Day 4 〜 プラスワン 宇宙と勝率7割5分のボール

チーム・協会

【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】

ブリヂストンレディスオープン 袖ヶ浦カンツリークラブ 袖ヶ浦コース(千葉県)最終日

 最終日、五月晴れの空がまぶしい。トーナメント会場はブリヂストンの「B」のロゴ、コーポレートカラーの白を基調にしたモダンなデザインがより一層、映えた。1983年の第1回から積み重ね、今年が第39回の歴史がある。

 トーナメントプロデューサー(TP)をつとめる、(株)ブリヂストン、宣伝・イベント推進部の中原啓成さんは、「10年後、20年後もゴルフのわくわくを提供しつづけるーがコンセプトです」と前置きした。そして、「昨今は、SDGsが大前提です。未来のことは、誰にもわからないけど、持続可能な大会を目指している」。ペットボトルのキャップを再利用したボールマーカーから、場内のごみ箱にはSDGs、17の目標のひとつ、12のつくる責任 つかう責任のパネルが当然のように貼られた。

 さながら、新時代のトーナメント。とりわけ、ブリヂストンパークへ展示された月面探査用タイヤには、目を見張った。19年からJAXA(宇宙航空研究開発機構)、トヨタ自動車とともに、国際宇宙探査ミッションに参加して取り組んできた。月面の環境は過酷。マイナス170~120度と温度差が激しい。しかも高エネルギーの放射線が降り注いでおり、ゴムが素材では耐えられない。タイヤは金属。接地面は砂漠の生き物、ラクダの足裏からヒントを得たそうだ。近い将来、日本の英知が宇宙へ広がっていく。

 この日、最もワクワクしたのは優勝した西郷真央だった。新調されたトロフィーを高々と掲げ、満面に笑みが広がる。ゴルフボールを基調にした、インパクト絶大の勝者の証。「数あるギアの中から、ボールを選んだ。ゴルフだから一目瞭然。しかも、弊社が自信をもっている商品です。創業以来、社をあげて円の美学を大事にしてきた。タイヤも円、ボールも円ですからね」(中原TP)

 今シーズンのJLPGAツアーは12戦を消化した。その内、9戦でブリヂストン製ボールの契約選手が優勝を飾っている。創業当時から、創設者の石橋正二郎がゴルフは将来、日本はもちろん、世界へも普及すると考え、タイヤと並行してボールの開発にも1932年から本格的に取り組んだ。

 「タイヤ開発には、接地の科学がある。タイヤの接地面は、てのひら1つ分。そこに安心と安全がかかっています。文字通り、つくる方も命がけ。培った技術は、クラブがボールへ当たる、一瞬に生かされている」(中原TP)

 クラブとの接触時間はわずか1/2000秒。16番、西郷真央はバンカーからチップインを決めた究極のイーグルは、ブリヂストンの技術と自身のメンタル、テクニックが融合した結晶だった。ちなみに、ボールの直径は42.67mm。

 使用球は3つの素材で形成されている。第1層(コア)=合成ゴム・第2層=アイオノマー樹脂・第3層=ウレタン樹脂。最高品質と最高性能を目指しながら、技術の粋を集結させている。「ボールひとつの中に、数多くの特許がつめこまれています。ひとつだけ明かすと、コアがすごい。硬さを自在に操ることができる」(ブリヂストンスポーツ ブランド・ファンコミュニケーション本部・浦邉敏彦さん)

 国産ボール第1号は1935年に登場した。当時は1球1円。現在の貨幣価値に換算すると、1600円にもなる高額商品だった。それが令和の今、1球は約500円になったが、90年間の進化の過程が凝縮。プロだけではなく、一般のゴルファーにも飛んで、止まるという奇跡の源を提供している。

 「飛びの3要素は初速、バックスピン量、・打ち出し角度のバランス。打ち出し角度は13-15度前後、バックスピン量は2000-2500回転/分が最良の弾道を生む。トッププロは、この範囲で見事に収まっています。アマチュアの皆さんも、スイングデータを計測。最適な数値の中に収まるボールを選ぶことで、一気にスコアがよくなるかもしれません」(同・浦邉さん)

 月へ行くタイヤ。カップへ吸い込まれるボールがつながった。十分すぎるぐらい、わくわくを実感した4日間ー。

(メディア管理部・中山 亜子)
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