今季は目立つ“復活組”の活躍。トミー・ジョン手術を乗り越え、躍動する6名の投手たち
トミー・ジョン手術からの復帰には、1年以上の長い期間を要する
今季のパ・リーグでは、そのトミー・ジョン手術から復帰を果たした投手たちが存在感を放っている。今回は、近年にトミー・ジョン手術を受けた経験を持つ投手の中で、現在一軍で活躍を見せる投手たちの顔ぶれと、各投手の詳細な経歴を紹介していきたい。(成績は交流戦終了時点)
石川直也投手(北海道日本ハム)
続く2019年はセットアッパーとしての登板が主となり、自己最多の60試合に登板。21ホールド5セーブに加え、奪三振率は12.42と圧巻の数字で、勝ちパターンの一員として奮闘を見せた。しかし、2020年に右ひじを故障し、同年8月にトミー・ジョン手術を経験。そこから2シーズンはリハビリが続き、一軍登板は果たせなかった。
それでも2021年オフに実戦復帰を果たすと、2022年は二軍で11試合に登板し、防御率0.82と格の違う投球を披露。この活躍が認められて5月8日に954日ぶりの一軍登板を果たすと、その後も安定感のある投球を続け、再び勝ちパターンの一角を担うように。かつての守護神が公式戦で久々のセーブを記録する日も、そう遠くはなさそうだ。
與座海人投手(埼玉西武)
3年目の2020年には開幕前の対外試合でアピールに成功し、開幕ローテーション入りを果たす。開幕から3試合続けて試合をつくりながら勝ち星に恵まれなかったが、5試合目となった7月23日の試合で5回2失点と好投し、待望のプロ初勝利を記録。8月に入ってから調子を落として一軍定着は果たせなかったが、貴重な経験を積む1年とした。
続く2021年は中継ぎとしてスタートしたものの、シーズン終盤には先発として安定した投球を披露。その流れは2022年も継続し、先発投手のアクシデントで急遽登板した4月28日の試合で白星を挙げると、そのまま先発の一角に定着。5月17日の試合では地元・沖縄で8回無失点の好投を見せるなど、一気にブレイクを果たしそうな気配を見せている。
西野勇士投手(千葉ロッテ)
しかし、2016年途中から右ひじに問題が生じ、2017年からの2年間は本領を発揮できず。それでも、2019年には先発と中継ぎを兼任しながら防御率2.96と復活を見せ、2020年も開幕ローテーション入りが確実となっていた。だが、開幕直前に右ひじを負傷してトミー・ジョン手術を受け、そこから2シーズンをリハビリに費やすことになった。
長い道のりを経て2021年オフに実戦登板を果たし、2022年はリリーフとして開幕一軍入り。安定した投球を続けたことで僅差の試合での登板も増加し、交流戦終了時点で9ホールド、防御率1.80という好成績を残している。守護神時代に見せていたピンチに強い投球を取り戻し、再びチームの投手陣に欠かせないピースとなりつつある。
近藤大亮投手(オリックス)
そこから3年連続で50試合以上に登板し、2018年は奪三振率8.67、2019年は奪三振率11.05と、独力でピンチを切り抜けられる右腕としてフル回転。防御率も3年続けて3点台前半と、苦しい時期が続いたチームのブルペンを支えた。しかし、2020年に右ひじを故障して同年9月にトミー・ジョン手術を受け、オフには育成選手となって再起の道を歩んだ。
昨季の優勝の輪にも加われず、捲土重来を期した今季は二軍での8試合で防御率0.00、奪三振率14.10と圧巻の数字を記録。4月24日に支配下に復帰すると、13試合で6ホールド、防御率0.73、奪三振率9.49と大活躍を見せている。ここまでわずか1四球と課題の制球面も大きく改善されており、完全復活と同時にキャリアハイのシーズンを送る可能性も十分だ。
黒木優太投手(オリックス)
続く2018年も9月初旬までリリーフとして登板を重ね、39試合で17ホールドをマーク。引き続き主力として奮闘したが、2019年の6月に右ひじを故障し、トミー・ジョン手術を受けて同年オフには育成契約へ移行。2020年オフには支配下登録も勝ち取ったが、翌2021年は二軍での17試合で防御率6.19と、かつてのような投球は見せられなかった。
しかし、2022年は二軍での6試合で無失点と好投し、4シーズンぶりとなった一軍のマウンドでも14試合で防御率1.29と好調だ。14イニングで13奪三振と以前の奪三振力も戻りつつあり、4月6日には5年ぶりとなるセーブも記録。苦難の道を乗り越えた剛球右腕は、ルーキーイヤーの輝きを着実に取り戻しつつある。
種市投手も二軍で好投を見せており、今季中の復活も期待できる状況だ
大手術から1年以上のブランクを乗り越えての完全復活は、決して簡単なことではない。それだけに、苦難を経て表舞台に帰ってきた男たちの活躍は、復帰を待ち望んでいたファンの胸を打つものにもなる。これからトミー・ジョン手術を受け、リハビリに励むことになる投手たちにとっても、こうした先達たちが見せる活躍は、大きな力となることだろう。
文・望月遼太
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