「献身・誠実・尊重」。鹿島アントラーズを形作る“ジーコスピリット”とは。

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

 ジーコが2度目の現役引退を考えていたときのことだ。ときは1994年までさかのぼる。
 それを知ったジーコの実兄エドゥは、当時の通訳だった鈴木國弘を呼んだ。
「スズキ、ボードにポルトガル語と日本語でジーコスピリットを書くんだ。それをロッカールームに掲げるべきだ」
 その命を受けた鈴木は、スタッフとともに実行に移した。エドゥが長い時間をともにした実弟ジーコのスピリットを、シンプルに一枚の絵として落とし込んだ。
 エドゥは、当時そう思い至った意図についてこう語る。
「世代が変わっても関係ない。残さないといけないものだと思ったんだ。どんなに世代が変わろうとも、変わってはいけない根本、世代から世代へと受け継ぐべきものだと考えたんだ。日本において、ジーコは“サッカーの神様”だよね? 神様がお手本として見せたこと。普段から選手はどういう姿勢をもって振る舞うべきか。極めて高いチームへの意識、そして高いプロ意識。そのお手本をジーコは示したんだ。そのスピリットの価値は計り知れないものだ。それをアントラーズの象徴として掲げよう。そう思ったんだ」

 献身・誠実・尊重。

 アントラーズファミリーという言葉とともに、日本語とポルトガル語で構成されたそのビジュアルは、選手ロッカー前に掲げられることになった。
 あれから27年を経た今、かつては選手ロッカー前に、今年4月からは新設されたトップチーム施設のミーティングルーム内に掲示されている。アントラーズの歴史のなかで、時代は変わっても、変わらぬ景色のひとつだ。

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継承されるジーコスピリット

 アントラーズの育成組織からトップへ昇格した土居聖真、鈴木優磨、町田浩樹、沖悠哉は、今年2月に配信が始まった長編ドキュメンタリーシリーズ作品「FOOTBALL DREAM 鹿島アントラーズの栄光と苦悩」のインタビュー内で、ユース時代に学んだことを聞かれると、口をそろえた。

 「献身・誠実・尊重」。

 アントラーズアカデミーで学んだこと、そして今でも大切にしていること。2022年1月からユニオンS G(ベルギー)でプレーする町田浩樹はいう。
「アカデミーで育った選手であれば、誰もがすぐに出てくる言葉です。勝つために何が必要か。そう考えたときに戻る、原点となっています」
 今シーズンよりシント=トロイデンVV(ベルギー)から復帰した鈴木優磨は、小学生からスクールに入り、ジュニア、ジュニアユース、ユースからトップ昇格と、生粋のアカデミー選手と言える存在だ。自己犠牲をいとわないプレーをもとに、今のアントラーズで圧倒的存在感を発揮している。
「正直、小さい頃はよく分かっていなかったけれど、ちゃんと本当の意味で理解し始めたのは高校生くらいだったと思います。これはサッカーのことだけに限らず、どの世界でも大事だなと思うし、ジーコさんがアントラーズに植え付けた言葉で、僕にとっても重要な言葉です。いつも胸に刻んでいます」
 アカデミーで浸透した考えは、当然トップチームで培われる。
 1991年、ジーコが来日した当初から薫陶を受け、ともにアントラーズを作り上げた鈴木満フットボールアドバイザーはこう語る。
「伝統と一言でいっても、なかなか見えないところがあります。ただ、ジーコスピリットというアントラーズのフィロソフィーともいえる意識の持ち方が、あの三つの言葉に集約されている。その上で、言葉だけではない“勝ちへのこだわり”であったり、アントラーズファミリーとして、“一体感を持ってクラブとして戦う”ということを大事にしてきました。“すべては勝利のために”というクラブとしてのスローガンもそう。その原点となるものが、ジーコスピリットなのです」

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ジーコが思う、アントラーズの未来への継承

 いつもジーコがアントラーズに関わるすべての人間に求める姿がある。

 「プロフェッショナルであれ」

 その理由はシンプルだ。
「まずクラブの人間は、どの部署であっても、プロフェッショナルの仕事ができなければなりません。そうでなければ、応援してくれるサポーターの皆さんに認めてもらえない。サポーターに認めてもらうことで、応援してもらい、それはチームに大きな力を与えるのです」
 クラブに息づくジーコスピリットについて、「決して私が言い始めたことではないんだ」と照れながらも、その意義については認めるところだ。
「変わらないこと、変える必要のないこと。それはジーコスピリットといわれる『献身・誠実・尊重』でしょう。ただ、これはアントラーズに限らず、組織で働く上でやらないといけない、ごく当たり前のことだと思っています」
 クラブ創設30年という節目を経て、2022年からはクラブ初のスイス人監督となるレネ・ヴァイラー監督を迎え、新たな時代を築くための挑戦が始まったばかりだ。根底となるスピリットは変えずに、変わりゆく時代にどう対応していくのか。ジーコはこう考えている。
「その上で、まず今後はそういった言葉を伝える人が必要になると思っています。これまでともに過ごした仲間たちが、クラブ内で話をしてくれる機会もあるでしょう。培ってきた経験を伝え続けること。今後、そういったことができる役割の人が重要になってくるのではないかと思っています。そして時代の進歩とともに生まれるツールもあるし、新たな考えやアイデアが必要になるものです。時代に合わせたマーケティング活動を進めることで、そこで得た収益がフットボールにつながるものだと考えて取り組まないといけません」
 時代は変われど、アントラーズとして大事にしなければならないこと。ジーコの言葉はとてもシンプルだ。

「アントラーズはトップクラブであることを忘れてはいけません。このクラブの歴史に刻むために。一人ひとりが1日1日でベストを尽くさないといけないのです」

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著者プロフィール

鹿島アントラーズ

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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