【Pit Crewに聞く】「応援してくれた人に恩返しがしたい」人一倍チーム愛溢れる吉田運営担当

チーム・協会

【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

スピード、スキル、フィジカル、そして戦略と団結。
ラグビーという競技は、それらすべての要素が複雑に絡み合う。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの選手たちがピッチ上で表現するそうしたプレーに、私たちは手を握りしめ、胸を熱くし、思いを乗せる。
だが、プレーせずとも、グラウンドに入らずとも、選手と同じように戦っている存在がいる。チームの裏方として共に戦うスタッフの存在だ。
そうしたスタッフを今季チームでは”Pit Crew”と呼んでいる。そんなPit Crewにオレンジリポーターが取材をし、チームや仕事への思いを聞いていく連載記事【Pit Crewに聞く】
今回はチームの運営や試合の運営を行うフロントスタッフの吉田運営担当にオレンジリポーターのNorikoさんがインタビュー。

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オレンジアーミーのことを「家族」と呼び、誰にでも親しみやすく気さくに接する姿に、ファンの間でも人気の吉田さん。試合会場やイベントではいつも笑顔で迎えて下さいます。
ご存じの方も多いと思いますが、吉田さんご自身もスピアーズでプレーする選手でした。
そんな吉田さんに、現在の仕事内容やお仕事に対する思いなどを伺いました。
(取材日:2023年1月12日)

【吉田さんinfo】 選手としてのスピアーズ在籍は2011年〜2016年まで6シーズンプレー。最後の1年はフラン・ルディケHC体制でもプレーしています。 現役プレーヤーでは杉本選手と同期入団。現役時のポジションはスタンドオフとセンター。 現役引退後、社業に関わり2019年から再び主務としてスピアーズに入団し、今季から運営業務に携わっています。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

運営担当のお仕事とは?

―本日はよろしくお願いします!さっそくですが、運営担当のお仕事とはどのようなことをされているでしょうか?

一番はホストゲームの時の試合運営ですね。あとは、チケットやグッズの販売であったり、ファンクラブの運営、そしてホストエリアやパートナー企業との関わりであったりと、チームの強化や育成部門以外の運営を全般的に行っています。


―ホストゲームの運営ということでいうと、コンセプトなどはどのように決めているのでしょうか?

運営担当だけで決めているというわけではなくて、他の部門のスタッフや協力会社含めてみんなで決めています。それこそ企画の段階から、オレンジアーミー定例会議(チームスタッフとスピアーズのファンが行う月1回のミーティング)で出たアイデアや、前のシーズンの反省を踏まえて、ミーティングも数多くこなして、意見を出し合っています。

―運営担当のお仕事の中で一番難しいなと思うことはありますか?

基本的に全部難しいです。
けれどやっぱりホストゲームでいかにみなさんに試合会場に来てもらえるか、試合会場に来てもらった人たちにいかに満足して帰ってもらえるか、また、満足してもらった方々にまたもう一度えどりく(江戸川区陸上競技場)に来たいとどうやったら思ってもらえるか、というところを意識しています。
その中で、一番気を付けていることは「マンネリにならず毎回楽しんでもらうこと」。

例えば1月のえどりく3連戦では、毎回違うユニフォームだったりとか、新しいグッズを販売したりだとか、会場の装飾やフォトスポットエリアを含めて毎回変化を加えたりしています。


プレーヤーから主務、そして運営担当へ。気付きや思いとは?

―吉田さんは今シーズン主務から運営担当へ担当が変わり、対チーム、対選手のお仕事から対外的なお仕事になりました。その中で、気付きや発見などはありましたか?

難しい質問ですね。
対外的に接している中では、やっぱり「クボタスピアーズさんってすごくいいチームだよね」と言われることが多くて、直接そういった声を外の方から聞くっていうのは嬉しく思いました。
個人的には、ファンの方との繋がりというところでは、楽しくて仕方ないです!イベントを通してたくさんの意見を頂いているので、いつも参考にさせていただいています。


(広報担当:岩爪さんから)
吉田さんは主務時代からコミュケーション能力が高く、選手・スタッフだけでなく合宿で関わる地域やホテルの方々とも良い関係を築きながらマネジメントしました。関わった人たちが、チームのファンになる前に吉田さんのファンになるんです。そうした人柄だからこそ、運営担当としてもファンを増やせると思います。
そうしたコミュケーション能力は、現役時代のポジションが関係している?


そうですね。現役時代はセンターやスタンドオフとしてプレーしていたというのもあるかもしれません。基本的には人と話すのが好きなので、実際にイベントを通してファンの皆さんとコミュニケーション取れているのは非常に楽しいです。
(主務時代の合宿については)チームが来る前にまずは僕との関係性を築いて、それからチームが来る、そうするとなんかスムーズに入っていけるんですよね。合宿先の人との繋がりというのも非常に大事ですし、それはその時だけじゃなくて今後にも繋がってくるので、それは後任の松下(主務)にも継承しているところですね(笑)

―現役時代は1年間フラン・ルディケヘッドコーチ体制の下でプレーしています。チームとして、これからちょうど強くなるタイミングだったと思います。引退にあたって思ったことはありますか?

正直やり切ったという感覚はなかったので、悔しいというか、寂しい気持ちの方が強かったですね。ケガも多かったですし、現役最後の年は練習も全然できていなかったので、満足して引退したというわけではないです。
引退して最初の2年間は完全にチームを離れて、普通にサラリーマンをやりましたが、最初はすごく落ち込んでいました。応援してくれる家族やファン、会社の方々、そうした人たちにもっとプレーで恩返ししたかったという気持ちが強かったので、申し訳なかったなという気持ちが心の中にありました。そして、寂しいなという気持ちは常にありましたね。

主務を経験して

そして、2019年に2年ぶりにチームに戻ってきました。その時は主務としての入団でしたがどんな思いがありましたか?

最初、チームスタッフで主務をやってもらうって言われた時は、ドキッとしました。「自分で大丈夫か?」って不安な気持ちが大きかったです。
前任者が林さん(現・静岡ブルーレヴズチームマネジャー/広報)というプロスタッフの方だったので、自分で大丈夫なのかなとプレッシャーも不安もありました。

ただチームが日本一を目指し、前任者の林さんも日本一の主務だと僕は思っていたので、その後任の自分は「日本一の主務になりたい!」という思いを持つようになりました。チームマネージャーの前川さんを中心に多くの方に指導いただきながら、3年間主務を務めることができました。


―そんな主務時代のモチベーションになったものはなんでしょうか。

チームが好きだからですね。(即答)
それとやっぱり引退時の思いがあります。現役時代に返せなかった恩返しができるな、と。現役時代は試合に出る機会も少なくて、そんな時にたくさんの方々から励ましの言葉を貰いました。それがすごく力になっていて、チームのスタッフになった時には、別の形で、チームに対してもファンの方に対しても恩返ししたいなという気持ちで仕事に就いたというのは覚えています。
あとはチームの成績も上がっていったので、チームの成長をスタッフとして見ることができるのも嬉しかったです。

―そんな日本一の主務を目指していた吉田さんが今シーズンから運営担当になりましたが、戸惑いなどはありませんでしたか?

最初はありました。やっぱり現場サイドとチーム全体の運営とでは業務内容も変わってくるので。ただ、実際にやってみて、仕事で関わる江戸川区のみなさんやファンのみなさんとのコミュニケーション、クボタスピアーズっていいよねって言ってもらえる、その声が本当に嬉しいです。その声がモチベーションになっています。

―主務時代も今もモチベーションに変化はないですか?

業務内容は変わりますけど、チームが好きっていうのが一番なんで。
一人じゃ何もできない人間ですし、ほんとチームに助けられてきたので。このチームが好きですし、このチームのためにラグビーの仕事に携わっていられるというのが幸せです。

運営担当もやることはたくさんあります。試合運営も、ファンクラブも、グッズも、自治体との関係性もそうですし、本当にたくさん仕事があるなというふうに感じています。それもやっぱりチームのためだし、応援してくれるファンのみなさんに喜んでいただきたいという気持ちがすごく大きいです。実際に会場で喜んでいただける顔を見るとほんっとに嬉しいんですよね。

「あ!このグッズかわいい!」とか「これ欲しい!キャー!」とかっていう声がほんっとに嬉しいですよね。
(そう言っている吉田さんの顔が本当にすごく嬉しそう)


―そうした思いはやっぱり選手だったからこその気持ち、感想ですよね。チームに選手としていらっしゃったから、余計に思いも一入ですよね。チームへの愛を感じます。

あとは、選手時代に気付かなかったスタッフの大変さですね。ビブスの洗濯ひとつとってもそうですけど、合宿の手配だったり、ファンクラブ運営やチケット販売、パートナーや自治体や社内との関わりもうそうです。そういう今まで見えなかったところが見えているので、現役時代は気が付かなかった大変さっていうのを知れていますし、その時にスタッフだった方々にはやっぱり感謝しなくちゃいけないな、と感じました。

主務時代の吉田さん。別府での合宿中で、グラウンドで確認作業を行う 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

「最も興奮できる場所であり、最も落ち着く場所」それがえどりく!

―さて、そんな人一倍スピアーズへの愛が溢れる吉田さんですが、ずばり吉田さんの思うえどりくの良さはどのようなものでしょうか?

やっぱり親近感ですかね。実際にスタジアムに来てもらって、チームや選手の親近感を感じてほしいなあと思います。
また、一度だけじゃなくて二回目、三回目と行きたくなるような、アットホームさも良さの一つだと思います。マイホームじゃないですけれど、毎回行きたくなるような、みんなが落ち着く場所。なのに最も興奮できる場所でもある。


―えどりくに来てもらったお客さんには、どこを一番見てもらいたいですか?

全部です!ですが、まずは試合ですよね。プレーする選手たちの元気な姿を見て、勝利するチームの姿を見て喜んでいただきたい。
それがあった上で、試合以外のところです。飲食販売、グッズ販売、フォトスポット、スタンプラリーなど、そういう会場周りのところでも楽しんで帰ってもらいたいです。
満足して帰ってもらい、またもう一度来たくなる、そんな場所にしたいです。

―スピアーズの試合をえどりくに見に来て下さるビジターの方も、きっとえどりくにまた来たいと思ってもらえるんじゃないかなと個人的に思っています。

我々の試合のところでいうと、試合中の会場演出も両チーム平等にやっています。えどりくの試合は、両チームに対して平等なノーサイドの精神を大切にした試合運営もえどりくの魅力の一つだと思っています。

―最後の質問です。えどりくでは吉田さんに会えますか?

ホストゲームでは、マッチマネージャーといった競技運営に関わる業務なので、なかなか来場者とお会いすることは難しです。ただ、ちょいちょい顔は見せたいなと思っています。そこで、お見掛けしたら「おかえり」って挨拶しますよ(笑)

試合当日の吉田さん 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

インタビューを終えて

吉田さんは、本当にスピアーズというチームが大好きなんだな、と感じました。そして、チーム愛と共に、現役時代の苦労や悔しさが、「恩返し」という形でスタッフとしてのお仕事の原動力になっていることがわかりました。

また、ファンがスピアーズというチームを身近に感じたり、親近感を持ったりするのは、チームのみなさんの人間性に起因していると感じました。ホストゲーム運営で一体となったり、合宿先の担当者の方と仲良くなったりするなど、チームに関わる人たちみんなを惹きつける。そんな人間的魅力が自然とチームから溢れ出ているからこそ、ファンの心を掴んでいるのではないでしょうか。

吉田さんをはじめ、スピアーズのスタッフのみなさんの魅力がきっと感じられる「えどりく」。ホスト、ビジター関係なく楽しめる「最も興奮できて最も落ち着く」空間を、より多くの方に体感してほしいです。

文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターNoriko
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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