【記録と数字で楽しむ第106回日本選手権】男子走幅跳:2011年以降の日本選手権8m超えは橋岡だけ。世界選手権参加標準記録突破のためにも8mオーバーの戦いに期待

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【フォート・キシモト】

6月9日〜12日に大阪・ヤンマースタジアム長居で行われる「第106回日本選手権」の見どころや楽しみ方を『記録と数字』の視点から紹介する。

【男子走幅跳】

・決勝/6月12日(日)15:30

2011年以降の日本選手権8m超えは橋岡だけ。世界選手権参加標準記録突破のためにも8mオーバーの戦いに期待

■主な記録一覧(2022年5月31日現在)
・世界記録 8m95
・アジア記録 8m48
・日本記録 8m40
・U20日本記録 8m12
・学生記録 8m32
・大会記録 8m36
・今季世界最高 8m45
・今季アジア最高 8m36
・今季日本最高 8m14
・22オレゴン世界選手権参加標準記録 8m22
オレゴン世界選手権参加標準記録は8m22。橋岡優輝(富士通)は、昨年6月27日に行われた日本選手権で8m36(=大会新)をジャンプしたが、記録有効期間が6月28日からであり、1日足らず標準突破には至っていない(有効期間は当初6月27日からだったが、日本選手権直前に世界陸連が6月28日からに変更した)。

現時点で、突破者はゼロ。ただし、橋岡を始め、日本記録保持者の城山正太郎(ゼンリン)、自己記録8m23の津波響樹(大塚製薬)が参加標準記録を上回る自己記録を持っており、複数名が突破してくるチャンスはある。今季日本最高を出している山川夏輝(佐賀スポ協)もあと8cm。フィールド種目の中では、オレゴンに近い選手が最も多い注目種目である。

ちなみに、今季世界最高はスイスのデカスリート・S.エハマーが十種競技中に出したもので、十種競技内の世界最高。単独種目選手も負けていられない状況で、世界のロングジャンパーの意地を見せてほしい。


■過去10年の優勝者(所属は当時のもの)
年 記録 選手 所属 優勝回数
2012年 7m78(-1.1) 荒川大輔 NOBY 3回目
2013年 7m76(+0.1) 大岩雄飛 モンテローザ 初
2014年 7m94(+0.6) 嶺村鴻汰 筑波大 初
2015年 7m88(-0.1) 菅井洋平 ミズノ 4回目
2016年 7m93(-0.1) 嶺村鴻汰 モンテローザ 2回目
2017年 8m05(+1.4) 橋岡優輝 日本大 初
2018年 8m09(+1.2) 橋岡優輝 日本大 2回目
2019年 7m98(-1.1) 橋岡優輝 日本大 3回目
2020年 7m99(-0.1) 津波響樹 大塚製薬 初
2021年 8m36(+0.6) 橋岡優輝 富士通 4回目
これまで4度の優勝を果たしている橋岡。今大会で優勝回数を5回に伸ばすことができれば、臼井淳一(8回)、南部忠平(6回)に次いで、単独の3番目に上がる。さらに、100mHで2回、三段跳で3回優勝経験のある母の直美さん(旧姓・城島)の優勝回数にも並ぶことができる。ただし、父・利行さんは棒高跳で5連覇と2連覇を合わせ7回の優勝をしているので父にはまだ及ばない。とは言えまだ23歳。今後、父や伝説のジャンパーに追いつき、追い抜く可能性は十分にある。


■資格記録順(資格記録有効期間2021年1月1日〜2022年5月22日)
資格記録 選手 所属 自己記録
8m36 橋岡優輝 富士通 8m36
8m14 山川夏輝 佐賀スポ協 8m14
8m14 吉田弘道 神崎陸協 8m14
8m05 伊藤陸 近畿大工業高専 8m05
7m97 手平裕士 阿部商事 7m97
7m92 安立雄斗 福岡大 7m92
7m91 津波響樹 大塚製薬 8m23
7m90 城山正太郎 ゼンリン 8m40
7m87 小田大樹 ヤマダホールディングス 8m04
昨年の日本選手権の優勝記録である橋岡の8m36は、2021年世界リスト7位で2021年アジア最高。2021年のトラック&フィールド種目の中では、110mHの泉谷駿介(世界5位)に次ぐ、世界リスト順位日本人2番目で、フィールド種目の中では最高順位。2021年は8m36を含め、8m以上の試合が5度。記録の水準がさらにワンランクアップした一年だったと言えるだろう。

昨年の兵庫県選手権で、それまでの自己記録7m88から一気に8m14まで伸ばし、8mジャンパーに仲間入りした吉田。この時は追風参考でも8m23(+3.1)を跳んでいる。今季はまだ8mは超えていないが、自身3番目の7m99を跳ぶなど好調を維持。

ちなみに高校生の弟・正道(姫路商高3)も今季高校最高となる7m70を跳んでおり、兄弟で日本No.1と高校生No.1達成という可能性を秘めている。偉業達成のためには、まずは兄が優勝を遂げる必要がある。

三段跳の伊藤は、昨年の日本インカレで自身初の8m超えとなる8m05(+1.5)をジャンプ。三段跳の自己記録17m00と合わせて、日本人初の8m&17mジャンパーとなった。


■2022年記録順(2022年5月31日現在)
記録 選手 所属
8m14 山川夏輝 佐賀スポ協
8m07 橋岡優輝 富士通
7m99 吉田弘道 神崎陸協
7m90 津波響樹 大塚製薬
7m80 有村拓巳 福岡大
今季日本リストトップは、5月8日のセイコーGGPで8m14(+0.4)の自己新、日本歴代8位タイを出した山川。それまでの自己記録8m06を5年ぶりに更新した。橋岡は自身今季初戦の日大記録会で出した8m07が最高。日大OBの2人がワン・ツー。


■資格記録上位選手の日本選手権走幅跳入賞歴

【JAAF】

橋岡が勝てば2年連続5回目、津波が勝てば2年ぶり2回目、その他の選手が勝てば初優勝となる。日本記録保持者の城山は2位が2回あるが、優勝に未だ届いていないのはやや意外な印象。城山と同じく2014年に初入賞を果たしている手平とともに、悲願の優勝を手に入れたいところだろう。3位以内2回の山川、3位以内3回の小田の日大OBコンビは安定感抜群。橋岡を含め、日大OBワン・ツー・スリーの可能性も十分にあり得る。


■日本選手権決勝における「順位別最高記録」
※「w」は追風参考記録
順位 記録 年
1位 8m36 2021年
2位 8m06 1988年
3位 8m01 1994年
4位 7m92 2018年
5位 7m85 2021年
6位 7m81 2021年
7位 7m78w 2008年
8位 7m70w 1999年
8位 7m70 2021年
過去、2人以上が8mを跳んだ大会は1988年(柴田博之8m06w、臼井淳一8m06)、1991年(下仁8m10、T.ボグダン8m04w)、1994年(朝原宣治8m06、志田哲也8m03w、森長正樹8m01)、1999年(稲富一成8m05w、田川茂8m02w)、2009年(荒川大輔8m00、菅井洋平8m00)と5回あるが、3人以上が公認記録で8m超えを果たした年はない。史上初となる3人以上の公認8m超えや順位別最高記録の更新ラッシュを期待したい。


■日本選手権における8m以上の記録
※「w」は追風参考記録
年 順位 記録 風 選手
1987年 1位 8m07 2 臼井淳一
1988年 1位 8m06w 2.6 柴田博之
1988年 2位 8m06 0.6 臼井淳一
1991年 1位 8m10 0 下仁
1991年 2位 8m04w 2.2 T・ボグダン
1992年 1位 8m00w 2.5 森長正樹
1994年 1位 8m06 0.8 朝原宣治
1994年 2位 8m03w 2.4 志田哲也
1994年 3位 8m01 1.5 森長正樹
1997年 1位 8m10 0.9 朝原宣治
1999年 1位 8m05w 3.5 稲富一成
1999年 2位 8m02w 3 田川茂
2001年 1位 8m03 1.7 渡辺大輔
2004年 1位 8m20 1.8 寺野伸一
2008年 1位 8m13w 3 菅井洋平
2009年 1位 8m00 1.5 荒川大輔
2009年 2位 8m00 0.6 菅井洋平
2010年 1位 8m10 1.8 菅井洋平
2017年 1位 8m05 1.4 橋岡優輝
2018年 1位 8m09 1.2 橋岡優輝
2021年 1位 8m36 0.6 橋岡優輝
日本選手権において、8mを初めて超えたのは、1987年の臼井。それから35年間で追風参考も含め、14人で延べ21人が8m超えを果たしている。回数では、菅井と橋岡の3大会がトップ。菅井はその内2008年が追風参考記録のため、公認記録に限れば、橋岡が単独トップとなる。2011年以降、8m超えは橋岡のみ。新たな8m超え選手の誕生が持ち焦がれる。


JAAFメディアチーム

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