【スターツシニア/FR】27年前から続く師弟愛 藤田寛之は芹澤信雄の前での優勝に「少しは恩返しできたのかな」

チーム・協会

【©PGA】

第22回スターツシニアゴルフトーナメント 最終ラウンド

 
 今季シニア第4戦「第22回スターツシニアゴルフトーナメント」の最終ラウンド。最終組で回った藤田寛之(53)が68ストロークとし通算18アンダー、3日間首位を守り切りシニア初優勝を飾った。優勝賞金1400万円を獲得。5打差2位には平塚哲二(50)、タワン・ウィラチャン(55)ら5名が入った。

 藤田寛之が10歳年上の芹澤信雄の門を叩いたのは27年前の1995年だった。そこから藤田が53歳、芹澤が62歳になってもその関係は続いている。藤田が最終18番ホールで70センチのウイニングパットを決め、グリーン脇で待っていた芹澤を見つけると、ハグをかわして喜びをわかちあった。

 藤田の3打差リードで迎えた最終日。1番パー4ではウェッジで打ってセカンドショットの距離感が合わずにパー、2番パー5でも30ヤードの3打目を寄せきれずパーと、やや重苦しい雰囲気があった。

 「確かに1番、2番とどちらか獲りたい感じはありました。でもウィラチャンとマークセンも獲れなかった。2人がバーディ、バーディできていたら、また違ったかもしれない」と藤田は振り返る。

 3打差で藤田を追う同組のタワン・ウィラチャンとプラヤド・マークセン(ともにタイ)もまた、最初の2ホールで藤田との差をつめることはできなかった。

【©PGA】

 後続が伸ばせないこともあり、藤田に緊張はあっても焦りはなかった。

 「自分が伸ばせば勝てると思っていた。4つスコアを伸ばすことができれば、自分のなかでは100点で、それで負けたらしょうがない」。
 
 トータル14アンダーでスタートした藤田は、トータル18アンダーを目指していた。

 スコアボードは何となく見るだけで、周りよりも大事なのは自分自身。待望のバーディが来たのは5番パー3だった。ティショットをピンの手前3.5メートルにつけると、これをジャストタッチで沈めて最初のバーディ。続く6番パー4では残り136ヤードを9番アイアンでピンに重ねる会心のショットで、手前2メートルにつけて連続バーディを奪った。

 「前半のバーディ、バーディが大きかった」と 後続との差をさらに広げ、ここから独走態勢を築いていく。

 後半に入って、14番パー5でガードバンカーからの3打目を50センチに寄せて、目標としていたトータル18アンダーに乗せた。

 それでも「周りがわからなかったので、18番パー5かそれ以外のホールでバーディを獲っていくことを考えていた」と守りに入ることなく、ボギーなしで54ホールを回りきった。3日間首位を譲らないシニア初Vは、2位に5打差をつける圧勝で、強い藤田を印象づけた。

【©PGA】

 そんな藤田も、ここ2,3年ショットの不調に苦しみ、昨シーズンはついに23季連続で守ってきたレギュラーツアーの賞金シードを失った。今年に入っても思い通りにならないショット。今週、急に別人のようなゴルフができたのは、やはり師匠のアドバイスだった。

 「腰のターン、クラブはそれにつられてくる、クラブフェースを閉じてくる。芹澤さんに言われたことを意識しながら回っていた」。

 セーフティに上りのラインを残しながら、コツコツとバーディを積み上げた。芹澤の“魔法”がなければ、優勝カップを掲げていたのは藤田ではなかっただろう。

 「芹澤さんは師匠でもあって恩人でもある。自分はネガティブな右肩下がりの人間なので、芹澤さん引っ張り上げてもらいながらやってきた。歳は10年違うので、10年後の自分を芹澤さんに置き換えて、ずっと自分は先を歩いている芹澤さんの姿を見ながらここまで来た。そんな師匠と一緒のステージでやれるっていうのが幸せなんです。しっくりくるんですよね」。

 藤田がレギュラーツアーで活躍していた頃、いつも近くに芹澤がいた。芹澤がレギュラーツアーを離れてシニアツアーに出場するようになり、PGAの副会長の業務も抱え、教え子の林菜乃子のために女子ツアーへ飛ぶこともあり、なかなか以前のようにスイングを見てもらえなくなった。しかし、今週は毎日ゴルフ場で会い、夜は食事をともにし、懐かしくも居心地のいい時間を過ごすことができた。

 久しぶりの芹澤との勝利のハグの味は「汗臭いので申し訳ない」と照れながらも、「芹澤さんに少しは恩返しできたのかな」と藤田はしみじみいう。

 師匠の芹澤は、「よかったよ。それだけだよ」と優勝カップを誇らしげに掲げる藤田を静かに見つめていた。

【©PGA】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

PGAはゴルフの正しい普及と発展を願い、誰にでも愛される「国民のスポーツ」「生涯スポーツ」となるため、日本ゴルフ界のリーダーとして活動しています。PGAの使命は、トーナメントプレーヤーの育成、ゴルフ大会の開催・運営に加え、ゴルフの正しい普及と発展を具現化するために、ティーチングプロ資格を付与したゴルフ指導者を育成しています。さらにPGAでは幅広い分野で積極的な取り組みを行い、地域に密着した社会貢献活動、ジュニアゴルファーの育成など多方面にわたる取り組みを日々歩み続けています。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

女子ツアー3週連続で競技短縮へ 悪天候で…

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント