私のミッション・ビジョン・バリュー2023年第7回 春名竜聖選手「痺れるほどすごい選手」
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2023年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2023年第7回は春名竜聖選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
「5回ぐらいですかね。1回1時間ぐらい、みっちり話をしました」
Q.面談をしてみて、いかがでしたか?
「今までも目標とかはうっすら掲げてはいたんですけど、ここまで深く考えることはなかったですし、話をしていく中でより深いところを探ってくれたりもしたので、自分自身の中で考え方をかなり整理することができました。ここまで自分の過去を深く、細かく、誰かに話をしたことはなかったので、いい体験ができたと感じています」
Q.プロ1年目で作成したMVVは今後のサッカー人生の幹となりそうですね。
「本当にそう思います。プロになって早い時期にこういうことができて、自分としてはすごくよかったと思っています」
「活力になるというのは、周りの人の活力になりたいというイメージです。ワールドカップに出場して、いい成績を残すことによって、見てくださる多くの方に感動や刺激を与えて、仕事など日常生活の活力になればいいなという思いを込めました」
Q.目標だと「W杯に出たい」と思うだけで終わってしまうと思います。でも、MISSIONにすることによって、「活力になる」ところまでつながるんでしょうね。そして、それが春名選手の大きな力になると思います。
「実際、前回のワールドカップを見て、感動をしましたし、いい刺激を受けました。その週の練習や次の試合に向けて、大きな活力になったんです。その実体験から選んだ言葉です。ワールドカップはやっぱり特別な舞台。Jリーグの試合を見て刺激を受けることもありますが、あれだけたくさんの人に対して大きな刺激を生み出せるのはワールドカップしかないと思っています。だからこそ、ワールドカップを目標にしました」
Q.今まで印象に残っている大会は?
「直近のカタールでのワールドカップのスペイン戦やドイツ戦は強烈に印象に残っています。強豪に勝ったことに衝撃を受けましたし、サッカーをやっていない人でもすごいことだと感じたと思うんですよ。その衝撃はワールドカップにしかないと思います」
Q.さらに「日本の歴史を変え」という言葉もポイントだと思います。出場するだけでなく、今まで以上の結果を出すことが目標なのですね。
「単純に世間から見て分かりやすい結果を残したい。強豪に勝つことも素晴らしいですけど、過去最高の成績をおさめることや優勝することといった、ベストの成績を残すことが一番分かりやすい結果だと思うんです。そういう思いを込めました」
Q.今年、春名選手はU-20ワールドカップを経験して、大きな刺激を受けたのでは?
「それは間違いないですね。試合に出ていないですけど、日本を背負って大会に参加して、よりワールドカップへの気持ちは大きくなりました。U-20ワールドカップとワールドカップでは規模がまったく違うと思います。どんな雰囲気なのかがすごく気になりました。それまでワールドカップを意識することはあまりなかったんですけど、U-20ワールドカップに参加して、よりワールドカップへの気持ちが強くなりました」
Q.現在はJ2でプレーしていますが、ここから代表入りを駆け上がっていくビジョンですね。
「ちょっとでもチャンスがあれば、食い込んでいきたいと常に思っています」
「MISSIONとつながっている言葉なのですが、感動とか、活力とかを生み出すためには影響力は非常に大事になる。ピッチ内だけでなく、現役を引退した後も影響力は大きな力になる。現役のうちにどんどん高めていきたい。『より多く』という言葉には子供たちやサッカーをやっていない人たちが込められていて、そういう方々は影響力の強い人の言葉や行動から影響を受けると思うんです。そういう思いで、この言葉にしました」
Q.現在、「影響力を持って、より多く夢を与えられる人間」は誰だと思いますか?
「僕の近い人で言うと、川口能活さん。ワールドカップに4回出場した方で経験もあって、すごく影響力を持っている。年代別日本代表でコーチと選手という関係で接すことが出来たことによって、夢を与えてもらったんです。川口さんに指導してもらい、自分自身に強く可能性を持つことができました」
Q.川口さんから学んだことや影響を受けたことは?
「僕の年代では最も多く関わらせてもらったこともあり、『指導者としてはもちろんですけど、1人の人間として応援するよ』という声をかけてもらったことは自分にとってすごく大きかった。あと、サッカー面でいろんなアドバイスを受けて、『大きな可能性があるから、どんどん突き詰めていった方がいい』とも言ってもらいました。そういうシンプルな言葉でも、影響力の大きな人の言葉はすごく刺さるんです」
Q.川口さんの現役時代は知っていますか?
「あまり知らないんですけど、指導を受けて、すごさは分かりました。それが影響力なのかなと感じました」
Q.影響力を持つために必要なのは結果を残すことでしょうか、それとも、いろんな経験をすることでしょうか?
「両方が理想ですね。経験と結果は両輪だと思っているので、両方積み上げていきたいと思います」
Q.川口さんは現役時代、28年ぶりのオリンピック出場やワールドカップ初出場権を得たり、海外でプレーしたり、日本サッカーの道を切り開いた人です。誰もやったことのないことを成し遂げてきたことが今の影響力につながっているのでしょうね。
「確かに、それはあると思います。誰もやったことのない達成することはすごいこと。僕の場合、今は水戸ホーリーホックでJ1昇格を果たすことだと思うので、そこを目指していきたいと思います」
「これは昔から大事にしている言葉ではあります。それを大人になって、より極めようという意味で掲げさせてもらいました」
Q.両親からそのように言われていたのでしょうか?
「中学1年生の時のコーチから『謙虚』という言葉を教えてもらって、辞書で調べさせられました。それがきっかけで、この言葉を知ったのですけど、それ以降、自分の中ですごく意識してきました。小学校時代の友達と話すと、『中学で性格が変わった』とよく言われるんです。だからこそ、それを意識していこうと思っていますし、今も大事にしつつ、より高めていきたいと思っています」
Q.セレッソ大阪のジュニアユースはエリートの集まりというイメージがあります。そこで「謙虚さ」を持てたことが大きかった?
「もちろん、セレッソ大阪のアカデミーに入る選手たちは自分に対してすごく自信を持っています。そのコーチは、そういう選手が多い中で謙虚さをより意識できるかが大事だと思っていたと思うんです。少しですけど、その言葉を理解できたので、それ以降、大事にしています」
Q.2つ目は「対自分の+α:新しい自分になるためのチャレンジ」ですが、こちらの言葉はいかがでしょうか?
「この言葉は水戸に来てから考えるようになった言葉で、スタッフの方と話したところ、謙虚さを大事にしつつも、尖っている部分もGKとしても、1人のサッカー選手としても大事になってくるとアドバイスをもらったんです。謙虚さだけでなく、いい意味で尖っている部分をピッチ上で出していければ、よりサッカー選手として自立できるんじゃないかという意味を込めて、また新しい自分になるためのチャレンジという言葉を選びました」
Q.1つ目と2つ目はセットなんですね。
「そうですね。謙虚でありながら、ギラギラ感も出していきたいと思っています」
Q.GKは存在感を出さないといけないですからね。
「そういう点も川口さんを見習いたいと思っています。水戸で言えば、(本間)幸司さんですね。謙虚さとギラギラ感を持ち合わせている。自分にとって、すごくいい見本が近くにいてくれる環境は大きいです」
Q.3つ目は「対相手:多くのコミュニケーションで人との関係性を深める」。こちらの言葉の思いは?
「周りの人の話を聞いて、より知識を増やしていくとか、人の考えを聞くことによって自分の成長につなげていきたい。サッカー選手として、多くの人とのコミュニケーションを取ることを大切にしていきたいと思って選んだ言葉です」
Q.サッカー界だけでなく、違う分野の方ともコミュニケーションを取りたいのでは?
「チーム内でも多くのコミュニケ―ションを取って関係性を深めることは大事。それは意識しなくても、水戸はほとんどの選手がそういうことをやっているので、そこは続けつつ、サッカー以外の分野の人ともいい関係性を作ってコミュニケーションを取ることによって、自分の知識と視野が広げていきたい。それはサッカー選手としてだけでなく、一人の人間としてすごく大事になると思うので、意識していきたいと思っています」
Q.水戸で定期的に行われている人材育成プロジェクト「Make Value Project」はそのいい機会になっているのでは?
「そうですね。サッカー以外の分野とも話す機会を作っていただき、すごく感謝しています」
Q.「人との関係性を深める」という点において、春名選手のベンチでの振る舞いは素晴らしいと感じています。声がけや雰囲気づくりなど、意識して行動しているのでは?
「今、試合で自分を表現できるのはそういうところなので、意識はしています。すごく意識しているわけではないのですが、ちょっと意識していたことが無意識で行動として出始めているということは自分でも実感しています。そうやって見ていただけていることは自分にとってすごく嬉しいですし、MVVを作成した成果なのかなとも感じています」
Q.チームのために行動することが、最終的に自分に巡ってくると思います。
「今はなかなか試合に出られないのですが、その中でも常に自分が成長できるための行動や選択はしていきたいと思っています。ちょっとのところでも心がけて行動していきたいと思っています」
「GKですけど、GKらしくないGKを目指していて、他の選手があまりしないプレーをどんどん見せていきたいと思っています。(山口)瑠伊君が好セーブを連発して、見ている人を痺れさせているのを見てすごいと思ったんです。自分もそういう選手になりたいと思って、自分なりに考えて、自分なりの痺れるプレーやすごいと思ってもらえるプレーをしたいと思ったのがこの言葉のきっかけとなりました」
Q.他のGKとの違いはどこだと思っていますか?
「一番違いを出せるのは足元の技術だと思っています」
Q.GKとして影響を受けた選手はいますか?
「誰か一人を上げるのは難しいですけど、エデルソン選手(マンチェスター・シティ)は足元の技術のところで勉強になることがあります。近い人で言うと、昨年一緒に練習をさせてもらったセレッソ大阪のキム・ジンヒョン選手。挙げるとすると、その2人ですかね」
Q.プロ1年目、ここまで7試合に出場しています。自身の進化を感じていますか?
「感じています。試合に出ることによって、自分自身で気づいていないところの変化を周りから言われることが多いんです。水戸で2試合出場してから、U-20ワールドカップに参加したのですが、チームメイトから『変わったな』と言われました。自分が変化したというより、周りから見た自分が変化しているという点で、少しずつ成長できているのかなと感じています」
Q.充実のルーキーイヤーを過ごせていますね。
「まだ1年目なので、いいスタートを切れたと思っていますけど、GKは遅咲きの選手もどんどん出てくるポジションなので、全然現状に満足はしていません。逆に危機感もあります。7試合に出場しましたけど、いい出来事ばかりではありませんでした。でも、そこも覚悟していたところ。これからも満足することなく、隙なくプレーし続けたいと思っています」
Q.リーグ戦も残り4試合となりました。最終盤に向けての意気込みを聞かせてください。
「試合にはあまり出ていないですけど、ベンチ入りとして試合に関わることができている。毎試合18人に選ばれる選手は責任を持って試合に挑んで、勝つための行動をしないといけないと思っています。今の自分の立ち位置は試合に出る可能性は少ないですけど、チームへの影響力は小さくないと思うので、自分の役割をしっかり理解しながら行動していきたい。ただ、現状の立ち位置で満足しているわけではなく、日々の練習でポジションを奪う意気込みを持って取り組むことも大事にしています。チャンスがあれば、どんどん食い込んで行けるようにアピールしていきたいと思っています。練習ではギラギラしながら、試合ではチームのために全力を尽くします」
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