【3x3.EXE PREMIER 新規チームオーナーインタビュー】#2|ESDGZ OTAKI.EXE(千葉県大多喜町)~人口8,500人の小さな街を活性化しデュアルキャリアを通じて若者の人材育成も担う~

3x3.EXE PREMIER
チーム・協会

【©3x3.EXE PREMIER】

3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて10チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
第2回は、千葉県大多喜町をホームとするESDGZ OTAKI.EXE。人口8,500人の山あいの小さな街をホームタウンとした意図、チームが活動を通じて目指すものなどを久場 善博オーナーに語っていただきました。




ESDGZ OTAKI.EXEがホームとするのは、千葉県南部にある山あいの小さな街、大多喜町。
人口は8,576人と、3x3.EXE PREMIERのなかでもっとも小規模な街に本拠地を据え、今季から3x3.EXE PREMIERに参入する。

SDGs大多喜学園 【©3x3.EXE PREMIER】

チームの運営母体は、公営競技場の運営を行う株式会社JPFの子会社である、株式会社JPFagri。主に手掛ける事業は大多喜町の自然を活かした農林業やアウトドアアクティビティに関するもの。また町の廃校を活用し、子どもから大人まで自然の中で遊びながらSDGsを学ぶための拠点である、SDGs大多喜学園にも参画する。3x3に関しては、3x3.EXE PREMIERがスタートしたころから存在を知っていたと久場善博オーナーは言う。

「おそらく3x3.EXE PREMIERが始まった直後ぐらいだったと思いますが、ゼビオグループの方に別件でお会いする機会がありました。そこで、実はこういうリーグがスタートしていて、こんな仕組みになっているとのご説明を受けました。

我々JPFは地方自治体から委託を受けて、公営競技場の運営をしております。これは公営競技そのものの運営だけではなく、競技場という施設、コンテンツを使って、地域の活性化をする事業です。具体的には競技場を開放して、サイクルスポーツの普及拠点として子供向けのスクールやトップ選手を招待したレースイベントを開催したり、一般市民向けに夏祭り的なイベントをやったりと、いろんな活動をしています。それを10数年やってきていて、もうひとつ裾野を広げるコンテンツとして、いつか3x3のチームを持つことになるだろうなと、そのときに直感しました」

チーム創設が具現化するのに、ある人物との出会いが会った。

「きっかけはMINAKAMI TOWN.EXEの、大塚俊代表が声をかけてくれたことでした。うちの社員がみなかみ町で仕事をしていて、大塚代表と知り合う機会がありました。姉妹チームみたいなものを作りたいという構想があった大塚代表が、我々にチーム創設の提案をしてくれたことが始まりです」

MINAKAMI TOWN.EXEは、2018年から3x3.EXE PREMIERに参入したチーム。ホームタウンである群馬県みなかみ町は大塚代表の出身地で、過疎化と高齢化が進む町の活性と青少年育成を目的に活動する。この大塚代表の考えと行動に共感して、ESDGZ OTAKI.EXEが誕生した。

「いちばん興味を惹かれたのは、これはおそらくリーグのコンセプトでもあるかと思いますが、いわゆるデュアルキャリアです。これにすごく共感しまして、是非にと思いました。大多喜町も含めた過疎の町の課題は、いろいろとあります。そのなかで各地の自治体が、地域おこし協力隊という取り組みをやっています。大多喜町でもやっているのですが、なかなか定着しない。ここにデュアルキャリアの理念を持ち込めば、解決の一助になると思いました」

かりそめのホームではなく、ESDGZ OTAKI.EXEは大多喜町に根を下ろして活動する。

「廃校になった学校には体育館があって、バスケットボールのコートがあり、ここが練習拠点になります。選手たちは、平日は午後2〜3時くらいまで農作業。週末は暖かくなるとアウトドアアクティビティを利用されるお客さんが増えてきますので、そういった方々の対応をして、夕方から練習をする。そんなタイムテーブルで、毎日を過ごしています」

大多喜町特産のたけのこ出荷 【©3x3.EXE PREMIER】

まさに、デュアルキャリアを形成するのに理想的な環境だといえるだろう。久場オーナーが意外だったというのは、大多喜町に移住を希望する選手が多くいたこと。

「今回は外国人も含めて11名の選手と契約をしましたが、そのうちの6名が大多喜町への移住を希望しました。ちょっとこれは、予想外の反応でした。こんなにも移住をしてくれる選手がいるとは、思っていなかったですね。町もそれにはすごく驚いていて、22〜23歳くらいの人が転居してくるのは、実際のところはわかりませんが、10年以上もなかったのではないでしょうか。町の人はみんなすごく驚いているし、喜んでくれています。

ひとつの会社がちゃんと社員として雇用して、しかもバスケットボールの時間をしっかり確保してくれるというのが、選手たちにとってはかなり良い条件だったようです」

若い世代の流入が街に活気をもたらすと、大多喜町の人々は期待しているのだろう。実際にチーム結成からまだわずか、新規参入する3x3.EXE PREMIERの2022シーズンすら開幕していないが、早くもESDGZ OTAKI.EXEは大多喜町に受け入れられつつある。「これは余談ですが」と断ったうえで久場オーナーが明かしてくれたエピソードが、それを実証する。

「選手たちが練習を終えたあとに、近所の食堂で晩御飯を食べていたそうです。そうしたら地元の会社の社長だと名乗る方が、『キミたち、バスケットの選手だろう』って声をかけてきて、『大多喜町としては非常にいいことだし、歓迎している』みたいなこと言ってくれて、そこの食事代を全部ごちそうしてくれたそうです」

大多喜町 町長訪問(左端:久場 善博氏) 【©3x3.EXE PREMIER】

チームが掲げるコンセプトは複数あるが、その筆頭は“大多喜町のヒーローになる”。それゆえ選手選考の際には、バスケットボールの技術だけではなく、人間性も求めた。

「実はそれを、すごく重要視しています。彼らは若いのでまずは勝つことや、上位に行くことを目標としてあげます。だけど僕はトライアウトの場で『強いチームであることを、優先するつもりはない』、そして『本当に町に受け入れられて、このチームがあって良かったと町に評価してもらう。それは単に、勝つことだけじゃないでしょう』と彼らに告げました。強いから、それだけをもって受け入れられるわけじゃないよねって。

そういう意味では、人間性みたいなところも当然に求めていきます。選手たちはほとんどが新卒か、第2新卒ぐらいの年齢です。とくに、移住組の全員が20代前半です。その為、選手たちには、親会社のJPFの新入社員と一緒に入社研修を受けさせました。選手である前にJPFグループの社員として、常識ある社会人として、世の中に貢献できるような人物であることを望んでいます」

勝利至上主義ではないチームが目指す長期ビジョンは、“好循環”。

「チームの活動を通じて、好循環が生まれたらいいなと思います。というのは今いる選手は若いといいつつも、いずれは引退する年齢になります。実際にある選手は、お父様が経営コンサルタントをやっていて、自分もいずれは同じことを、できればスポーツ関係でやりたいと言っています。それはうちに残ってやるもよし、外に出てやるもよし。彼の次のキャリアに役立つことを、うちにいるあいだに培ってもらいたい。それがうまく循環していくと、次に同じようなことを目指して、また若い選手がチームに入ってくれる。それ以外にも、ある選手は引退したあと指導者としてチームに残るとか、あるいはチームマネジメントの役割として残るというような、そういう循環が生まれていくといいなと思います」

ESDGZ OTAKI.EXEが大多喜町で行う取り組みは、町おこしと同時に、若い世代の人材育成の側面も担う。ここで育った若者が、どんな成長を見せてくれるか楽しみだと久場オーナーは目を細める。

「若い人はときに、驚くくらいの成長を見せるんですよ。そういう姿を見るのも、すごく楽しみです。僕は人事のキャリアが長いものですから、新入社員を何百人と見て、迎えてきています。その経験から彼ら、彼女たちが、グンと伸びる瞬間を何度も見てきました。そんなものが、またここでも見られたらいいな。そんなことを、楽しみにしています」

(Text by カワサキマサシ)


※チーム、選手に関する情報や大会スケジュールは、公式ウェブサイトをご確認ください。
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著者プロフィール

3人制バスケットボール「3x3」の世界初グローバルリーグ『3x3.EXE PREMIER(スリーエックススリー・エグゼ・プレミア)』の公式アカウントです。 国内外100を超えるチームを擁する世界最大規模のリーグであり、3x3の新しい“文化”を創り、アーバンスポーツとして「新しいライフスタイル」の一つへと昇華させることを目指しています。

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