私のミッション・ビジョン・バリュー2023年第6回 長井一真選手「プロフェッショナルな生活をする」
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2023年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2023年第6回は長井一真選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
「6~7回行いましたね。スタートは沖縄キャンプの後の2月下旬。そこから月に1回ぐらいに行いましたが、5~6月は2週に1回ぐらいのペースで行っていました」
Q.過去を振り返ったり、思いを第三者に話したりする経験はいかがでしたか?
「このチームに来てから、こういった面談を行うようになりましたし、地域の子供たちと触れ合って話をする機会が増えました。そうやって言葉にすることで、自分の考えていることや感じていたことが明確になるし、思い出すことができる。とてもいい時間になったと感じています」
「チームという一つの集団の中で、それぞれ個性があるし、僕自身も個性があると思っています。そういう個性をより輝かせられるようにするためにも『唯一無二の存在』になって、頼られるとか、チーム内で重宝されるようになりたいという自分自身の願望も込めて、この言葉にしました」
Q.現在の水戸において、長井選手の「唯一無二」はどんなところだと思いますか?
「まだ全然出せていないというのが正直な思いです。自分自身の良さは実際にアツマーレに来て、練習を見ていただいた方には分かってもらえているかもしれませんが、結局あまり先発で試合に出られていないので、スタジアムで試合を見る方にはまだ分かってもらえていないと思っています。そこは歯がゆい部分でもあります」
Q.もっとどういうところを出したいと思っていますか?
「もっとボールを受けて、預けて、受けてということを繰り返して、他の人が見えないところや出せないところにボールを出せるのが自分の良さだと思っています。そういうところをもっと出したいと思っています」
Q.ピッチ外ではいかがでしょうか?
「ピッチ内とピッチ外を完全に分けて考えることは僕にとってすごく難しくて、全部つながっていると思っています。ピッチ外の信頼はピッチ内につながるし、ピッチ内で信頼されれば、ピッチ外でも慕われるようになると思っています。シーズン終盤戦に向けて、状態が上がってきたチームの中にいたことによって、徐々に信頼をつかめるようになってきているように感じています」
Q.水戸は若い選手が多いチームです。その中でプレーすることに対して、どういうことを意識していますか?
「若いがゆえに明確な結果を出せば、みんながついてくるという感じですよね。自分がいいプレーをすれば、周りの選手がアドバイスを求めてやってくるようになる。逆に自分が良くない雰囲気を出した時には下の世代の選手たちはあまり近づいてこないような気がしています。そういったことは意識していますね」
Q.残り5試合はMISSIONを確立させるための試合でもありますね。
「残り試合は少なくなりましたが、その中でいかに自分を出せるか。もちろんチームあっての自分なので、そこを意識していきたいと思っています」
「この言葉を考える時に僕の中でサッカー選手としての目標として『日本を代表する選手になりたい』というものがありました。別に日本代表でなくても、日本を代表しているような選手はいますし、水戸には(本間)幸司さんのようなクラブを代表する選手がいます。今は選手じゃないですけど、ホソさん(細川淳矢CRC)もそうですね。誰からも愛されている。そういう選手になりたいと思っています。たとえば、長友佑都選手は日本代表に入っていましたけど、日本のサッカーの代表として真っ先に出てくる選手の一人だと思うんです。そういった選手になりたいんです。でも、そのためにはその土地やチームに重宝されたり、頼られたり、愛されたりしていないとなれないと思う。そういうエネルギーを持った選手になりたいと思って、この言葉を選びました」
Q.そのためにどういったことが必要になると思いますか?
「水戸に来るまで『サッカーで示せばいい』と考えていました。でも、サッカーだけでは人から信頼はされない。一社会人として、サッカーがない状態でも、自分にどれぐらいの価値があるかを考えるようになったんです。先日、日立市の老人ホームに訪問した時や日立市の子供たちと話をした時に『こういう活動が大事なんだ』とすごく感じたんです。コミュニケーションをもっといろんな人とたくさん取れるようになったら、自分のことを多くの人に理解してもらえると思うし、相手のことも理解できるようになる。そういう関係を多く作ることが大切だなと思っています」
Q.先ほど、名前が出ましたが、本間幸司選手や細川淳矢CRCとの出会いも大きかったですか?
「2人とも人としてすごいと思いました。幸司さんは選手として一緒にプレーしていてすごさを感じますし、ホソさんはすでに現役を引退して違う役職で活動していますが、サポーターと話をしていて、ホソさんの名前がよく出てくるんですよ。それって、すごいことですよね。ホンマにさっきもサポーターがホソさんの話をしてくれたんです。どこでも名前が出てくる。しかも、誰も悪いことを言う人がいない。それがまたすごいと自分の中で思っていますね」
Q.細川CRCとは一緒にプレーした経験はないと思いますが、違う立場で接してもすごさを感じますか?
「めちゃくちゃ感じますね。同じセンターバックとして、サッカーの話もしますけど、人としてすごいと思うのは、自分のことよりも周りに気を遣えるところ。ホソさんも幸司さんも周りの人のことを考えて行動できるんです。そういうところがすごいと思います」
Q.水戸に来て、長井選手自身、変化している実感はありますか?
「オンザピッチとオフザピッチのいいメンタルの状態を維持できているかなと感じています。移籍してきて良かったと思えています」
「一時期、自分ではコントロールできないことに対してストレスを抱えていたことがありました。でも、ある時、西村卓朗GMから、インサイド・アウトという、自分が変わることによって周りが変わっていくという言葉を教えてもらうことがありました。周りが変わって、自分が変わるんじゃなくて、自分自身が変わって、周りからの評価を変えていくという話を西村GMから聞いて、まさに今の自分に必要なのはそれだなと感じたんです。自分自身がやり続けることでしか、状況を変えることはできない。周りに対して、いろんな思いを抱いても、結局は自分なんですよ。だからこそ、毎日全力で取り組まないといけないとあらためて思うようになりました。けがやコンディションの問題もあるけど、そういったことは関係なく、ガムシャラに目の前の相手に負けないとか、そういう気持ちで日々の練習で取り組んでいくことが大切だと思い出したので、この言葉を選びました」
Q.自分の変化を感じていますか?
「今回作成したMVVは水戸にいる間に意識するものではなく、自分の人生において意識していく言葉なんです。僕は頻繁にMVVを見直すようにしていて、先月ぐらいに『今の自分はどうだろう?』『やるべきことをしっかりやれているかな?』と自問自答することもありましたし、『本当に自分のサッカー人生はこのままでいいのか?』と考えるようになってから変わりはじめた実感があります。自然と練習中からすごく考えてプレーするようになったし、自分がこうしたら周りが楽になるんじゃないかとか、周りにこう動いてもらったらもっとこういうことができるようになるんじゃないかとか考えるようになって、さらにそれを発信できるようにもなったんです。段々いい方向に向かっていると感じることができています」
Q.いくら心の中で思っていても、こういう思いが薄くなったり、緩んでしまったりすることがあるからこそ、こういう形で言語化して、いつでも目にすることができるようにしてあることが大事なんでしょうね。
「僕はそこまでメンタルが強くないというか、自分の気持ちは持っているけど、うまくいかなかったりすると『もういいや』と思ってしまいがちで、しかも行動で出してしまうところがあったんです。それが良くないなと思っていたからこそ、VALUEとしてこの言葉を選びました」
Q.もう一つは「相手の気持ちを考える」です。
「これも今言ったこととつながるのですが、『もういいや』となった時に周りがどう思うんだろうかと考えるようになりました。自分の行動一つに対して、周りがどう感じているのかということを、水戸に来てからより考えるようになったんです。それが人付き合いの中で大事だなとあらためて感じています。自分自身、いろんな人と出会って、自分とは異なる価値観の人の考え方を知ることも大事だと思いました。そういうことを考えることが、自分のためになると気づくことができました」
Q.それこそ、本間選手や細川CRCはこのスペシャリストです。
「そうなんですよ。2人とも、まず自分の考えを言うんじゃなくて、相手の話を聞くんです。そういう人としての余裕をすごく感じますね」
Q.2人の根幹に共通してあるものは「チームをよくしたい」という思いだと思います。
「本当にそうだと思います。今までのサッカー人生において、自分がサブの時は自分の用意だけをしていました。でも、それではダメだなと思ったんです。特にこのチームにはそういう空気があって、10戦負けなしの時もそうでしたが、自分が出た時に輝くためにもチームをいい雰囲気にしようと考える選手が多い。チームがよくなれば、いい状態で入ることができる。そういうことを考えられるようになってきました」
「サッカー人生という枠で考えた時にもちろんプロとしてお金をいただいて、好きなサッカーをさせてもらっている以上、何年間この生活ができるか分かりませんが、この時間を絶対に無駄にはできない。プロフェッショナルとして、オンザピッチだけでなく、オフザピッチでも食生活とか、立ち振る舞いとか、言動とかがすごく大事になると思っています。僕自身、サッカー選手を見て、憧れを持っていたので、自分も憧れてもらえるような選手になるためにも、常にそういったことを心掛けないといけないと思うようになりました」
Q.特に食生活に力を入れているという話を以前聞きました。
「水戸に来てから体脂肪がすごく落ちましたし、体重も減りました。でも、筋肉量は変わっていない。すごくいい状態になっているので、続けていきたいと思っています。あと、昨年までずっとけがを繰り返してきたんですけど、水戸に来てからケアを受ける回数が明らかに増えたこともあって、けがが減りました。練習後だけでなく、前にもケアをしてくれるトレーナーの方のおかげです」
Q.けがをしないことによって、コンディションを上げることができ、パフォーマンスも高めていけますね。
「常に練習にいることで、周りに自分のことを理解してもらえるようになるんです。僕のプレースタイルは、周りがパスを受ける準備をしてくれないと活きないんです。パスを出したいけど、出せないという試合が多かったんですけど、徐々に周りが分かってくれるようになりました。もちろん、フィジカル的なコンディションもこれからやり続けることによって上がっていくと思います。コンディション作りはめちゃくちゃ大事だと感じています」
Q.他に何か意識的に取り組んでいることはありますか?
「あと、寝るのはすごく早いんですよ。大学3年生の時から夜9時には布団に入るようにしています」
Q.いい生活を送ることによって、パフォーマンスが上がることを大学生時代から経験していたのですね。
「生活を改善することによって、やらなきゃいけない気持ちになりますよね。やっぱり、考えることって、大切ですよね。考えることによって、周りにも発信できるようになる。今年、水戸に来て最初の頃はあまりチームに入り込むことができていませんでした。それは自分のことばかり考えていたからだと思っています。周りに対して要求していなかったし、何を要求すればいいんだろうと思うこともありました。でも、最近は本当にチームのことを考えるようになったことによって、周りの選手といいコミュニケーションを取れるようになったと感じることができています」
Q.はじめての移籍でしたし、『活躍してやる』という意欲を強く持っていたからこそ、周りを見るのは難しかったんでしょうね。
「そうだと思います。気づくまでの期間を無駄にしたと捉えるのか、気づいて成長できたと捉えるのかは今後次第だと思っています。『あの時期があって良かった』と思えるように、これから結果を残していきたいと思っています」
Q.サッカー選手として強い土台を作れそうな1年になりそうですね。
「それは感じています。自分の基盤になるというか、成功体験も失敗体験もできたいいシーズンになっていると感じることができています」
Q.残りのシーズンに向けての意気込みを聞かせてください。
「全試合出場は自分個人の目標として持っています。チームとしては残り試合全勝。プレーオフはかなり厳しい状況ですけど、やるべきことを全力で取り組むだけです。チームとして勝ち点3を毎試合取りに行くために戦いたいと思います」
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