AJCCの注目点は4歳馬と母父ディープインパクト

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【2022/11/5 東京10R ノベンバーステークス 1着 4番 エピファニー (Photo by JRA)】

今週は日曜日に中山競馬場でアメリカジョッキークラブカップ(AJCC)が行われる。いつものように過去10年のデータを分析してもいいのだが、今回は切り口を変えてみたい。2023年になって行われた重賞の結果を受け、レースの傾向・予想の参考になるようなポイントがあるかを考えてみた。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

2023年に中京で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)

■表1 【2023年に中京で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)】

中山競馬場の話をする前に中京競馬場の平地重賞の結果(表1参照)をおさらいしておきたい。2023年になって京都金杯、シンザン記念、愛知杯、日経新春杯と4つのレースが行われた。まず気づくポイントは4歳馬がよく活躍していること。京都金杯はプレサージュリフトが3着、愛知杯はアートハウスが1着、日経新春杯はプラダリアが3着と、3歳限定戦のシンザン記念を除いたすべてのレースで4歳馬が馬券になっている。22年は秋以降の重賞で3歳馬の活躍が目立っていたので、こうした明け4歳馬の強さも十分納得がいく。

そして先週行われた2つの重賞は、人気薄の先行馬が2着に残ったのが印象的だった。愛知杯は7番人気のアイコンテーラー、日経新春杯は10番人気のキングオブドラゴンがともに2番手追走から粘り込んだ。アイコンテーラーは前走中日新聞杯でも3着に食い込んでいたので、むしろ不当に軽視されている印象だったが、キングオブドラゴンは前走アルゼンチン共和国杯18着からの大きな変わり身で、驚きもあった。愛知杯は重馬場、日経新春杯は稍重と馬場が渋ったなかでレースが行われたというのも大きく、鋭い末脚を武器にしている馬にとっては不利だったかもしれない。

2023年に中山で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)

■表2 【2023年に中山で行われた平地重賞の上位馬(1/15まで)】

続いて中山競馬場の平地重賞結果(表2参照)を見ていく。こちらのレース数はまだ3つで、その内4歳以上のレースは中山金杯だけ。そんな中でも1着ラーグルフ、3着フェーングロッテンと、しっかり4歳馬が期待に応えて好走を果たしている。2着に入ったクリノプレミアムは6歳牝馬だが、22年中山牝馬S1着・京成杯オータムハンデ3着と中山芝重賞で好走実績があった。

3歳限定戦のフェアリーSと京成杯は、ともに馬券的には大荒れになった。フェアリーSはメンバー中3頭しかいなかった2勝馬のうちキタウイングとメイクアスナッチによるワン・ツー決着ながら馬連配当が2万1140円。京成杯は9頭立てのなかでダントツ人気がなかったオメガリッチマンが2着に入り、馬連は1万9570円もついた。

フェアリーSと京成杯は好走馬の母父にも特徴があった。フェアリーSは出走馬16頭中2頭いた母父ディープインパクトのメイクアスナッチとスピードオブライトがともに好走。京成杯で2着と激走したオメガリッチマンは、メンバー中唯一、母父がディープインパクトだった。また、京成杯1着ソールオリエンスと3着セブンマジシャンは、母父がともにサドラーズウェルズの系統馬だった。今週のAJCCは4歳以上のレースだが、中山芝重賞なのでこうした点にも注目して考えてみたい。

今年のアメリカジョッキークラブC出走予定馬

■表3 【今年のアメリカジョッキークラブC出走予定馬】

表3は今年のAJCCの出走予定馬。まず母父にディープインパクトを持つ馬はアリストテレス、エヒト、エピファニーと3頭いる。アリストテレスは21年のAJCCの勝ち馬でもあり実績上位だが、22年は3戦して未勝利に終わった。なかなか間隔を詰めてレースを使えなかったことを考えると、有馬記念以来となる今回は少し前向きに捉えたいところだが、どこまで良化できるかが鍵になりそう。エヒトは22年のAJCCが9着、京都記念が7着なのでG2で通用するかが課題と言えそうだ。

エピファニーは4連勝中の4歳牡馬。重賞未経験の上がり馬の身でリステッド競走やG3ではなく、いきなりG2に挑戦とは強気なレース選択だ。それだけ陣営の期待が大きいと言えるだろう。そして、同じ4歳馬のガイアフォースにも注目。

2022年セントライト記念出走馬の次走レース成績

■表4 【2022年セントライト記念出走馬の次走レース成績】

表4は22年のセントライト記念出走馬の次走成績。同レースはガイアフォースとの競り合いの末、アタマ差の2着に終わったアスクビクターモアだったが、次走菊花賞を2番人気で勝利している。ローシャムパークは先日(1/5)行われた2勝クラスのレースを、格の違いを見せつける走りで完勝。そしてラーグルフは3勝クラスの甲斐路S→中山金杯と連勝を果たして重賞初制覇を飾った。同年のセントライト記念のレベルはとても高く、上位にきた馬は地力が高い。ガイアフォースは菊花賞こそ1番人気で8着と敗れたが、距離が長すぎたのが敗因だろう。2200mに戻る今回は本領発揮を期待してよさそうだ。

最後に母父Sholokhov(サドラーズウェルズ系)のブラックマジックを穴で取り上げておきたい。

文:小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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