僕らがいなけりゃ始まらない! 縁の下の力持ち、クボタマンのフロントロープライド
対談に協力してくれたフロントローの選手たち。左から才田選手、福田選手、加藤選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
ラグビーのスクラム第1列=フロントロー それはまるでお母さん
フロントローってきっとそんなポジションではないでしょうか。
唯一欠けたら試合ができないポジション。
つまり縁の下の力持ち、家庭でいったらお母さんみたいな存在です。
やってくれて当たり前、ご飯を作ってくれて、洗濯してくれて当たり前。
でもお母さんがいなくなったらみんな困ってしまう。
そんなフロントローの地味でひたむきな仕事と、スクラムの奥深さと魅力をお伝えしたくてフロントロ―3名の選手にお話を伺いました。
今回、お話を伺った選手たちは、プロップから才田智選手と加藤一希選手、そしてフッカーからは福田陸人選手です。
※フロントローとはラグビーのポジションで、プロップ(1番・3番)とフッカー(2番)の総称です。
最初は、中学生の頃からプロップ一筋、プロップを愛し、プロップに愛された男、プロップの申し子、才田選手から
才田選手(以下、才): プロップ歴16年、自慢というかスクラムの事なら一生語れますね。こだわりが一番強く、誰にでもできるポジションではないので。
プロップは専門職なので、プロップが居ないと試合ができないっていう所が自慢です。
その中で自分の強みはスクラムとセットプレー。ラインアウトとスクラムの所では存在感を絶対に出さないといけない。
最近はフィールドプレーも求められているのでボールを持って走ったり当たったりパスしたりとか、そういう所にも注目して欲しいです。
プロップがいいパスをすると結構みんな喜んでくれるので。当たるとみせかけてパスするとか、そういうのところも見てほしいです。
才田智(さいたさとし)/1993年6月7日生まれ(29歳)/福岡県出身/身長180cm体重113kg/東福岡高校⇒同志社大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2016年入団) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
加藤選手(以下、加):オフフィールドの部分になるとプロップって結構矛盾してる事が多くて。体重は落としちゃいけないのに沢山走らないとならない、体型維持って所が難しいですね。
S&Cコーチ(選手の筋力やコンディションを管理するコーチ)の熱いご指導に、何も文句を言わず黙々とできるのは、多分プロップだけじゃないのかなと思います。
ね、才田さん。
才:間違いないですね。他のポジションの選手はもう少し反論しますけど、フロントローは言われた事を黙ってやるので。
もう究極のイエスマンですよ。
加:ちなみに僕の強みはタックルです。本当にタックルが好きなので。
スクラムだけじゃなくてディフェンスの部分でもインパクトを残して行きたいというのはいつも思ってますね。
加藤一希(かとうかずき)/1994年12月7日生まれ(28歳)/愛知県出身/身長185cm体重112㎏/春日丘高校⇒中部大学⇒宗像サニックスブルース⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2022年入団) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
福田選手(以下、福):僕はまだフッカー歴が浅いんですが、スクラムでも要となるポジションなので舵取りが大事ですし、フロントローたちを支えて行くという所が自慢ですね。
僕自信の強みというのはフィールドプレーもですが、最近はスクラムにも自信が付いてきたのでそれを見て欲しいです。
福田陸人(ふくだりくと)/1999年12月9日生まれ(23歳)/栃木県出身/身長174cm体重96㎏/国学院大学栃木高校⇒明治大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2022年入団) 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】
才:100~110キロぐらいのプレイヤー8人対8人がとにかくぶつかり合う。どっちが強いか、プライドかけて戦っています。その男同士のプライドがぶつかり合うところを見ていただけたら楽しいと思います。
加:特にスクラムは前列の僕らが主人公だと思っているので。
例えばスピ―アーズがスクラムでペナルティをとったら、みんなが前1、2、3番(フロントロー)を、これでもか!っていうぐらい褒めてくれるんですよね。それで嬉しくて吠える選手とかもいて。
そこで、こっちがペナルティ取ったんだとか、1番わかりやすいんじゃないかな。その褒めてもらってる所と、『やってやったぞ』みたいな顔をしてる所もぜひ注目してほしいです。
福:スクラムのヒット(スクラムを組んだ時のレフリーの”セット”の声で一番最初に当たる所)でどっちが勝ったかというのを見て欲しいです。
勝って勢い付いてそのまま押せたり、ヒットで勝った方が大体ペナルティ貰えるのでそこを見たらわかりやすのではと思います。
ークボタスピアーズのスクラムの特徴は何かありますか。
才:フォワードはサイズが大きい選手が揃っているので、インパクトというか。もうとにかくパワーと重さで正々堂々真っすぐ押すようなスクラムなのかなって思ってます。
にじみ出るポジション愛、だけど本当は・・・
才:一番はやっぱり、どんな時でも気付いたら横にプロップやフッカーがいるみたいな。
もういっきゅー(加藤)なんて家まで近くに来て。僕の家の近くに住んでるんすけど、なんかすっごい寄ってくるんですよね。
加:才田さん!僕が入団する前にラブコール送ってくれたのは才田さんですよ。俺の街はいいぞって。すぐ近くに引っ越しました。
ー公私ともに仲良しですね。
加:最近では僕の家で一緒にラグビーを観る仲です。2人でプロテイン飲みながらね。
ーポジション愛がすごいですね、皆さん。
福田選手にお聞きしたいのですが才田選手と加藤選手は先輩としてどう思われますか。
福:すごい頼りがいがあってどちらも優しいです。
毎回スクラムで「どうでした?」って聞くとちゃんと答えてくれたり「今のよかったじゃん」とかも言ってくれるので。
ーそんなフロントロー愛がにじみ出ている皆さん、やっぱり生まれ変わってもフロントローになりたいですか?
才:バックスしたいですね、バックス!
加:僕も!やっぱりちやほやされたいんで。背番号は数字が大きければ大きいほど魅力を感じます。
才:ないものねだりだもんな、こういうのは。
けれどフロントローのなかでも花形はフッカーだと思っていて。
僕はフッカーとかやってみたいな。
福:僕もちやほやされたいんで。めっちゃかっこいいトライとかもしたいんでウイングとかやりたいです。
スピードで相手を抜き去って、華麗なステップで抜いて片手トライする。そういうのしてみたいですね。
練習中の仲の良さもフロントローの魅力 【【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】】
スクラム内はツイートの嵐!?
話しは変わってスクラムの中で互いにツイート(つぶやき)しあっていると聞いたことがあります。
これって本当ですか。
全員:本当ですよ。言われた事もあるしね、言いまくってますよ、お互い。
加:ツイートにも駆け引きがありますよね。
スクラムの組み直しになった時とか。僕は割と何も言わないタイプですが、相手からは結構強めなアンチコメントとか来ます。
全員:(笑)
ーそのアンチコメントにはリプライしますか?
加:いや、僕は通報します。横のレフリーに。
「レフリーすいません、あのー」って言って。そうするとまたアンチが返ってくるっていう、このループなんですけど。
才田さん結構言ったりします?
才:僕は相手には言わないですけど。レフリーの判定にうん?って思ってしまう時はどうしてもあります。言いたい気持ちをぐっとこらえるような。
そんなときは、ツイートをしながら、後ろに下がっていく感じですよね。
福:見たことある(笑)
才:基本的にレフリーに言っていいのはキャプテンだけなので。だから、フッカーに言うふりしてレフリーに伝えるみたいな。
福:僕は基本無視してるので、相手が言ってること。
気になることあればレフリーに聞いたりはしますけど。
才田さんのツイートのやり方は確かにうまいですね、その周りに言うつもりでってやつ。レフリーに聞かせるとか。
いい勉強になりました。
加:僕は争いをしたくないタイプなんで。相手が近くにいなくて、レフリーが僕の真横にいる時とかに、「すいません、(相手チームが)こうしてくるんで、ちょっと見てもらってもいいですか」って、すごい下手(したて)にお願いしますね。
反則とかしてきたのをスクラム内で言うと、言い合いになっちゃうんで。
才:どこかのSNSで見て面白いなと思ったのが、バックスが僕らフロントローはラグビーをやってるんじゃなくてスクラムっていうスポーツやっている、みたいな内容の投稿がありました。確かに、あながち間違ってないなと思います。
福:確かに間違ってない(笑)
加:一番驚いたのが、あれだけの最高峰の選手でスーパースターでも、前の試合のミーティングをしてる時に「あそこは俺が悪かったからごめんね、次は改善します」と正々堂々とミスを認めるところです。素直に言えるところがプレイヤーとしても凄いけど、人としてもとても尊敬します。
福:僕は同じポジションとしては、セットプレーの安定性がすごいなと思っています。
僕、スローイングがちょっと苦手なんでマルコムの映像を見て、たまに聞きに行ったりして学んでます。
運動量が凄いので、どこでもマルコムいるような、そういうところ尊敬しますね。
マルコム・マークス選手 【【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】】
インビューを終えて
それはラグビーの面白さでもあります。
大きな体をぶつけあい闘う、オフフィールドでは自己主張控えめなフロントロー。
そんな魅力にも注目して、一緒にフロントローをちやほやしませんか。
文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターKayoko
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ