早大アイスホッケー 華やかな早慶戦 慶大に危なげなく勝利

チーム・協会

【シュートを放つ林幹【早稲田スポーツ新聞会】】

【早稲田スポーツ新聞会】記事 田島璃子、写真 吉本朱里、松平将太郎、芦沢拓海、横山勝興

慶大の主催で行われる春季早慶定期戦(春季早慶戦)。2年ぶりにフルキャパシティで行われ、応援部の応援の中、伝統の一戦が繰り広げられた。大OB戦、OB戦、高校戦を終えて温まった会場で行われた現役戦は、第1ピリオド(P)からリードを広げ、6ー1と不安なく勝利。ピリオド間にはスケート部フィギュア部門の川畑和愛(社3=沖縄・N)のエキシビションも行われ、華やかな雰囲気で、余韻の残る1日となった。

※開会式、閉会式、大OB戦、OB戦、高校戦については現役戦の下に記載しております。また、フィギュア部門のエキシビションについては別途記事を公開予定です。
 第1P、早大のペースで試合は始まった。序盤から、慶大らしい強い気持ちのこもったチェックが見られるが、早大は落ち着いて対応。キルプレーを守り切ると、開始4分42秒、FW鎌田悠希(スポ3=北海道・駒大苫小牧)のパスを受けたFW大塚鵬蓉(スポ3=埼玉栄)がブルーライン付近からスラップショットを放つ。パックはゴールに吸い込まれた。冷静な一撃で早大が先制し、会場にどよめきが起こる。その後、2人差の時間を含むパワープレーが長く続き、早大は何度もゴールを試みるが、得点にはつながらない。そして16分54秒、アタッキングゾーンでパックを奪うと、FW上山響平(スポ2=北海道・駒大苫小牧)が正確なコースでゴールを決める。今シーズンからエースナンバーを引き継いではじめての得点に、思わず拳を突き上げた。さらに19分29秒、キルプレーの場面でパスをカットし、フリーの状態のFW林幹汰(文2=東京・早実)が落ち着いてゴール。林幹も久しぶりの得点となり、GK千葉琉矢(スポ3=北海道・武修館)と飛び上がりながら肩をぶつけて喜んだ。早大は第1Pで3点をリードし、余裕を持って第2Pへ。

シュートを放つ林幹 【早稲田スポーツ新聞会】

しかし、慶大も得点のチャンスを待ちわびていた。第2P、「パスを繋いでかっこよく決めようというところが流れを悪くした」と内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵)が言うように、早大は、パワープレーの場面もなかなか得点できない。さらに、慶大に立て続けにシュートを打たれることも増え、ついに18分06秒、GK千葉が倒れ込んで払おうとしたパックがわずかにこぼれ、ゴールに押し込まれた。慶大の1点目に、会場は大いに盛り上がる。しかし早大はすぐさま逆襲。わずか24秒後にFW鎌田が相手GKの足の間を通し、ゴール。慶大に流れを渡さずに第2Pを終え、スコアは4ー1となった。

得点する鎌田 【早稲田スポーツ新聞会】

早大スケート部フィギュア部門、川畑の美しいエキシビションを挟んで、第3Pが始まった。3点のリードがある早大は冷静に試合を展開する。4分50秒、FW大塚が放ったシュートは慶大DFの隙間をくぐり、ゴールへ。追加点を挙げ、勝利へと近づいていく。11分36秒、早大の計2選手がペナルティを取られ、パワープレーのチャンスを迎えた慶大はタイムアウトを要求。しかし流れは早大にあるままだった。キルプレーを守りきり、さらに19分34秒、終了間際にDF有賀峻(社2=北海道・白樺学園)のシュートがゴールに突き刺さる。普段はDFとして守備に徹し、自身が得点することは少ない有賀。しゃがみ込んで大きくその喜びを表現した。早大は、試合終了まで攻撃の手を緩めない。そんな中、FW林風汰(教4=東京・早実)に得点のチャンスが。数的有利な状態でゴールまでパックを運んだFW林風が放ったゴールは惜しくも決まらなかったが、チームから愛される4年生のチャンスに、ベンチはこの日1番の盛り上がりを見せた。試合終了のブザーが鳴り、早大の勝利が確定すると、選手は安堵の表情を浮かべ、その喜びを噛み締めた。

6点目を放つ有賀 【早稲田スポーツ新聞会】

パワープレーのチャンスは得点に変えられなかったものの、早慶戦の独特な雰囲気を味方に付け、安定した勝利を収めた早大。GK千葉の好セーブや得点源となっている1セット目の活躍のほか、ここまでの公式戦では得点のなかった選手のゴールも目立ち、チーム全体の底力を見せつけた。春季早慶戦をもってチームを離れるソ・ダソムS&Cコーチ(令4スポ院卒)など、スタッフに向けても、良いかたちでの締めくくりとなった。

☆開会式・閉会式

アイスホッケーの早慶戦は、豪華な開会式や閉会式も見どころの一つだ。現役戦の練習後に行われた開会式は、両校の選手が一人ずつ紹介され、観客の声援に応えた。部の旗を持ってリンクを回る旗手は、FW清水朝陽(社1=北海道・武修館)。緊張した面持ちだったが、試合の時と同様、堂々と務めあげた。

旗手を務める清水 【早稲田スポーツ新聞会】

閉会式では、優勝杯の授与や各校の校歌を歌ったあと、大会MVP賞が発表された。勝利校の早大の内藤監督が選んだMVP受賞者は、出場機会に恵まれなかった昨シーズンから大きく飛躍し、2セット目として早大の少ないDFを支えているDF松下剛(商3=東京・早実)。主務としても早慶戦の運営に尽力していたDF松下の受賞に、となりにいたFW大塚をはじめ、チーム全員が満面の笑みで喜んだ。DF松下は「他の人かなと思ってびっくり」と、驚きの表情を隠せなかったが、徐々に笑顔に。閉会式終了後は集合写真の撮影を行い、さらに、ソ・ダソムS&Cコーチ(令4スポ院卒)に、チームを代表してFW木綿宏太(スポ4=北海道・駒大苫小牧)から花束が渡された。ソ・ダソムS&Cコーチは幸せそうな表情を浮かべていた。

ホッケー部門の選手たち 【早稲田スポーツ新聞会】

☆大OB戦、OB戦、高校戦

現役戦の前には、50歳以上のOBが戦う大OB戦、50歳未満のOBが戦うOB戦、早実高と慶応高が戦う高校戦が行われる。大OB戦には中野浩一元監督(昭54卒)や工藤哲也前監督(昭63社卒)が出場し、慶大に差をつけて打ち破った。OB戦は山崎浩市コーチ(平11社卒=北海道・釧路江南)を含む5人に加え、大OB戦にも出場したOBが2試合連続で氷上に立った。GKはFW仲見颯太(スポ2=北海道・苫小牧東)の父親である仲見真樹氏(平6卒)が守ったが、人数の多い慶大に立て続けに得点を許し、敗北となった。
高校戦は、高校生ながらU20の日本代表に選出されているFW笹沼葵主将やDF松下剛(商3=東京・早実)の弟であるDF松下仁を筆頭に、個のスキルを生かし、8人という少ない人数で戦い抜いた。終盤は互いに点を取り合う試合展開となり、8ー8の引き分けで試合は終了。2セットを組めず、休憩が十分に取れない中、足をつりながらも必死にパックを追い続けた早実高の選手たち、そして慶応高の選手たちに、会場からは温かい拍手が送られた。

早実高の選手たち 【早稲田スポーツ新聞会】

コメント

内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵)
――2年ぶりのフルキャパシティでの開催となりました
運営している主務、副務、マネジャー、あと両方の大学の理解によって、久しぶりに満員のお客さんの中で早慶戦を開催することができました。各方面のご理解ご協力に、チーム全員で感謝したいと思います。今、ミーティングが終わったばかりですが、それはみんな言っていたことです。この状況の中でフルキャパシティでできることはなかなかないことなので。これで感染者が出なければまた次に。そういう小さな実績を一個一個積み上げていきたいなと思います。
――試合は差をつけて危なげなく勝利できました
第1Pが重要だったと思います。試合の入りが非常に良かったので。シュートから入れたことが良かったですね。シュートを打ってリバウンドを叩きに行こうというところだったんですが、最初のシュートで決めることができたので、ベンチも落ち着いてゲームを進めることができました。
第2Pはパスを繋いでなんとかかっこよく決めようというところがあったので、それが流れを悪くして、結局失点してしまうということになりました。
第3Pはもう一度第1Pに戻して、シュートから入ろうということで。ちょっと点数が入って、良いところと悪いところが両方出た試合でしたね。
――MVPにはDF松下剛(商3=東京・早実)選手を選出されました
彼は今シーズン非常によくやってくれています。私はチームの監督として、「チームのために」やっているプレーヤというところを考えた時、彼はこの3カ月間、非常にチームのためにプレーしてくれました。反則も非常に少なく、かといってぬるいプレーじゃなく厳しいチェックも、完璧とはいいませんけども、やろうという強い意志を体で表現したので。期待を込めて、MVPを着けるにふさわしいかなということで選びました。
――ここまでの春のシーズンを振り返っていかがですか
練習試合を含めて10試合ぐらいやっていますが、上位のチームとも、同じような、今日のような慶大ともやって、自分たちが今どこにいるのかということが大体わかりました。今選手にも言ったんですが、「下を見て練習するのか、上を見て練習するのか」と聞いたらキャプテン(DF務台慎太郎、スポ4=北海道・駒大苫小牧)は「上を見て練習する」と言ってくれたので、頼もしく思います。ただ、気持ちだけでは勝てないのは間違いない事実です。中央にはランニングタイムを味わわされましたし、明治にはこてんぱんにやられました。それを埋めるにはそれなりのことをしなければいけないです。明日から1週間のオフを挟んで、陸トレ機関に入りますが、「彼らに勝つ」ということを前提にした練習をやってくれというオーダーはしました。やっぱりランニングタイムは恥ずかしいのでね。優勝を目指すチームとしてふさわしい、いいところ、今ある差をどれだけ縮められるかという3カ月にしてほしいなとオーダーしました。
務台慎太郎主将(スポ4=北海道・駒大苫小牧)
――無事、連勝を伸ばすことができましたが、試合を振り返っていかがですか
まず春の課題を踏まえて、自分たちの流れが良い時間にできたホッケーを今日は継続してやっていこうということを試合前から言っていました。(今日は)そのような時間が多かったですし、まだまだな部分もあったのですが、すごく勝ちにつながるホッケーをできたのではないかなと思います。
――MVPには松下選手が選ばれましたが
昨年、彼はベンチにも入ってなかったのですが、今年はすごく飛躍したと思います。これからも頑張ってほしいですし、すごく頼りがいのある上級生になったなと思うので、どんどん活躍していってほしいです。
――応援部や会場の応援は力になりましたか
応援がある早慶戦が、(自分は)一年生のとき以来なので、ここまで盛り上がる舞台はやはり素晴らしいものだなと改めて感じました。
――陸トレ期間の意気込みをお願いします
しばらく氷上の練習というのもなくなりますし、モチベーションを保つのがすごく難しい期間になると思うのですが、一つ一つ目の前の課題を乗り越えて、自分自身を追い込んで成長させていくことがこの陸トレ期間の課題かなと思います。選手一同陸トレ期間に全力で臨みたいなと思います。
GK千葉琉矢(スポ3=北海道・武修館)
――試合の結果を振り返って、いかがですか
最初、第1Pで3点取れたので、チームの雰囲気的にはちょっと浮ついていて。それで1点返されて苦しい状況が続いたんですが、そこから(失点を)0に抑えることができて、かつ点差も開けたので、結果としては良かったのかなと思います。
――ご自身のプレーついてはいかがですか
失点したシーンは判断をミスしたなというところがあったんですが、キルプレーでも抑えられて、良かったんじゃないかなと思います。
――新しい髪型は気合の証ですか
そうですね(笑)。早慶戦に向けて、FW林幹汰(文2=東京・早実)と一緒に、「パーマかけよう」っていって、パーマとフェードを入れてきました。
――応援部の応援は力になりましたか
めちゃめちゃなりました。応援部好きなんで。大学に入る前に、めちゃめちゃ応援部の動画を見ていて。Youtubeで。こういう動き(リーダーの動き)をずっとしていたので、応援部すごい好きです。
DF松下剛(商3=東京・早実)
――試合全体を振り返っていかがですか
第1Pは自分たちの思うようなことができて。第2Pは間延びして、あんまり上手くできていなくて。第3Pで点差を広げることができたんですが、それを3ピリオド通してできれば、夏以降につながるんじゃないかなと思います。
――MVPに選ばれることは期待していましたか
いや、本当にもうびっくりで。最初、違う人かなと。背番号が20で止まったので、29とか、他の人かなと思ってびっくりしました。
――MVPに選ばれて、今の心境は
春は不甲斐ない結果だったので、そこは上位に秋とインカレで優勝を狙えるようにしたいです。あとは、MVPをもらっちゃったので、主務の仕事を頑張らないといけないし、ホッケー面でもちゃんとチームに貢献しないといけないなという自覚が強まりました。
――副賞(湧永製薬の製品1年分)の使い道は決まっていますか
自分一人で消費するのは難しいと思うので、チームのみんなで分け合って、チームに還元したいと思います。
――高校戦に出場された弟さん(松下仁選手)や後輩たちの活躍はご覧になりましたか
人数が少ない中ですごく頑張っていて。自分たちの時は全然慶応には勝てなかったので。冬は勝っていたり、今日は引き分けでしたが、うまくやれていて良かったなと思います。
――陸トレ期間の意気込みをお願いします
陸トレは本当に嫌いなのですが、MVPもらったので、ちゃんと打ち込めるように頑張ります。
MG杉林歩紀(国教3=埼玉・早大本庄)
――無事に早慶戦を開催できた今の心境を聞かせてください
とりあえずフルキャパシティで開催できたことと、応援部を入れられたこと。また自分にとってはじめてのことばかりだったんですが、今終えられて一安心しています。
――常に会場を駆け回っていらっしゃいましたが、試合を見る余裕はありましたか
選手が怪我しないでほしいなということは思いながら、プレーの細かいところまでは見られていないかもしれないんですけど、他のことに対応しながら頑張っていました。
――その不安を打ち消すような勝利で、安心でしたね
はい(笑)!
――今日の経験を踏まえ、今後のマネジャー業への意気込みをお願いします
これからも、自分にとってはあまり経験したことのないことがたくさんあると思います。自分がわからないこととかも、一つ一つ一緒に、後輩に共有しつつ、協力してやっていければと思います。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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