶋は言った。

お父さんは、次週にもデビュー戦に挑むであろう息子に贈る言葉として、「楽しくやれよ、楽しくやれば、多少つらくても乗り越えられる」と、ひょうひょうと言った。

親子揃ってけれんみが、ないのがいい。

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