フロンターレ組のE-1選手権レポート〜香港戦

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©JFA】

7月19日に開幕したEAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会。日本、韓国、中国、香港が総当たりのリーグ戦で東アジアの覇権を争う大会だ。日本代表はJリーグでプレーする選手を中心に編成され、川崎フロンターレからは谷口彰悟、山根視来、脇坂泰斗の3選手が選出。今年11月開幕のFIFAワールドカップ カタールに向け、国内組にとって最後のアピールの場となる大会に臨んでいる。

19日にカシマで行われた香港との初戦では、フロンターレから谷口と山根がスタメン出場。初招集や久々に選ばれたメンバーが多い中、AFCアジア予選 -Road to QATAR-でも活躍した両選手にはチームを牽引する役割が求められた。

中でも谷口はチームの大黒柱としてピッチ内外での活躍を期待された。森保一監督はこれまでの経験や持ち前のキャプテンシーを評価し、最初のチームミーティングで彼をキャプテンに指名。今回は集合から初戦まで極端に期間が短かったが、それでも谷口は「それぞれの持ち味、どういうものを持っているかを早く理解して、チーム全員で理解しながら、それぞれの良さを引き出すことが一番大切」と話し、積極的にコミュニケーションを取ってチームをまとめるべく努めた。

香港戦では4-2-3-1の右センターバックに入り、キャプテンマークを巻いてプレー。ビルドアップの起点となるパスやリスクマネジメント、的確なコーチングなど、“いつもどおり”の安定感を見せた。これにはセンターバックでコンビを組んだ畠中槙之輔(横浜F・マリノス)も「谷口選手がいるだけで安心できる。(山根)視来くんもそうですけど、そういう部分は感じました。しっかり余裕を持って相手を見て、判断できている。そこがより際立っていた」とコメント。前半で4-0と点差が開いたことで谷口はハーフタイムに退いたが、これは3試合すべてで主力としてピッチに立ってもらうための“お役御免”という意味合い、つまり監督の期待の表れと見るのが妥当だろう。

日本代表でも背番号14を背負った脇坂泰斗 【©JFA】

また、脇坂は6-0で迎えた64分からトップ下として途中出場。セットプレーキッカーも託された。相手が自陣で人数をかけて守るようになっていたことで目に見える結果は出せなかったが、相手の中間ポジションに立って攻撃をコントロールし、フロンターレで肌身に染みているポジショニングの妙から彼のところに自然とボールが集まっていたのは好印象だった。

2アシストを記録し、キャプテンマークも巻いた山根視来 【©JFA】

そして右サイドバックで記録にも記憶にも残るプレーをしたのが山根だ。縦関係に入った水沼宏太(横浜FM)と素晴らしいコンビネーションを見せて攻撃の中心になると、20分に正確で鋭いアーリークロスを供給して町野修斗(湘南ベルマーレ)のゴールをアシスト。試合前に「準備期間は短いけど、Jリーグでやっているのでみんなのプレースタイルは理解している」と話していたとおり、鋭い抜け出しやボックス内での勝負強さという町野の武器を見事に引き出した。

水沼がワイドなポジショニングを主とすることから、山根はインナーラップで内側から攻め上がろうとするシーンが増えていく。その狙いが結実したのは55分だった。水沼からの縦パスに内側から縦に抜け出して鋭く折り返し、ニアサイドに走り込んだ相馬勇紀のゴールを演出。続く57分には中盤の真ん中でボールを受けて右サイドの水沼に大きく展開し、チーム6点目の起点にもなった。フロンターレファンにとっては“いつもどおり”の活躍とも言えるだろうが、75分間のプレーで持ち味をしっかりと見せつけることに成功。準備期間が短い中で森保監督の期待に存分に応える結果を残した。谷口が退いた後半にキャプテンマークを託されたことも彼の存在価値を示していると言っていいだろう。

次戦は24日に豊田スタジアムで中国と対戦する。キャプテン谷口は「3連勝での優勝は絶対に達成したい。そのためには相当な覚悟で臨まなければ」と気持ちを高めている。急造チームでコンビネーションの構築が難しい中、周りを見て的確なプレーを選択できるフロンターレ組の存在が、確実に日本代表の中心となっている。

取材・文=青山知雄
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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