昨年に続いて阪神開催となるマイラーズCを展望

JRA-VAN
チーム・協会

【2021/2/7 東京11R 東京新聞杯(G3) 1着 10番 カラテ】

変則日程の影響もあり、過去2年とも当週日曜のレース分析ではフローラSを取り上げている。そこで今回はマイラーズCを紹介したい。昨年に続く阪神開催となるため、コース適性に関わるデータは使いづらい。そこで、過去10年のうち京都開催(12〜20年)の9年分をもとに、昨年の結果と照らし合わせて、阪神にも傾向が引き継がれているかどうかを確認していきたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

人気別成績(12〜20年)

■表1 【人気別成績(12〜20年)】

表1は人気別成績(京都開催の12〜20年。表2〜6も同様)。1番人気は2勝で、勝った2頭の単勝オッズは1.3倍、1.6倍と、かなりの人気馬に限られる。単勝2倍以上では勝ち切れず、1番人気の信頼性はそこまで高くなさそうだ。また、2番人気の数字も水準に満たず、どちらかといえば不振。とはいえ、10番人気以下は3着が1回あるだけと極端な人気薄も苦しく、ひとケタ人気には収まっておきたい。単勝オッズでいえば、延べ27頭の1〜3着馬のうち26頭は35倍以下で、ここまでがひとまずの圏内とみなせそうだ。

阪神開催の昨年は、2番人気のケイデンスコールが1着、3番人気のアルジャンナが2着、9番人気のカイザーミノルが3着。この3頭のうち、もっとも人気がないカイザーミノルの単勝オッズは27.6倍だった。また、1番人気ではあるが単勝2.7倍のエアロロノアが5着という結果からも、京都開催時の人気傾向を概ね踏襲する決着と言えるのではないか。

年齢別成績(12〜20年)

■表2 【年齢別成績(12〜20年)】

表2は年齢別成績。1着の内訳は、5歳が4勝、4歳が3勝で、6歳と7歳が1勝ずつ。8歳は2着が2回あるが、1着はなかった。6歳以上だとノーチャンスとまでは言えないが、最良の成績を収めているのは5歳、続いて4歳とみていいのではないか。

昨年は5歳馬が1、3着、4歳馬が2着に入り、京都開催の傾向と変わらない決着だった。

前走着順別成績(12〜20年)

■表3 【前走着順別成績(12〜20年)】

表3は前走着順別成績。明らかに数字を落とすのは前走10着以下。また、前走6〜9着も複勝率はそこまで悪くないが、勝率、連対率は振るわない。馬連などで軸馬に据えるタイプの馬に関しては前走1〜5着には入っておきたい

阪神開催の昨年も、1着のケイデンスコールが前走2着で、2着のアルジャンナ、3着のカイザーミノルはいずれも前走5着。3頭とも京都開催時の基準を満たしていた。

前走人気別成績(12〜20年)

■表4 【前走人気別成績(12〜20年)】

※前走の集計対象は国内戦のみ

表4は前走人気別成績(国内戦のみ)。比較的明快な傾向が出ており、前走4番人気(以内)と5番人気(以下)のあいだに好走率の大きな溝が横たわっている。それぞれ合算した成績を出すと、前走1〜4番人気は【7.7.7.36】、勝率12.3%、複勝率36.8%、単勝回収率90%、複勝回収率85%。しかし、前走5番人気以下は【1.2.1.65】、勝率1.4%、複勝率5.8%、単勝回収率10%、複勝回収率26%と大幅にダウン。特に前走10番人気以下は35走で3着1回のみと苦しいようだ。

昨年1着のケイデンスコールは前走5番人気で、京都時のデータを覆したかたち。2着のアルジャンナは前走2番人気、3着のカイザーミノルは前走3番人気で、前走で人気薄に甘んじていた馬が苦戦という傾向は変わらなかった。

前走クラス別成績(12〜20年)

■表5 【前走クラス別成績(12〜20年)】

※前走の集計対象は中央戦のみ

表5は前走クラス別成績(中央戦のみ)。格の高い順に見ていくと、前走G1組は連対例がなく、思わぬ不振に。最多の5勝を挙げているのは前走G2組。ただし、2着は1回、3着はゼロという極端な傾向が出ている点には注意したい。1〜3着の合計が最多なのは前走G3組だが、1着は1回だけで好走の大半を2、3着が占める。前走リステッド競走およびオープン特別の出走馬は、合わせて【2.4.0.30】、勝率5.6%、複勝率16.7%、単勝回収率80%、複勝回収率56%という成績で、前走G2やG3に比べて3着以内に入る確率は少し下がる。そして、前走条件戦は好走例なし。全体的な傾向としては、前走G1を除き、格の高いレースに出走した馬ほど結果を出しやすい傾向が見て取れる。

阪神開催の昨年も、前走G2のケイデンスコールが1着、前走リステッド競走のアルジャンナが2着、前走G3のカイザーミノルが3着と、京都の傾向を引き継いだ結果となった。

前走レース別成績(12〜20年)

■表6 【前走レース別成績(12〜20年)】

※好走例のある前走レースのみ。リステッド競走はオープン特別時代も合算

表6は前走レース別成績。前走の選択肢は多岐にわたるが、出走例が10走以上あるのは3つ。そのなかでもっとも相性がいいのは【0.2.4.9】の東京新聞杯で、1着馬こそ出ていないが、2、3着に来る確率は高い。対して、出走例が最多のダービー卿CTは【0.0.1.20】、六甲Sも【0.2.0.15】と、どちらも振るわない。ほかに、勝ち馬を2頭ずつ出した中山記念と阪神Cの両G2から臨む馬がいれば注目してみたい。

昨年は前走中山記念のケイデンスコールが1着。阪神開催となっても相性のよさを披露している。2着アルジャンナは前走洛陽Sで、このレースも【1.1.0.3】とリステッド競走のなかでは結果を出しているほうだ。なお、通常は京都の洛陽Sだが、昨年はマイラーズCと同じ阪神芝1600mでの開催。つまり、競馬場は替わったが、マイラーズCと同コースという条件が例年通りだったことは注目に値するかもしれない。3着カイザーミノルは前走オーシャンSで、これは京都開催では見られない新しいパターンだ。また、前走芝1200mの好走も京都ではなかった。昨年の1〜3着馬の前走に共通点があるとすれば、いずれも直線に急坂がある中山・阪神だったこと。1年の結果で判断するのは早計だが、阪神開催のマイラーズCでは少し気にかけてもいいのかもしれない。

【結論】

2022年マイラーズC登録馬

■表7 【2022年マイラーズC登録馬】

今年のマイラーズC登録馬は15頭。フルゲートは18頭で、全馬の出走が可能となっている。

さて、今回調べたデータでもっとも傾向が明確なのは、表4の項で述べた前走人気だろう。前走1〜4番人気か5番人気以下かで好走率の大きな差がついていた。ただし、昨年は前走5番人気のケイデンスコールが制したことを受け、今回は「前走1〜5番人気」を基準としたい。

また、前走着順も1〜5着と6着以下で差が見られることを表3の項で述べた。そこで、「前走1〜5番人気で1〜5着」に当てはまる馬を登録15頭のなかから探すと、5頭が条件を満たしている。

この5頭のうち、相性のよい前走レースという観点から注目したいのが、中山記念で4番人気2着だったカラテ。やや好走率の低い6歳馬という点は気になるが、全6勝中5勝を挙げている得意距離の芝1600mに戻るのも好材料と言えそうだ。

リステッド競走のなかで結果を出しているのが洛陽Sで、2番人気1着だったエアファンディタは見逃せない。また、六甲Sは例年の京都開催のマイラーズCだと振るわないが、今回は同コース。つまり、出走間隔を除けば洛陽Sと同じ条件になり、さすがに軽視できない。この六甲Sで4番人気1着だったのがエアロロノアで、1番人気に応えられなかった昨年の雪辱を期す。もちろん、六甲Sで2番人気2着のファルコニアにも注目。これら3頭は、いずれもマイラーズCで勝ち切りが多い5歳馬でもある。

もう1頭、前走の人気と着順を満たす馬にはソウルラッシュもいる。ただし前走が3勝クラスで、阪神開催の昨年を含めて前走条件戦の好走はない。

そのほか、好相性の東京新聞杯組にも触れておくべきだろう。ホウオウアマゾンは12着という前走着順は減点せざるをえないものの、前走3番人気で基準を満たすのは救い。アーリントンC勝ちの実績があるコースで巻き返しを狙いたい。ケイデンスコールは前走13番人気13着で前走人気・着順ともに苦しいが、データを覆しての連覇はなるだろうか。

文:出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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著者プロフィール

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