「歴史を重ねて成長する」NTTリーグワン2022第16節試合前コラム

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【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

挑戦者として最終節を戦うスピアーズ

初年度となるリーグワンもいよいよ最終節となる。
第16節は開幕戦と同カードパナソニックワイルドナイツと対戦。新しいリーグの幕開の舞台として、注目されていた一戦だったがまさかの二日前の中止。その後、相次ぐ他チーム試合の中止があった本大会を振り返れば、納得できる部分もあるものの、その衝撃は大きなものだった。

しかし試合が重ねられてみると、改めてこの対戦が開幕戦に相応するカードであったことは、ここまでの戦績が物語る。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、前節の第15節までに13戦中10勝3敗。(開幕戦と第6節が中止)

対する埼玉パナソニックワイルドナイツは、第3節から無傷の13連勝(第1節、第2節が中止)。

互いが所属するカンファレンスA内の順位においても、上位1位と2位の対決となる。

開幕戦として選ばれた期待と実力を、13試合の戦績を通して示してきた両者。

中止試合の影響で、順位としてはクボタスピアーズ船橋・東京ベイが総合順位2位で、ワイルドナイツの3位よりも上に位置するが、チーム内外問わず、だれもがスピアーズが挑戦者であることを疑わないだろう。

開幕戦が中止となり、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの初戦は第2節のシャイニングアークス戦だった 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

15年ぶりの勝利を目指す

リーグワン前身のトップリーグ時代では優勝5回、日本選手権では連覇含む6回の優勝経験を誇るワイルドナイツ。
ディフェンディングチャンピオンというよりも、トップリーグを象徴する王者チームという風格の相手に対し、スピアーズは過去公式戦では2006年以来公式戦では勝利できていない。

約15年間勝てていない相手だが、太刀打ちできない相手かと言われれば、そんなことはない。
特に2016年フラン・ルディケヘッドコーチ、立川理道キャプテン体制後は、肉薄した試合も少なくない。


2016年のワイルドナイツが不敗神話を築いた太田市運動公園陸上競技場で行われた試合では、前半6点差で折り返すと、後半キックオフ直後に先制トライで2点差まで詰め寄った。直後にワイルドナイツにレッドカードが出され、残り36分間を数的有利な状況で戦うスピアーズに流れが向いたかと思われた。だが、その優勢を活かせず、勝負所で逆に加点され、最終スコア25-34で敗戦となった。

トップリーグ2016-2017第10節。リザーブとして地元群馬でプレーした高橋選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

また,2017年から2020年の3シーズン連続となった開幕戦での対戦も記憶に新しい。
特に2018年8月31日に行われた夏の大阪での試合は、凄まじいものだった。
蒸し暑い大阪の夜7時30分にキックオフ。スピアーズは終始、激しいブレイクダウンとモールの密集戦で相手に圧をかけ続ける。対するワイルドナイツも固いディフェンスで応戦。
前半はスピアーズ1トライ、ワイルドナイツ2トライの5-15で折り返し。後半は、合谷選手が飛距離もあるゴールキックを後半10分までに2本決めて11-15。
その後、試合終了間際まで30分間以上スコアボードは動かなかった。

この試合フルバックで出場した合谷選手はキッカーとしても正確なキックで相手を追い詰めた 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

ラスト1プレーで逆転トライを信じて、相手ゴール前に迫り続けた全員のプレーは果敢だった。そして、ゴールライン残り数十センチが、ここまで遠いと思った試合はないはずだ。後半は無失点、現在と同様のコツコツと攻める連続攻撃と、粘り強いディフェンスで相手を追い詰めたプレーは、点差以上にチームの成長を感じるものだった。勝てる試合だった、そんな手応えがあるからこそ、選手たちの落胆した姿が印象的だった。

トップリーグ2018-2019開幕戦記者会見。立川キャプテンは「勝てた試合を落としてしまった。相手もミスはしたが勝ちきれなかったのは相手の強さ。もう一度、良いチームにして戦いたい。」とコメント 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

同じシーズンの1月に行われた対戦はさらに点差は詰まった。最終スコアは21-24の3点差。
スクラムで相手を押し込み、千葉選手の強さが爆発した。これまで試合出場機会が少なかった選手たちが躍動し、秩父宮の観客席を沸かせた。
前半は7-7のロースコアゲーム。後半になるとスコアが動き始め、相手が2連続トライ。スピアーズを負けじと後半20分過ぎに2トライを返し、後半29分まで21-21の同点と迫ったが、ペナルティゴールで勝ち越され、敗戦となってしまった。だが、最後まで同点ではなく、逆転するためにトライを選択し続けた姿勢は、このシーズンのラストマッチにふさわしいものだった。

トップリーグ2018-2019カップ戦順位決定トーナメントでトライを奪いにいく千葉選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

試合を重ねながら成長する

過去の試合を見ると、悔しい試合が記憶に残るこの対戦。
スピアーズはその度に、それを成長をとらえてここまできた。

公式戦での対戦は2年4か月ぶりの対戦となる両者。
スピアーズにとっては、最終節で試合することができることも勝利を引き寄せる要因だろう。
それは今シーズンのスピアーズが、試合ごとに成長している点にある。

これまでのシーズンで安定したパフォーマンスを発揮してきた選手たち加え、オペティ選手や根塚選手といった若い選手たちがインパクトを与える。
これに加え、前節では揃ってトライも奪った4月入団の木田選手とハラトア選手の活躍も、勝利を引き寄せるXファクター的要素として楽しみな点だ。

またこれまでのシーズンで、ワイルドナイツとの悔しい試合を見てきた生え抜きの中堅選手たちである谷口選手や千葉選手たちといった選手たちが、自らの強みを活かして飛躍している点も見逃せない。

第7節にデビューし、ここまで3トライを奪う根塚 洸雅選手は第16節では14番で先発 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

ハラトア 選手はここまで2試合出場し、センターで攻守で存在感を発揮したプレーを見せる 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

谷口選手は第13節では4トライを決め、プレイヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれる活躍を見せる 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

こうしたベテラン〜若手まで、それぞれが役割を全うしつつ個性を活かした選手力。
そして、選手たちが入れ替わっても一体感を保ち続けるチーム力もスピアーズの魅力。特に今季は、試合中の修正力が高いことが顕著に表れている。

好例は、第14節の神戸スティーラーズ戦。
スピアーズは前半スコア10-19のビハインドから、後半30点を奪い、逆転勝利を収めた。その要因として、ハーフタイム中の修正がある。
立川キャプテンはハーフタイム中「(第12節の)イーグルス戦のようにミスを続けないようにしようとチームに伝えた。」と、敗戦から学び、同じ轍は踏まないようチームを鼓舞した。

こうした試合中での修正力は、プレーが止まる毎にハドル(円陣)を組み、深呼吸をし、細かいコミュケーションを行うチーム文化や、リーダー陣の適格な助言と、チームとしてそれを遂行できる日々の鍛錬が成せるものと言える。

練習中、ハドルを組んで深呼吸する選手たち 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

この最終節に至るまで、試合ごとシーズンごとの歴史を重ねる度に学び、成長してきたスピアーズ。

リーグ名も変わり、出場する選手たちが違っても、その踏んできたプロセスの数は、チームをより強く成熟したものにしてくれる。

チームのスローガンは「NextLevel」
相手は、ワイルドナイツ。
スピアーズの次のレベルを示す相手として、これ以上の相手はいない。
熊谷の土曜の夜、新たなステージに成長したチームの姿に期待したい。


文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 広報担当 岩爪航
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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