【ラグビー/NTTリーグワン】7連敗の試合後、世界的名手が「正直に言うとね…」と切り出した言葉とは<花園L vs 静岡BR>

【(C)JRLO 花園近鉄ライナーズ ウィル・ゲニア選手(左)】

今季勝利を目指した花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)は、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)に14対34で敗れ、開幕からの連敗をストップすることはできなかった。ホームの東大阪市花園ラグビー場での惨敗が続いていた花園Lだったが、前半を折り返した時点での失点は今季最少の10点。守備陣の踏ん張りに応え切れず、後半は4トライを許し、静岡BRに押し切られてしまった。それでも、チームの変わろうとする意志が見てとれた80分だった。

前半を終了した時点では7対10。後半に向けて、希望をつないでいた。今週の試合に向けて取り組んできたタックルなど気迫のこもった守備は、明らかにこれまでの試合と違っていた。

「ディフェンスはたくさん頑張りましたけど、やっぱりチャンスで取り切れない、それで(自陣に)戻される、戻される。そうなると反撃する体力が残っていなかったというところですね」と水間良武ヘッドコーチは悔しげに試合を振り返った。攻撃時のミスで流れをつかみ切れず、後半20分以降はガス切れに。対照的に強度の高い守備を保ち続けた静岡BRに、後半15分以降で3トライを許し突き放された。

トンネルを抜け出せず、開幕から7連敗――。しかし、試合後のミックスゾーンで取材対応を受ける世界的名手の目は、力を失っていなかった。

オーストラリア代表としてラグビーワールドカップに3度出場したウィル・ゲニアは、「いいディフェンスで取り返して、キックに敵陣で進んでも、そこのラインアウトでミスをして仕留め切れませんでした」と試合を振り返ったあと、昇格組でもある花園Lの課題をこう言い切った。
 「ディビジョン2で4シーズン戦ってきましたが、ぬるま湯に慣れてしまっています」

110の代表キャップを持つ名手の言葉は、決してチーム批判ではない。ウィル・ゲニアは同時に、こう目を輝かせた。

「To be honest(正直に言うとね)」と切り出したあとに言ったのは「僕はこういう状況を楽しめてしまう性格でもある。困難な状況をいかにして克服するかというチャレンジが好きなんです」。

かつて所属したスーパーラグビーのレッズ時代にも未勝利が続いたシーズンを含めて、低迷を3シーズン経験。そんなレッズをキャプテンとして初優勝に導いた経験をウィル・ゲニアは持っている。

日々の練習では常に最初にグラウンドに姿を表すプロ中のプロは、キッパリと言った。「こういう状況はいつか変わります。ただ、最終的には個人が変わっていけるかどうか」。

穏やかに言葉を紡ぎ続けた賢人は、記者全員に自らグータッチを求めミックスゾーンをあとにした。

どん底から這い上がった経験を持つウィル・ゲニアとともに、花園Lは何度でも立ち上がる。

(下薗昌記)

【(C)JRLO】

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「チャンスのところで取り切れず、ラインアウトでミスが出てペナルティ、それから相手のラインアウトモールで取られて……。ディフェンスはたくさん頑張りましたけど、やっぱりチャンスで取り切れない、それで戻される、戻される。そうなると反撃する体力が残っていなかったというところですね。小さいことを積み重ねてやっていくしかないので、日々努力してやっていきます」

──前半は自陣でのプレーが長かったですが、その中でもよくあの点差で折り返せたという印象を受けました。ディフェンスの手ごたえと、今週取り組んできた修正点を聞かせてください。

「早くセットアップをすること。それから真っ直ぐ上がること。そして二人でしっかりとタックルに行くという毎週やってきたことがようやく出始めたというところですね」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「本当にヘッドコーチと同じです。アタックに関しては、自分たちのシンプルなキャリーを出していこうと試合途中でも試合前でも言ったんですけど、ちょっと不用意なオフロードパスや、ラインアウトのところでのスキルミスがありました。結局自分たちのアタックタイムが少なく、ディフェンスの時間が多くなり過ぎました。それが一つのトライを取れなかった要因なのかなと思います。
ただ、ディフェンスに関しては毎週、ベターになっているので、いいところにも悪いところにも目を向けて、次の試合ではまたもう一段階上の自分たちを見せられるように、来週とその次の週を過ごしていきたいと思います。本日はありがとうございました」

──前半は自陣でのプレーが長かったですが、その中でもよくあの点差で折り返せたという印象を受けました。ディフェンスの手ごたえと、今週取り組んできた修正点を聞かせてください。

「ほとんどヘッドコーチと同じですが、ただ、ヘッドコーチが言っていることを僕たちが体現するまでに時間がかかっています。それは個人の意識に寄与するところがすごく大きくて、そういった部分もコーチ陣も厳しくコーチングしてくれていますし、今週で言うとメルボルン・レベルズからディフェンスコーチも来ていただいて、違う角度からコーチングを受けたことで違った方向から意識することができました。
ただ、これが最低限のラインだと思っています。意識しないといけないところを意識できていないところもあるのでしっかりと修正して、次はディフェンスからアタックで取り切るところも出したいと思います」

【(C)JRLO】

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

「まずわれわれとしては、最低の目標をクリアできたことが次への成長につながると思います。つまり、それは勝点5を取れたことです。今日は花園近鉄ライナーズさんが少しゲームプランを変えてきて、キックを結構多めに使ってきた前半だったと思います。われわれがスコアできるチャンスはいくつかありましたけど、しっかりその前半を耐えました。後半は、自分たちの持っている力を出し切ってくれたんじゃないかと思います。
今日はペナルティも前回よりかなり減らすこともできました。チームとして成長している部分はそういった部分ですが、まだまだこれから、どうやってスコアにつなげるかについては本当に大きな伸びシロがあると思っています。2週間ありますけど、そういった課題をコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けて取り組んで、最高の準備をしていきたいと思います」

──2トライを挙げた小林広人選手について。

「ヴィリアミ・タヒトゥア選手の隣にいつも彼がいて、基本的にボールキャリーを担う責任をヴィリ(ヴィリアミ)が担うんですけど、前半はその裏のプレーもしました。われわれは表と裏を使ってアタックのシェイプを組んでいるので、それからもう一つのパスオプションというところをしっかりと使ってくれました。
全員で作り出すのがトライなので、小林選手がどうこうではなくしっかりとオプションの一つとして役割を果たしてくれたという意味では非常にいいプレーだったと思います」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス 共同キャプテン

「最初の出足のところで、少し時間がかかったんですけど、しっかりと最初のチャンスをものにして、前半のうちは皆が我慢をしてよくやっていたと思います。ジャパンラグビー リーグワンの試合の中の傾向で、ハーフタイムまですごく僅差になる流れが多いですが、その傾向の一つの試合だったかなと思います。
後半に関しては、しっかりと流れを取り戻して勝利することができました。そして、今日の勝利が次のコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けていい勢いになっていくと感じていますし、一緒に戦った選手についても誇らしく思います」

──今日はモールで相手にプレッシャーを掛けていました。相手のペナルティをスコアに結びつけることもあったと思いますが、その収穫をどう考えていますか。

「私たちのチームにとっては、セットピースは本当にプライドがあります。そこでしっかりと相手にプレッシャーを掛け続けていくこと。それによってペナルティやアドバンテージを取っていく。そこからゲームを進めていくということが今日はできたと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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