■特別対談 異色のコラボレーション。ふろん太が深海生物に食べられた!?(後編)
【© Shinki Takazawa】
ついに深海へ!ふろん太型かまぼこはどうなった…?
持っていく前のとの比較。こんなにも食べられているんです。相当美味しかったんでしょうね。 【© Shinki Takazawa】
豊福「これがね、結構グロい感じで帰ってきたんですよ(笑)。たくさん食べられているので、美味しかったんだと思います。貝とエビが多かったですね。でも夜は見ることができていないので、誰が来ていたかは分からないんですよ。ちなみに鈴木さんは、このかまぼこを食べてみたんですか?」
鈴木「食べていないです(笑)」
若松「匂いを相当付けてましたよね」
鈴木「グチエキスというグチの身だけでなく頭や骨等を高温でこしたりした濃縮エキスを練り込んで良い香りがしました。それを確認しただけで食べてないです(笑)」
豊福「そうなんですね(笑)。質問に対しての答えで言えば、プロジェクトは大成功でした。結構、物を置いて持って帰ってくるのは思ったより簡単ではないんです。それを回収して帰ってくることができて良かったです。やっぱり海なので確実はありません。当然、もとに戻れるように印を付けたり工夫はしていますが、水面に上がってくる最中に失くしてしまうということもあります。その中でちゃんと持ち帰ることができたので良かったですね」
フロンターレのロゴ入りかまぼこの比較。深海に持っていった方(右)はほとんど残っていません。 【© Shinki Takazawa】
「ふろん太のぬいぐるみが、深海に行ったという認識でいいの?」(豊福)
潜航服を身にまとったふろん太が水深6500mに到着。無事に帰還もしました! 【©JAMSTEC】
豊福「これはメタな話しなんだけど、あれはふろん太のぬいぐるみが深海に行ったという認識でいいの?(笑)。ここの中では世界観を統一したい(笑)」
若松「ふろん太の…うーん…(笑)。なんですかね…。ぬいぐるみになったふろん太…?」
豊福「それはちょいちょい匂わせながら、ふろん太だったというふうにした方が面白いんじゃない?」
若松「じゃあ、ふろん太が行ったということで(笑)」
豊福「これはね、我々の中でも揺れている問題なんですよ(笑)」
「かまぼこは魚ちゃんに食べてほしかった(笑)」(鈴木)
『しんかい6500』 1/1模型の船内。ここに3名が乗船して、深海に調査へ向かいます。 【© Shinki Takazawa】
若松「実は乗船できるのは3名までなんです。コックピットがキュッとなっているので、パイロットの皆さんに託して、出港を見送りました」
豊福「色々と振り返ると、あの時期は寒かったけど、本当に楽しかったよね(笑)。それまでの準備の時間が怒涛だった。船は必ずその日になったら出港をするから間に合わせないといけない。だからみんなの足並みがよく揃ったなと思います。なにより鈴廣さんが頑張ったよね」
鈴木「そうですね。でも、かまぼこは魚ちゃんに食べてほしかった(笑)。食べてくれた貝やエビも大切な生き物ですが、もうちょっと華やかな生き物に食べてほしかったですね(笑)」
豊福「深海の壁は厚いね(笑)」
鈴木「もし、深海魚が食べてくれたら、その子の為にその子でかまぼこを作ってみたいと思ってました」
豊福「なるほどね」
若松「エイも吐き出してましたよね(笑)」
鈴木「吐き出してましたね(笑)」
豊福「ちなみに、ブダイとかエイでもかまぼこは作れるんですか?」
鈴木「作ろうと思えば作れます。青魚は旨味が強いのですが、弾力が出にくい魚でもあります。そういう時は薩摩揚げにしますね。食感が出るスズキとか白身っぽい魚は、しっかりと蒸したり焼いたりするとプリプリっとした食感になります。魚種によって適したかまぼこがあるんです」
「このプロジェクトは本当に実力を試された感じはします」(豊福)
ふろん太型のかまぼこを見ながら、当時のことを振り返っていただいたお三方。とても楽しそうです。 【© Shinki Takazawa】
豊福「我々としてはサイエンスの学術研究というよりは、サッカーチームとコラボして何をどうするかは完全に手探りでした。このプロジェクトは本当に実力を試された感じがしますよね。試験されている感じですよ。なかなかな難問を与えられて、それをどう解いていくのかと」
――それと同時に色んな発想も生まれてくると。
豊福「そうですね。難問だったので、こうやって巻き込まれていく人が多くいるわけですよ(笑)」
若松「すみません(笑)」
豊福「鈴木さんをはじめ、慶應義塾大学もそうだし、新江ノ島水族館もそうだし、他にもチケットを担当している方もそうだと思う。正直、巻き込まれた人たちは、何を言われているか分からないですよ(笑)。なんで、かまぼこがチケットになるのかとか(笑)。だから、JAMSTECとしてはどういうふうにして、他業種とのコラボするのか、深海という場所を使ってどんなことができるかという良い機会になったと思います」
「フロンターレが凄いのはサポーターの懐が広くて深いところ」(豊福)
海洋研究開発機構JAMSTECの正門で1枚 【© Shinki Takazawa】
豊福「実はJAMSTEC自体は社会にまぁまぁ露出しているんですよ。福徳岡ノ場の軽石のニュースもそうだし、地震とか気候変動とかね。あとは、JAMSTECの名前と仕事が浸透していったら嬉しいですよね。そういう意味ではフロンターレのサポーターは否が応でも知ってくれたと思います。やっぱりフロンターレが凄いのはサポーターの懐が広くて深いということ。新体制発表会の時に『深海に行きます!』って言っても驚かない(笑)。『おー、次は深海かー』みたいな(笑)。『え、深海!? なんで? サッカーは?』ってならないんです。凄い早さで受け入れてくれる。『ふろん太を深海に連れていくんだ、かわいそー』って感じで笑ってましたから(笑)」
若松「おっしゃる通りサポーターの方々の目が肥えてきています(笑)」
鈴木「これは大変だ(笑)」
若松「だから、これは僕らもプレッシャーなんですよ(笑)。付け焼き刃でやっているとそれが見透かされてしまう(笑)」
豊福「8月7日に開催される水まつりのラインナップを見ても、そもそも紹介ページが長い(笑)」
若松「あれは年間1位の量だと思います」
豊福「Finland、サウナ、ロッテ…。そしてバレーボールもある…(笑)」
若松「日本バレーボール協会会長の川合俊一さんが来てくれます」
豊福「おかしくない?(笑)。サッカーじゃなかったの?って(笑)」
鈴木「本当に凄いですよね(笑)」
若松「いや、もうサッカーはいいんです(笑)。競技をするのは選手、監督、スタッフたちです。僕らは競技以外でどれだけ面白い場所を作れるかをサッカーの競技場を使って、世の中にサッカーの魅力を広めていければなと思っています。まずは僕たちを知ってもらうことが大切ですから」
「深海といつかコラボをしたいなと思っていました」(若松)
8月7日にの横浜F・マリノス戦で開催される「水まつり」には無人探査機「AUV-NEXT」の模型も登場。生で見るとこれがカッコいい! 【© Shinki Takazawa】
若松「そうですね。打ち合わせをし始めたのは去年の11月、12月でしたね」
豊福「寒かったもんね」
若松「普通にジャージ着てましたね(笑)。もっと遡るとJAMSTECの本部に一度来させていただいたことがありました。その頃から深海といつかコラボをしたいなと思っていました。自分の中で探り探りでやってきて、26(フロ)周年というカギを見つけて、ここだったらやれることが広がるんじゃないかなと思っていました」
豊福「温めまくっていたんだね」
若松「その間にも清水エスパルスさんとJAMSTECさんがコラボしていることも見ていました。そこですごく良いなって思っていたんですよ。でもあれを超えるものにしないと認められない。自分の生き様を試されている感じがしていました」
豊福「そういう意味では、今回は広がっているよね。深海から始まり、かまぼこもあってSDGsもそうだし、フロンターレこども新聞でも連載があったりと。多様なコラボをやらせていただいています。当日の選手紹介も深海絡みにできないかとか。結構、厚みが出てきているから面白いですよね」
鈴木「僕は、このプロジェクトを通して感じているのは人の熱意って大切なんだなってことです。ただ、会社としては凄く大変でした。膨大なことを社内で共有するのですが、すべてのコンテンツがハテナなので、1個1個社内でも共有すると『何を言っているんですか?』となってしまう(笑)。“わがまま企画”みたいなことも言われてました(笑)。いや、俺のせいじゃないんだけどなって…(笑)。そんなこんなで大変でしたけど、楽しかったです(笑)」
若松「言えないことも沢山ありますよね(笑)。本当に鈴廣かまぼこさんには、営業、グッズ、チケット販売や強化部と話してトップチームの補給食として、かまぼこを支給してもらっていたり。フロンターレの色んな担当者と繋がりができ、大きく動いてくださっているので、本当に感謝しています」
鈴木「私たちにとってもウィンウィンの方向に向かっていけるので有り難いです。あと、自分の子どもの話になりますが、このプロジェクトの仕事を家でやっているのを、よく見てくれていました。すると、ある日サンダーバードを見ていた時に急に『あ、パパが乗ったやつだ!』って言ったんです。深海に潜ることができる4号と、『しんかい6500』を間違えたみたいなんですよね。新江ノ島水族館に一緒に行った時も、『ここでかまぼこを魚に食べさせたんだよ』とか。自分がこのプロジェクトに関わらせていただいたことで、子どもが深海や魚に興味を持ってくれたことが嬉しいです。8月7日の水まつり当日もたくさんの、子どもたちが足を運んでくれると思います。これをキッカケに深海やかまぼこに興味を持ってほしいです。スポーツ、サッカー、フロンターレさんを通して、子どもたちにそういう機会を与えるのはすごく良いことだなと感じています」
豊福「やっぱり本気度ですよね。フロンターレの本気度で、みんなが巻き込まれて面白いものになっていった結果が学びになったり広がりになっていく。非常に良い循環ですよね」
「フロンターレを活用して海や、かまぼこを多くの人たちに知ってもらえるクラブであり続けたい」(若松)
豊福さんの研究室を見させてもらいました。深海の魅力にどっぷりハマった鈴木さんと若松さんは興味津々。 【© Shinki Takazawa】
若松「僕たちはふろん太を連れていきたいという思いから始まって、コラボが決定してから色んな知識を学ぶことができました。深海はまだまだ未知なことが多くて、新しいことがどんどん発見されていく場所なので、すごく魅力を感じました。これはサッカーと似ているなって思います」
鈴木「僕はかまぼこを持っていく前の実験でかまぼこが水圧に耐えられるか実験をしたんです。爆発するのか、縮んでしまうのかと色々と予測をしていたら、あの形のまま圧縮されて帰ってきたんですね。それが、かまぼこ屋として嬉しかったです。よく『かまぼこってなんであの形なの?』って聞かれることがあります。これはトンネルと同じで、力学的に一番安定した形なんです。同じように圧がかかって、分散をされてしっかり耐えることができたんだなって。あと、かまぼこは深海魚(オキギス等)でも作られているので、これを機に原料としての深海魚を調査していきたいなって思っています」
豊福「我々からすると、深海の知見をもっと広めていかないといけないと思っています。海の面白さであり厄介なところは、見えないところです。陸上からでも月の表面の観察はできるけど、深海は様子が分からないんですよね。Googleストリートビューとか世界中の様子が手に取るように分かるのに深海はほとんど分かりません。だから研究機関としては、海のことは何でも知っていて紹介できるようになっていかないといけない。今は色んな状況があって海の資源を着目しています。やっぱり色んな面白いものがある深海をどういうふうにして紹介して活用して興味を持ってもらえるか。そういう意味ではフロンターレが宇宙、南極と続いて、深海に目を付けてくれたのも、ある意味当然な流れです(笑)。謎多き深海にフロンターレが目を付けないわけがありませんから(笑)。これからも、もっともっと皆さんに深海を知ってもらえるように取り組んでいきたいですね。ぜひ、これからも我々の活動を見ていただけたらと思っております」
――これからもJAMSTECさん、鈴廣かまぼこさん、フロンターレの活動の幅が広がっていくことを楽しみにしています。
若松「今回、一緒に取り組んでいただけたことに感謝をしなければいけません。こういう取り組みが形として生まれたことが良かったと思います。この活動を通じて、フロンターレを活用して海だったり海底、魚、かまぼこをより多くの人たちに知ってもらえるようなクラブであり続けたいと思っています。それがフロンターレの価値です。これで終わりではありません。より、進化していくことを引き続きやっていきたいですね。具体的に言うと、もっと海底に実際に選手が行ったり(笑)。海が好きな選手もいるので、連れていったらすごく目の色が変わると思います。選手との関わりも増やしていくことができたら、より魅力的な広がり方ができるんじゃないかなと思います。今後ともお付き合いさせていただけたらと思っております!」
豊福、鈴木「よろしくお願いします!」
今後もJAMSTEC、鈴廣かまぼこ、フロンターレがどんな活動の幅を広げていくのか目が離せません! 【© Shinki Takazawa】
・JAMSTEC
超先鋭研究開発部門(X-star)の主任研究員
豊福高志(とよふく・たかし)
【© Shinki Takazawa】
常務取締役本部長
鈴木智博(すずき・ともひろ)
【© Shinki Takazawa】
タウンコミュニケーション部 プロモーションリーダー
若松慧(わかまつ・けい)
【© Shinki Takazawa】
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