カーリング人気解説者・市川美余×車いすカーリング、頭脳とメンタルのスポーツ「氷上のチェス」を深掘り!

チーム・協会

【photo by Photo by AFLO SPORT, Yoshio Kato, TEAM A】

北京冬季オリンピックで女子日本代表チーム「ロコ・ソラーレ」が銀メダルを獲得し、人気沸騰中のカーリング。北京冬季パラリンピックでは、車いすカーリングが行われる。「氷上のチェス」ともいわれる頭脳戦の魅力、そして世界で勝つために必要なこととは? 次回のパラリンピック出場を目指したいと意気込む2人の車いすカーラー、高橋宏美選手と戸田雄也選手(ともに、札幌ブレイブス)が、元カーリング女子日本代表で、現在はカーリング解説者として人気の市川美余さんと大いに語り合った。

かつては、女子日本代表チームでもあった中部電力カーリング部で主将を務め、引退後は解説者として活躍する市川美余さん。車いすカーリングも体験したことがあるというが、一般のカーリングにはない難しさを感じたという。

「もう15年ぐらい前になりますが、バンクーバーパラリンピックに出場した日本代表チーム相手と一試合、お手合わせさせていただいたことがあります。一般のカーリングと車いすのカーリングは、リンクのサイズや競技ルールもだいたい同じです。ただ、ショットが大きく違います。一般のカーリングの場合は、目標の約1m手前を狙ってショットを投げ、ブラシで氷をこするスイープとの合わせ技で狙ったところに持っていきます。ところが、車いすの場合は、デリバリースティックという専用のスティックでストーンを投げ、スイープがありません。つまり、投げ手のコントロールだけで勝負するんですね。スイープありきのカーリングをしてきた私にとって、スイープなしというのは想像を絶する難しさがありましたし、それをやってのけている車いすカーラーの皆さんには尊敬しかありません」

戸田選手と高橋選手から市川さんに質問!

第15回日本車いすカーリング選手権で札幌ブレイブスのスキップを務めた戸田  【photo by Yoshio Kato】

パラ・パラーリフティングと車いすカーリングの二刀流を実践している戸田選手と、さらに高みを目指したいという高橋選手。2人が市川さんに聞きたいこととは――。


戸田:車いすカーリングはスイープがないからこそ、ショットの技術が必要なのですが、技術にもいろいろあって。ストーンを置く位置によって、デリバリースティックの引き具合やストーンのウエイトを変えることもそうですが、ショットの最後のところで、ちょっと押してみたり、すっと力を抜いてみたりするなど、感覚の部分も大きいんです。一般のカーリングではどうですか。


市川:私たちは蹴り足の感覚でショットの力加減を調整しています。私の場合は、蹴り足が少し弱かったら、最後に手でちょっと押そうかなとか。きっと、同じことですよね。


高橋:プレッシャーがかかるショットを投げるとき、どんなことを心がけていましたか?


市川:カーリングって精神的なものがすごく影響するじゃないですか。だから、ここで決めたらすごい、みたいなことを考えない。毎回、スキップを信じて、指示されたウエイトでブラシに向かって投げることだけに集中していました。


高橋:ショットを投げる前のルーティンはありましたか?


市川:ルーティンにしようと思ってやってたわけじゃないんですけど、手がカサカサで冷え性なので、手を温めるためにふーって息を吹きかけてから投げていました。


高橋:過去に3度日本代表になりましたが、世界でも活躍できるようになりたいです。強いチームの共通点ってありますか?


市川:ミスを最小限に抑える力があるチームでしょうか。あらかじめプランを複数用意しておくことももちろんですが、例えば、ロコ・ソラーレの「いいと思うー」「オッケー」などのポジティブワードは、ミスしたときにすごく効くと思います。


戸田:僕と宏美ちゃんはお互い負けず嫌いなので、つい言い合いが多くなってしまうんですよ。


市川:カーリングって感情の起伏がないことが大切とか言われますが、地味にイライラしますし、ついカーっとなることもありますよね。私たちも、ちょっと気まずくなる瞬間があるような時期があったんですよ。そういう時期を経験して、現在のポジティブで洗練されたスタイルに変わっていったんですね。


高橋:これからは、私たちももっとポジティブに、仲良く行きましょう。

市川さんから戸田選手と高橋選手に質問!

車いすカーリングにも高い関心を寄せる市川さんからも質問が。やがて、普及について話は盛り上がっていく。

世界車いすBカーリング選手権2019でプレーする高橋  【photo by TEAM A】

市川:オリンピックのカーリングは男女別ですが、車いすカーリングは男女混合ですか?


高橋:そうです。必ず男女混成チームでなければいけません。ただし、人数の内訳は決まってなくて、例えば女性3人、男性1人でもOKです。


市川:カーリングには、地上でできるカローリングという競技があるのですが、車いすカーリングはいかがですか?


戸田:デリバリースティックを使ってフロアカーリングをすることはあります。実際にフロアカーリングで体験会をしたこともありますよ。


市川:カーリングは競技ができる場所が少ないこともあって、普及という点ではまだまだなんです。アスリート委員会でも体験会のようなイベントをしたいと話題に上がっているので、ぜひ一緒に盛り上げていけたらうれしいです。


戸田:見てもらうための工夫はされていますか? 僕たちは、ユニフォームをもっと派手にしたいねって言ってるのですが。


市川:いいですね! ぜひノルウェーチームの過去大会のデザインぐらい派手にして、キャッチーにいきましょう!いいですね!


戸田:車いすカーリングのテレビ解説にも挑戦しているのですが、解説やコメントを出す際に心がけていることはありますか?


市川:カーリングの専門用語は英語が多いのですが、解説ではできるだけ日本語に置き換えて、わかりやすく話すように心がけています。


戸田:ちなみに、パラリンピックでは中国やスウェーデンが強いのですが、オリンピックではいかがですか?


市川:スウェーデン、スコットランド、ロシア、カナダですね。パラリンピックで中国が強いというのは意外です。何か要因があるのですか?


戸田:シンプルにセンターラインを徹底的に使っているイメージがあります。その分、ショット率が大切になるのですが、中国はショット率の高い選手がそろっているという印象です。特にスキップの存在が絶対的です。


高橋:市川さん、ぜひ車いすカーリングの解説もお願いします。私たちが本州に行ったり、市川さんが北海道にいらしたときに、一緒にカーリングができるとうれしいです。


市川:★ぜひ! いつでもお声がけください。


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■カーリング解説者 市川 美余(いちかわ・みよ)
1989年、長野県軽井沢町生まれ。7歳からカーリングを始める。2008年中部電力に入社し、カーリング部に入部。2011年から2014年まで日本カーリング選手権4連覇。2014年に引退。現在はカーリング解説者として活躍中。
「私の現役当時は、多くの方にとって『カーリングという名前だけは知っている』という時代でした。カーリングの面白さが伝わればいいなと、魅せるカーリングを追及して、攻めるプレースタイルを確立しました。キャッチーさも意識して、新聞や雑誌、テレビの見出しにしていただけそうな言葉を作ってみたりもしたんですよ。今はロコ・ソラーレがカーリング人気をけん引してくれていますが、全体の認知度はまだまだ。少しでも多くの方とカーリングが触れ合う機会を設けていかなければと思っています」
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【photo by AFLO SPORT】

市川:戸田選手、高橋選手。一緒にカーリング界を盛り上げていきましょう!

text by TEAM A
photo by Photo by AFLO SPORT, Yoshio Kato, TEAM A

※本記事はパラサポWEBに2022年3月に掲載されたものです。
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