【テニス】全仏オープン展望:左アキレス腱に不安を抱える大坂なおみ、レッドクレーでの成長を見せられるか?

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【(C)Getty Images】

大坂なおみ(WTA世界ランキング38位)は、5月22日からフランス・パリで開幕するグランドスラム第2戦・ローラン・ギャロス(全仏オープン)にノーシードで臨まなければならない(グランドスラムのシード数は32)。

昨年の全仏は大坂にとって波乱含みの大会となった。会見拒否宣言や選手のメンタルヘルスへの問題提起が、世界的な話題となって注目を集めただけでなく、大坂自身がうつ状態に悩まされていることも打ち明け、2回戦で棄権を申し出た。

その後、メンタルの回復を図りつつ、戦線復帰を果たした大坂ではあったが、2021年USオープンと2022年オーストラリアンオープンでいずれもタイトルを守れず、世界ランキングを84位まで急落させた。それでも、3月にはグランドスラムに次ぐグレードのWTA1000・マイアミ大会で準優勝して、世界ランキングを30位後半まで戻してきた。

「私は、明らかにクレーのエキスパートではない」と大坂が自認するように、ローラン・ギャロスで使用されるレッドクレー(赤土)コートを、大坂は得意としていない。これまでローラン・ギャロスでの最高成績は3回戦進出だ。

「自分は、良い学習者だと思う」と自己分析する大坂は、子どもの頃に住んでいたフロリダに多く存在するグリーンクレーコート(アメリカ特有のクレーコート)でよく練習していたという。だから、クレーへの対応は問題ないと当初考えていたが、実際にレッドクレーコートでプレーした時には、グリーンクレーと別物であることを痛感させられ、バウンドのイレギュラーやレッドクレー特有のスライディングフットワークなどに難しさを感じた。

一方で、自己分析どおり大坂の学ぶ姿勢が優れているのも事実で、レッドクレーへの対応は少しずつではあるが改善されている。

今季のクレーシーズンでは、WTA1000・マドリード大会に参戦したが2回戦で敗れ、出場予定だったWTA1000・ローマ大会を左アキレス腱痛のためキャンセル。クレーで1勝しか挙げられず、十分に試合をこなせたとは言えない。さらに、左アキレス腱の回復具合も気になる。

やはり大坂のレッドクレーでの成長は、長い目で見続けるべきだろう。ヨーロッパや南米のレッドクレーで育った選手たち、いわゆる“クレースペシャリスト”と大坂が対戦すれば、現状では分が悪くなる場面が多発することになるだろう。

大坂の武器はビッグサーブで先手をとり、浅く返球されてきたリターンを、コートの中へステップインしてウィナーを放つ“3球目攻撃”。しかし、ハードコートで容易く決めることができても、球足の遅くなるレッドクレーコートでは、対戦相手にボールを拾われるケースが多くなる。だから、ポイント中のラリーを組み立て直す時に、どれだけ大坂が我慢強くプレーを続けられるか。テニスだけでなく、メンタル、体力も問われていくことになるのだ。

大坂に帯同するウィム・フィセッテコーチは、「(クレーで)戦略面で自信を得ることができるかが問題だと思う」と、大坂のレッドクレーでの自信不足を指摘してきた。今季のクレーシーズンではできなかったものの、大坂が、ローラン・ギャロスで新たな成功体験をどれだけ積めるかが、クレーでの成長のキーになっていきそうだ。

今回の全仏オープンでは、1回戦から強敵と対戦する可能性がある。大坂が得意のハードコートなら、パワーショットを武器に、シードに関係なく勝ち上がれるかもしれない。しかし球足が遅いレッドクレーコートでの戦いでは、いつでも大坂が優位に立てると限らない。

大坂にとって大きな壁となって立ち塞がるのが、今季新女王となり、全仏オープンでの優勝候補筆頭のイガ・シフィオンテク(ポーランド/WTAランキング1位)だ。目下ツアー5大会連続優勝で、マッチ28連勝中だ。体幹がしっかりとしているうえ、走力にも長けていて、もともとセンスのあるショットにも磨きがかかった。まだ20歳だが、メンタルも強く、2020年大会以来、全仏オープン2度目の優勝を成し遂げるかもしれない。

ただ、女子テニスでは、ここ数年混戦状態が続いており、誰が活躍し、誰が優勝するかは予測不能の部分もある。そんな中で、「より良いプレーヤー、より良い人間になるために、自分自身をプッシュし続けたい」と語る大坂が、ローラン・ギャロスで自己ベストの成績を残せるのか注目したい。

※WTA世界ランキングは5月16日付け

文=神 仁司 Hitoshi Ko
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