ファンタジスタ・岸岡智樹が挑む格差

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【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

2022年初冬に、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、スピアーズ)の岸岡智樹選手からオレンジリポーターへ、取材依頼が舞い込んだ。

オンフィールドでは、歪な球体を自在に操る精確なスキルと豊富なラグビー知識に裏付けられたプレーでスタンドを沸かせ、フィールド外では幅広い活動を精力的に行って、シーズンを問わずファンやマスメディアの耳目を集める。
2022年のオフシーズンには、前年に続いて『岸岡智樹のラグビー教室』を日本各地で主催、好評を博した。

その語り口も相まって『先生』の敬称で愛されることが多いスタンドオフの頭脳に20の質問で迫った。

(取材日:2022年12月1日)

岸岡智樹(きしおか ともき)/1997年9月22日生まれ(25歳)/大阪府出身/身長174cm体重83kg/東海大学付属仰星高等学校⇒早稲田大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2020年入団)/ポジションはスタンドオフ/愛称は「Kishi」 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

2年目のラグビー教室

1. オレンジリポーターに取材依頼した理由は?
記者の方とは、見ているもの、見えているもの、そこに寄せる感情の大きさ、重さ、広さが違うと思うからです。
もちろん、個人間の差もあるとは思いますが。
僕は自分の活動を色んな角度から広げたいと思っているので、オレンジリポーターにも記事を書いてほしくて依頼しました。

2. ラグビー教室の開催地は希望通りに決定できましたか?
ほとんどは希望通りでしたね。

3. 『地域格差』、『是正』のいずれも多様な要素を含みますが、活動する中で目標に変化はありましたか?
2年間は『実地調査』と割り切って、実際に歩いて、肌で感じ、目で見ることを大切にしました。
『地域格差の是正』というテーマを掲げて様々な方と話しましたが、決まって返ってきたのは「その目的の達成度を評価する指標は?」という問いかけでした。この、数値化、見える化しにくい課題に対して、ちょっとずつ実状が分かり出してきたというのが、2年目を終えた気持ちですね。
―――人口数などで単純に言い切れないところがあるのですね。
調べてすぐに分かる数値が格差と直結しているわけではないんですよね。
数字だけでは見えない部分を感じられた発見はあったのかなと。

4. それぞれのサポートメンバーにはどんな魅力を求めましたか?
一番は、自分の持っていない価値を(ラグビー教室に)もたらしてくれる人という軸です。
もちろん、全ての人に僕が出せない個性があるのですが、開催地に所縁(ゆかり)があったり、子ども向けのコンテンツに興味があったり、子どもや教えることが好きだったり、指導者としての将来像を持っていたり、という面を加味して依頼しました。
(サポートメンバーは)多様性に富んでいたので、運営スタッフは大変だったかもしれませんね。
でも、子どもたちにとっては、「岸岡が来ると思っていたらゲストコーチも来てくれた」という新鮮さや、岸岡とは違う刺激をもらえたということが、良いアクセントになったと思います。

スピアーズの合宿地でもある大分での開催には、2022年に引退した高橋拓朗さん(写真左)、九州出身の大熊克哉選手(写真右)をサポートメンバーに招いた。 【岸岡智樹のラグビー教室】

ラグビー教室の理想形

5. 1コマ2時間という時間設定はいかがでしたか?
子どもの集中力と参加者間の競技レベルの差も考慮して、参加した子どもたち自身にも、見学している保護者の方にも、変化を感じてもらえるように2時間に設定しました。
30分短くても、30分長くても、伸び代に差が出て、全員に等しくアプローチをするのは難しくなってしまうので、1コマとしてはちょうどよい時間だったと思います。
―――ラグビー教室で完成を目指すのではなく、完成の糸口を見つけて、持ち帰って日常の練習の中で完成させるイメージでしょうか?
そうですね。言葉にはしていなかったのですが、頭の中には「きっかけ作り」ということがしっかりありました。
ラグビーを好きになるきっかけ。上手くなるきっかけ。大切なことを見つけるきっかけ。
何個も何個も提示して、2時間で何か一つ学んでもらえたら、と意識していました。
「自分のためになった」と思えることを2時間で1個見つけられる体験って、生きていてそうそうないと思うんです。でも、参加してくれた子どもたちには、2時間で1個、多い子なら3-5個、「できるようになった」という達成感のきっかけを持ち帰ってもらえたと思います。
一方では、2時間では伝えきれないこともあるので、今回は合宿を作りました。

6. ラグビー教室の中では、プレッシャーをどのようにマネジメントしましたか?
のびのびとやってほしかったので、そんなに意識はしていませんでした。普段教わっている環境が違いますし、ラグビー思想も、知識も、体つきも、能力も違うので、全員に等しいプレッシャーをかけるのは難しくて。全員に同じことを伝える中で、コーチ間では個別にどんどん声をかけて目標を求めていくことを意識していました。
苦手な子には引き上げていくためのアドバイスをする一方で、上手な子がラグビー教室のレベルに満足していなさそうな顔をしているときには「もうちょっとできるんじゃない?」と声をかけて個別の寄り添いの中で適切にプレッシャーを与えるようにしました。
選手によってはプレッシャーを感じる2時間だったかもしれませんね。

7. ご自身は練習の中でプレッシャーを意識していますか?
プレッシャーは苦手ではないのですが、好きじゃないので、そんなに気にしていないですね。
もちろん、試合形式の練習では互いにプレッシャーをかける風土はありますが、プレッシャーを回避する技のようなものをどんどん身に着けていっているのか、正面から捉えたことがないかもしれません。
必要だとは思いますが、自分自身にプレッシャーをかけたことはないですね。

8. 過去の試合で最もプレッシャーを感じたのはどんな場面ですか?
分かりやすいのは、逆転をかけたトライ後のゴールキックの場面ですよね。僕はまだそういう経験をしたことがないんです。まだ、まだ。
個人の責任ということはないとは思いますが、自分自身の結果で勝敗が変わるというプレッシャーを感じたことがないので、挙げるのは難しいですね。
一番圧迫感があった場面は、大学ラグビーの早明戦です。圧倒的に明治ファンの方が多いので、その声援の大きさから凄いプレッシャーを感じた思い出はあります。あまり勝っていないので苦い思い出ですけどね。

大分合宿では自らのルーツとなった母校やチームにまつわるジャージーでトレーニングをする『OLD JERSEY DAY』が催され、大学ラグビーで注目を集めた早稲田の赤黒を身に着け、当時からのファンを喜ばせた。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

『FUN』を追求した先に

9. ラグビー教室で目指したのは『WIN』と『FUN』のどちらですか?
今年に関しては、100%以上『FUN』ですね。
昨年と今年のやりたいことは95%くらい変えていないのですが、アプローチ方法だけ変えたんです。
昨年は「上手くなってほしい」と思いました。僕自身の経験として上手くなったことが楽しかったからです。僕の周りにいるリーグワンの選手のほとんどが、それぞれの世代のラグビー人口の上位数%にいた人間で、上達したことに楽しさを覚える経験をしてきたと思うんです。でも、このラグビー教室の参加者の中には、そうじゃないところにラグビーの楽しさを見出している子どもたちも多いと思ったんですよね。それに気が付いたときに、教えて上手くなってほしいというのは教える側のエゴで、時として子どもたちの将来を奪っている可能性があるんじゃないかなという気がしてきたんです。
もしかしたら「岸岡と話せて楽しい」と思ってくれるかもしれませんし、新しいグラウンドに来たこと、一緒にボールを持って走ること、色んな人から声をかけてもらったこと、どんなことに楽しさを感じるのかは人それぞれで分からないですよね。
楽しさに焦点を切り替えたときに、子どもの表情が本当に変わったんです。それが昨年と今年の圧倒的な違いです。やっていることは同じで、昨年は上手くなってほしいと思ったところから、今年は楽しんでほしいというところへアプローチを変えただけで、昨年よりも今年の方が上手くなった子が増えました。
勝利至上主義的な観点からはレベルアップに繋がっていない可能性はありますが、ジュニア世代の子どもたちが今後もラグビーを続けるか続けないかという点では、『FUN』へ寄せて、すごく良い舵を切れたんじゃないかと感じています。

10. 岸岡選手の中で最も「楽しい」と感じたのはいつですか?
いつかなぁ。まだ中学生の頃じゃないですかね。
多分、一番没頭していたと思うんです。何も考えずに。良くないんですよ、良くないんですけど。良くないんですけど、そんなに深く考えることもなく、楽しいからラグビーをする。自分ができる、できないじゃなくて、「ラグビーをしているのが楽しいからラグビーをしているんだ」という思いが一番強かった時期だと思います。
そういう楽しさはどんどん無くなって、楽しさのジャンルが変わってきています。掲げるものが大きくなって、達成するために犠牲にしなきゃいけないものも大きくなって、その分だけ大きな楽しさが得られるという。そういう意味では100%楽しいとはならないのは致し方ない部分ですよね。
『楽しさ』といっても、比較できない、変わるものだなと思います。

11. 岸岡選手は被タックル数が少ない印象ですが、スキルとして身に着けたものですか?
僕、痛いの嫌いなので。好きな人はいないと思うんですけど。
今もですが、もともと身体が大きくないので、中学生の頃から自分がボールを持って走るというより周りの良い選手に指示を出す役割をさせていただくようになりました。10番になって、先回りしてキックを蹴ったりパスをしたりして、周りを活かすことに専念しました。ジュニア世代から活躍できる選手は走ったりタックルしたりが評価軸になりがちですが、僕はその逆で、そういう選手を活かして自分は陰になることに徹してきました。指示する自分がタックルされて倒れて捕まったら終わりだ、そんなことはあってはならない、と思って。中学生の頃なら前後半20分ずつの40分間のシナリオが崩れないように、という意識は、結構早い段階から潜在的に感じていましたね。
ですから、僕が走るのは、周りを活かし切って、最後の最後に自分の前が空く瞬間。触られないくらいで絶対に抜ける自信がないと走れませんね。逆に、最初に走るプレーを相手に見せることで囮(おとり)になる展開はあるとは思いますが。
―――走力そのものに加えて、相手のプレーを読む能力も「岸岡選手は足が速い」という印象を強くしているように感じます。
もともと走るのは好きで、ラグビーを始めたときは「足が速いから」という理由でウイングでした。今は(ポジション的に)内側にいるので走る機会はあまりありませんが、だからこそピュッと走ると抜けるのかもしれませんね。
足の速さを警戒されるよりは「ボールを取られて走られたら、実は速かった」くらいが僕としても一番嬉しいです。

走力も岸岡選手の武器の一つ。何手も先を読み、ランコースを作る。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

インプレーキックの名手、プレースキッカーに挑む

12. プレシーズンマッチでプレースキッカーを担ってみて、いかがでしたか?
プレースキックは、極論、入れられる選手、得意な選手、自信がある選手が蹴ればいいと思っています。入らないかもしれないし、自信もないし、苦手意識を持っている、という選手は、あんまり蹴らない方が良いじゃないですか。
でも、ポジション的には、10番が蹴った方が良いんです。試合を組み立てていく中で、試合の流れを左右する決定権をキャプテン以上に持つことがあるのがスタンドオフ。ペナルティをもらった場所が得点を取れる場所なのか。「3点取れるよ」とチームに言ってショットを選べたら、めちゃめちゃ楽じゃないですか。
プレースキックはラグビーの中で唯一と言えるほど個人の能力に頼る部分が大きいプレーだと思います。『アイスマン』の異名を持つバーナード・フォーリーのように、世界で注目される存在になれる、10番の評価軸として大きいものです。スクラムハーフが蹴るチームも増えてきましたが、10番として苦手意識を持っていてはいけないと思ってきました。
今季は練習や練習試合からチャレンジをしています。
―――冷静に自己分析できて、視野が広くてチームの全体像やそれぞれの役割が見える、そういう選手がこれまでやらなかったプレーに取り組むという変化に驚きました。
練習できる時間は限られているので、必要性の高いことを選択しています。優先順位を考えたときに、自分の中で徐々に徐々に(プレースキックの優先度が)高まってきたということでしょうね。

13. REDS XVとの対戦はいかがでしたか?
セカンドハーフで逆転されて負けちゃいましたが、勝てる試合だったと思いました。
試合に勝って嬉しい、負けて悔しい、という差は、僕はあまりないんですよね。それぞれの試合は、勝っても負けても優勝のための通過点。小っちゃい頃からめちゃめちゃ負けず嫌いですが、優勝や自分の評価に直接関わる勝敗ではなければ、勝って嬉しいとは思いますが、負けてもあまり落差はありませんね。それよりは、プレーに対して良かった悪かったと評価される方が響きますね。
僕は高校・大学ともに自分の代で日本一を獲って、『終わり良ければ総て良し』を二度も知ってしまいました。すごくありがたいことなんですけれど、「1試合負けても最後に勝てば良い」という経験をしたので、試合の結果に一喜一憂するよりプレーに焦点を当てた方が良いと考えるようになりました。
「1試合1試合しっかり勝ちを刻んでいこう」という考えはありますが、「1試合1試合喜ぼう」ということではないと思っています。

14. 岸岡選手にとって『仲間』とは?
難しいですねぇ…。
気が付いたら一緒にいるというのが割と一番定義しやすい『仲間』だとは思っていて。
(リーグワンのチームは)元々仲が良かった人たちが集まって作ったチームではなく、そこに集まってきた人間の集合体ですよね。そこから、チームの理念を理解して、ここでラグビーをやりたいという方向性を共にして、パーソナリティも含めて分かり合って、すごいファミリー感があるのがスピアーズ。
仲間意識の強いチームだと思います。

15. 『岸岡教室』の『仲間』はどんな集まりですか?
自分が呼び集めた仲間なので、スピアーズとは違いますよね。
僕が気心の知れた仲間を集めているだけで、僕以外の人たちは知らない人同士だったりするので、簡単には表現できないですね。
ただ、僕の居心地が良いだけの場にはしないように気をつけています。
全員が方向性を揃えることはすごく大事なんですけど、違う意見が飛び交って議論が起こるような設計でないと、発展は望めないと思うんです。既存の頭の中で動き続けても、良いアイディアや斬新な意見は出てきませんし、今の時代にも合っていないと思うんです。
スタッフ同士の仲間意識は強くて、愛情を持って接してくださるんですが、リスペクトを持ちながらもズバズバと言える人が集まっていると思いますね。
―――岸岡選手の意見を肯定するばかりではないということでしょうか?
僕が「これが良いと思います」と発言したときに、反対意見が出ることもありますよ。僕は「もっと良いアイディアがあるんだよね?」という感じでちょっと突っかかっちゃうんですけど(笑)。出していただいた意見の方が良い場合にはしっかりと取り入れるということを意図的に行っています。
―――良い化学反応が起こっているんですね。
ああ、もう、そうですね。めちゃめちゃ起こっていると思います。

16. 岸岡選手にはスピアーズはどう見えていますか?
非常に難しいですねぇ。ありきたりで申し訳ありませんが、『アットホーム』かな。
『来るもの拒まず』なチームだと思います。ファンに対してもそうですし、外国人選手が入団しても馴染むのが早いし契約延長する選手も多いですよね。日本人選手とのコネクションも含めて、どうやったら僕らのファミリー感を出せるのかは言葉では説明できないと思います。そういう文化を自分たちの居心地の良さだけではなく、ファンの方にも感じてもらえるのって、結構すごいですよね。ファンの方に見せられているのは僕らの1割程度に過ぎないと思うんです。それでも同じように『ファミリー感』を感じてもらえるなんて、相当おかしなことがない限り、ありえませんよね。そこのすごさを感じます。
まぁ、でも、チームの公式アカウントの「誕生日です」という投稿を、みんなが(Twitterの)リツイートや(Instagramの)ストーリーで反応するチームって、スピアーズくらいですよね。どのチームもグラウンドやクラブハウスではお祝いすると思いますが、さらにSNSでもお祝いするって、ちょっと意味が分からないですよね(笑)。(スピアーズの)みんなやりますからね。すごいですよね。

リーグワンでも何度も得点チャンスを演出したインプレー中のキックは、岸岡選手のスキルの高さを象徴するプレーの1つ。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

教えることから得られること

17. 教えることを通じて教わったことはありますか?
ラグビー教室の一番の目的はラグビーを続けてもらうことでした。昨年は「上手くなれば続ける可能性が高くなる」と思って『WIN』の方へ近づけ、今年は『FUN』を重視しました。これは肌感覚なので数字には出せないのですが、今年参加した選手の方が続けてくれる気がしています。
一番近道に見えるものが目的に対する最適なアプローチ法ではない可能性もあるんですよね。多分、いろんな場面で、『急がば回れ』ではありませんが、全然違うアプローチ法が糸口になることもあるんじゃないかということを学びとして得られました。
直接的に子どもから教わったことは、教えることの難しさですね。
ラグビー教室に参加してくれた子どもたちは一様ではなくて、室内でもわいわい遊ぶような子もいれば、端っこで静かにしてる子もいる。学校の教室を広く、グラウンドバージョンにしたみたいな感じなんです。地域ごとに県民性のような違いもありました。そういう様々な個性のある子どもたちが何かを教わり学びに来ていることに対するアプローチとして、同じ意味でも、言葉の表現や話し方といった伝え方で、伝わる、伝わらない、が変わってくるんですよね。
人にものを伝える、教えるという難しさを改めて感じましたし、良い学びになりました。

18. それぞれの『正しさ』があるという価値観に変化したことは、小さな一歩ですか?大きな一歩ですか?
めちゃめちゃ小っちゃいですよ。階段を一段昇るために靴ひもを結びました、くらい。まだ一歩も出していないくらいです。
『実地調査』というワードを挙げましたが、本当に「下調べをしてきました」、「ちょっと予習してきました」くらいの感覚ですね。

19. ラグビー教室の開催は大変でしたか?
今年は、昨年作った土台に、自分のやりたいことや楽しそうなことを肉付けしていくフェーズだったので、『0から1』だった昨年の方が大変でしたね。とはいえ、全く分からない分野を攻めている大変さはありましたが。
時間的な制約などはありますが、「楽しいことをやっているんだから時間があっという間に過ぎるのは仕方ないかな」という感じですね。

20. ラグビー教室の開催へと岸岡選手を突き動かしたものは何ですか?
僕に明確なリターンがあるからです。
子どもに対してアプローチすることで自分の承認欲求みたいなものが満たされるという部分も確かにあるとは思いますが、パフォーマンスを頑張らなくてはいけないという根本的な部分に帰結しています。
子どもたちに教えることがブーメランのように返ってくるので、この活動が自分のケツを引っ叩くような、モチベーションになっています。
あとは、セカンドキャリアを考える側面もある活動なので、出来ることが増えていくと、将来の不安がどんどん解消されています。
自分の中では色んな分野で明確なリターンがあるんです。それが本当に小っちゃくですが、徐々に見えてきたところです。

リーグワン屈指のパスの名手から、技術だけではなく状況判断やプレー選択などパスに必要な多くのスキルを学べるラグビー教室は、毎年好評を博している。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

ラグビー選手「岸岡智樹」を語る上で、その旺盛な発信活動は避けて通れない。
「その原動力は『承認欲求』などといった生温いものであるはずがない」というのが、取材前の予想だった。

取材中、おそらくご本人も無自覚に滲み出ていたのは、ラグビーへの渇望。
「先生」なんかじゃない。きっと彼は永遠にラグビーへの愛情を燃やす「少年」なのだろう。

『常時知悉(ちしつ)』を体現する岸岡智樹は、岸岡智樹にしか出来ない方法で、ラグビー界に名を刻む。
身体中に、ラグビーでしか高めることのできない熱を循環させて。


文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターHaru
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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