元関脇・安美錦(早大院修了)が断髪式 「今後は相撲部に顔を出し、力になれたら」
【早稲田スポーツ新聞会】
津軽の男・元関脇安美錦 約350人がはさみを入れた断髪式
【早稲田スポーツ新聞会】記事 田島璃子、写真 安斎健、大貫潤太氏】
2021年度、早大大学院スポーツ科学研究科で学んだ元関脇安美錦、安治川親方(令4スポ院卒)が、「安美錦引退 安治川襲名披露大相撲」を執り行った。十両取組、最後の土俵入り、相撲甚句、横綱五人掛り、幕内取組など断髪式の前後にもさまざまな演目が用意され、安美錦としての集大成、そして安治川親方としての新たな相撲人生を祝した。
安治川親方は青森県西津軽郡深浦町に生まれ、相撲を愛する杉野森家で育った。元力士の実兄・杉野森清寿(元安壮富士)と同じ安治川部屋(現伊勢ヶ浜部屋)に入門すると、初土俵から3年で関取に昇進した。その後は怪我に苦しむが、横綱や大関から多くの勝ち星を挙げる存在だった。さらに、アキレス腱を断裂するも、39歳にして幕の内に復帰。そして40歳9カ月、歴代1位の記録である関取在位117場所目、2019年7月に引退を発表。年寄・安治川を襲名した。新型コロナウイルスの影響で断髪式は延期されており、その間に早大大学院スポーツ科学研究科の1年過程を修了している。昨年開催されたオンライン座談会、『早稲田相撲部の時代』ではデーモン閣下(世を忍ぶ仮として、昭61社卒)やくみつる氏(昭56商卒)室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)とともに、早大生に相撲の魅力を語った。
断髪式に臨む安治川親方 【早稲田スポーツ新聞会】
観客が思わず息を呑んだのが、実兄・杉野森清寿(元安壮富士)による相撲甚句だった。幼いときから応援し、時にその活躍に悔しい思いをした兄として、弟の相撲人生を圧倒的な歌唱力で歌い上げた。会場からは大きな拍手が沸き起こり、直接は聞けなかったという安治川親方も「よかったという声を沢山いただき、ありがたい」と振り返った。
出身地・青森県深浦町の町長である吉田満氏からの愛の込められた挨拶のあと、ついに断髪式となった。はさみを手に取ったのは、安治川親方を敬愛する約350人。早大からは、亀井淳(評議員)佐藤寛之教授(教育・総合科学学術院)中村好男教授(スポーツ科学学術院)平田竹男教授(スポーツ科学学術院)室伏渉監督(早大相撲部)(五十音順)が参列した。また、早大相撲部と関わりの深い、やくみつる氏もはさみをとり、デーモン閣下の名前も呼ばれた。止めばさみは師匠であり、父のいとこである伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)。途中で向きを変えながら、会場の四方それぞれに顔を見せながら進められ、歓声に手を降って応える場面もあった。安治川親方にとっても、「たくさんの方に応援していただいて安美錦があった」と実感する工夫だった。涙を拭いながらも、終始穏やかな表情だった安治川親方。断髪式を終え、2人の娘からの手紙、花束を受け取った。
涙を拭う安治川親方 【早稲田スポーツ新聞会】
幕内取組、聡ノ富士の弓取式のあと、安治川親方が再び長男・丈太郎くんとともに土俵に上がり、御礼の挨拶として、思いを語った。安治川親方は、太く熱いメッセージを真っすぐに伝え、鳴り止まない拍手に包まれた。
「私の相撲人生は、好きになった相撲を、好きなだけやれた相撲人生でした。本当に幸せでした。その中で得た経験、またさまざまな出会い、そういうことを胸に、これからの指導にあたり、強いだけではなく、魅力ある力士を、これから育てていきたいと思います。今日は、親方としての新たな一歩だと思います。」(挨拶より抜粋)
会場に微笑む安治川親方 【早稲田スポーツ新聞会】
コメント
――断髪式を終えて約2週間が立ち、振り返っていかがですか
2度の延期という誰も経験したことのない断髪式でしたが、沢山の方々に来ていただいたことにあらためて感謝すると共に、妻や事務局が支えてくれたお陰で無事開催できたことに、今後親方としての使命に気を引き締めているところです。
――お兄様の相撲甚句はいかがでしたか
兄の相撲甚句は、準備をしていて直接は聞けていないのですがよかったという声を沢山いただき、ありがたいなと思いました。
――断髪の最中はどのようなお気持ちでしたか
断髪している最中は、お客様の顔がみれてよかったです。沢山の方に応援していただいて安美錦があったとあらためて感謝していました。
――今後、早大相撲部と関わるご予定はありますか
今後は早稲田相撲部に顔を出し、結果を出せるよう力になれたらと思います。その中で大相撲で活躍してくれる早大相撲部の後押しができたら幸いです。
※コメントは6月11日にいただいたものです。
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