「これまでのパフォーマンスは悪くない。残り5試合でもチームのために全力を尽くす」アタアタ・モエアキオラ
【コベルコ神戸スティーラーズ】
スタッツを気にしなくなったらパフォーマンスが上がった
「シーズン当初は、スタッツを気にしていたんですが、パフォーマンスが上がらなくて。それで、第4節埼玉ワイルドナイツ戦からスタッツを気にしないようにしたんです。チームのために自分の仕事を全うしようと思ってプレーしていたら、自然とパフォーマンスが上がってきました」と振り返る。
好調の要因はほかにもある。2021年シーズン、活動を再開した日本代表メンバーから外れ、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチからはフィットネス不足を指摘された。メンバー落ちした悔しさから、オフシーズンは毎日のように灘浜グラウンドで走り込みを行い、体力面の強化に取り組んだ。チームが実施しているブロンコテスト(合計1200mを走る体力測定)では、5分40秒ほどだったのが、5分を切るほどになったという。
「昨シーズンまではフル出場した試合は、必ずといっていいほど、途中で足がつっていたんですが、今シーズンは1度だけ。開幕戦だけなんです」と成長を感じている。
さらに、今シーズンは、ディフェンスでの貢献も光る。
「周りとしっかりコミュニケーションを取れていることが大きいと思います。これまでと比べると、自分がどこにいけばいいのか明確になっています。あとは、タックルの精度をより高めたいですね」
開幕戦のSA浦安戦で、子どもの頃から憧れだったというイズラエル・フォラウのプレーを間近いに見て「すごい!」と感激したとか。「フォラウみたいな選手になりたいですが、無理なので、僕は僕のプレーを磨きます!」 【コベルコ神戸スティーラーズ】
タフな1週間を乗り越えられたのは、日本の皆さんのお陰
この日、日産スタジアムで第2節横浜キヤノンイーグルス戦が行われ、21対55のスコアで敗戦し開幕2連敗を喫した。
試合を終えた後、ロッカールームでスマートフォンを見てみるとニュージーランドに住む兄から火山の噴火と津波の発生を知らせる1本のメールが。
「びっくりしました。兄も家族と連絡が取れなくて、めちゃくちゃ心配でした」
家族と話ができたのは、事態発生から5日後。兄が間に入り、トンガの家族とモエアキオラを電話でつないだ。
「声を聞いて、ほっとしました」
最後にトンガを訪れたのは、ラグビーワールドカップ2019日本大会の後。高校時代は一度も帰らなかったそうだが、大学に進んでからは1年に2度は帰国し、大好きな家族と会っていた。しかしコロナ禍で海外への渡航がままならない状況となり、そんな中で起きた海底火山の噴火だった。
「家族と連絡がつかず精神的にタフな時間でしたが、乗り越えることができたのは、日本の皆さんからのあたたかい心遣いがあったから。感謝しています」
神戸で行われた第3節クボタスピアーズ船場・東京ベイ戦は、試合前にグラウンドでトンガ国旗が広げられ、被災地に向けて黙祷を捧げた。
「仲間やファンの皆さんの気持ちがうれしかったですし、トンガ国旗を見て感動しました。今シーズン初めて試合にも勝つこともできて、最高の1日になりました」
残り5試合では、全勝と個人的にはトライ王を狙う!
「みんなに期待していると言われますし、僕ももちろん出たいです!」
日本代表復帰に向けて自信のほどは?と問いかけると
「うーん、どうだろう、わかんないですね。だけど、今シーズンのパフォーマンスは悪くないです。今はチームに貢献することに集中しています」と返ってきた。
リーグワンの戦いもいよいよ大詰め。同じカンファレンスのチームとの2度目の対戦が待っている。
「残り5試合、チームの勝利のために良いパフォーマンスをして、全勝したい!個人的にはもう一度ハットトリックもしたいですね。トライ王を狙います!」
3月10日にチームに加入した南アフリカ代表のCTBルカニョ・アムが内側にいるのも心強い。「ルーク(アムのニックネーム)は強くて、うまくて、速い。コミュニケーションも取りやすいので、一緒にプレーしていて楽しいですね」と絶賛する。アムの日本デビューとなった第11節東芝ブレイブルーパス東京戦でも、アムとモエアキオラの絶妙なコンビネーションでトライを演出した。
1つでも上の順位を、そして、トライ王を目指して。モエアキオラは、最後まで全力で戦い続ける。
文/山本暁子(チームライター)
「WTBでもCTBでも試合に出られるなら、どちらでも構わない」と話す。ちなみに日本代表のCTBシオサイア・フィフィタはトンガカレッジの後輩。「一緒にワールドカップに出たいですね」と意気込む。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
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