フロンターレ組のE-1選手権レポート〜韓国戦

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©JFA】

7月27日に豊田スタジアムで行われたEAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会第3戦で、日本代表が韓国代表に3-0で快勝。2013年大会以来、4大会ぶり2度目の優勝を手にした。川崎フロンターレから選出された3選手は山根視来が香港との初戦で2ゴールをお膳立て。脇坂泰斗は中国戦のスタメン起用を含む全3試合に出場した。そして谷口彰悟は初戦と第3戦に起用されて無失点での大会制覇に貢献。表彰式ではキャプテンとして優勝トロフィーを掲げ、大会ベストDFにも選出された。

優勝を告げるホイッスルが鳴った瞬間、谷口はキャプテンマークを巻いた左腕で小さくガッツポーズし、GK谷晃生(湘南ベルマーレ)と固く抱き合って喜びを分かち合った。そして大会を通じて無失点で乗り切った守備陣と肩を組み、円陣でお互いの健闘を称え合った。

ゴールに絡んだ攻撃陣がフォーカスされがちだが、3試合すべて無失点で乗り切ったディフェンス陣もしっかりと評価されて然るべきだろう。森保ジャパンがベースとして取り組んできた堅守は、国内組中心のチームでもしっかりとオーガナイズ。特に逆転優勝へ勝利が義務付けられた韓国戦で谷口が見せたパフォーマンスは出色の出来だった。

まず、守備では韓国のターゲットマンである身長188センチのチョ・ギュソンを完封。試合前から「前線の9番がターゲットになっているシーンが結構見られていたので、そこをまずは起点を作らせないように」と警戒していたポイントを周囲と連携しながらしっかりとケアし、出足の早いインターセプトとタイトな守備で相手エースをシュートゼロに封じ込めた。

そして守備から攻撃への切り替えでも、しっかりと“谷口らしさ”を披露する。相手のキックに対して単純にクリアするのではなく、難しい体勢でもしっかりとつなぐ意識を出し、守りながら攻撃の起点にもなった。やや狙いが合わないシーンも見られたが、その取り組みが後半の勝負どころで結実する。

キャプテンとして日本代表を4大会ぶりのE-1選手権優勝に導いた谷口彰悟 【©JFA】

1-0で迎えた63分、敵陣に押し込んだクリアボールがチョ・ギュソンの足下に入ろうとした瞬間、谷口が鋭い出足で飛び出し、インターセプトする形でワンタッチで前線へパス。これがそのままCK獲得、そして佐々木翔(サンフレッチェ広島)の追加点ゲットにつながった。後半開始直後にようやく先制した日本にとっては、試合の流れを大きく引き寄せる2点目。しかもカットされた相手の9番は谷口のカットに天を仰いで悔しがっており、この一連のプレーが韓国代表、さらには相手のエースの心を折ることになったのは間違いない。あまり目立たないプレーだったかもしれないが、逆転優勝につながる大事なインターセプトとなった。

谷口にとっては大きな重責を背負った大会だった。ワールドカップに向けて選手として結果を残しながら、自国開催の大会でキャプテンとしてチームを優勝に導かなければならない。短い準備期間の中でチームをまとめ上げる必要もあり、果たすべきミッションは多かった。彼自身もプレッシャーは「相当掛かっていましたし、自分自身にも掛けていた」と振り返ったように、ここで個人とチームの両方で結果を出せなければ、カタールへの道が険しくなることも覚悟して臨んだのだろう。ハードなミッションを乗り越えて優勝した大会後のメディア対応で「勝って終われてホッとしています」と口にしながら見せた安堵の表情、そして「同じ目標をしっかりみんなで見据えながらやれた。短期間ですごくいいチームになった」と語った口ぶりは非常に印象的だった。

これから森保ジャパンは9月のヨーロッパ遠征、そして11月のFIFAワールドカップ カタールに向けてラストスパートを掛けていく。選手個々には所属チームで結果を出し、さらに成長することが求められる。谷口もそれは重々承知している。

「何としても9月(の代表メンバー)に入りたいという気持ちは強いので、個人的には違いを見せなければというところもあった。僕自身はポジションが確立されていないですし、まだまだチャレンジャーの気持ちでしっかりやりたいし、もちろんワールドカップを見据えながらやっているので、まだまだ成長しなければいけない部分はたくさんある。攻守においてもっともっと違いを出せるような選手にならなければいけないし、つなぎの部分や守備の部分、ラインコントロール、一対一のバトルも含めて、まだまだ反省点もある。そこは継続して一つひとつこだわりながらやっていくしかない。短い時間ですけど、自分自身でしっかり分析しながら『成長できるんだぞ』という意気込みでこれからもやっていきたい」

森保一監督の指示を受け、途中出場に備える脇坂泰斗。全3試合に出場した 【©JFA】

“昨日の敵は今日の友”として戦った代表メンバーと、Jのピッチで再び対峙することになる。「代表レベルで戦うことは、本当に成長を加速させてくれる。いい刺激を受けて、それぞれのチームに帰って、また選ばれるためにみんながそれぞれ頑張ることでJリーグの基準が上がっていくし、僕らはその責任がある」と、リーグ全体のレベルアップを視野に入れるところにも代表選手としての意識がにじむ。

日本代表をまとめ上げ、個人としてもしっかりと結果を残したキャプテンがフロンターレに戻ってくる。胸に秘めた次なるミッションはもちろんリーグ3連覇だ。チームで結果を出すことが自身の未来をもつかむ。等々力からカタールへ――。勝負のリーグ終盤戦、フロンターレの最終ラインでさらなる成長を期す谷口彰悟の姿から目が離せない。

取材・文=青山知雄
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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