【Inside Story】コベルコ神戸スティーラーズ 営業マーケティンググループ グループ長 平田貴博

チーム・協会

【コベルコ神戸スティーラーズ】

2022年1月、日本ラグビーのさらなる発展を目指して幕を開けた「NTTジャパンラグビーリーグワン」。新リーグでは各チームはホストゲームでの興行権を持ち、チケット販売やスポンサー獲得で収益向上を図ることとなった。それに伴い、コベルコ神戸スティーラーズを運営する神戸製鋼所は、支援体制を強化するため、従来の「ラグビー部支援室」を廃止し、「ラグビーセンター」を設置。ラグビーセンターは、「企画管理グループ」、「営業マーケティンググループ」、「チーム運営グループ」からなり、総勢28名で、チームの活動はもとより、リーグが打ち出す地域貢献や社会貢献、そして、収益向上のためのスポンサー営業などを行う。【Inside Story】では、熱き戦いの裏側で奔走するスタッフの奮闘ぶりをお届け。第1回は営業マーケティンググループのグループ長を務める平田貴博氏に登場していただいた。

再びラグビーに携わることになったきっかけは故・平尾誠二GM

 「引退した時は、もう一度ラグビーにかかわることになるとは思っていませんでしたね」
大きな体に人懐こい笑顔を浮かべながら、ひと言。
1974年生まれ、宮崎県出身。明治大学で連覇を経験し、1999年度入団。現役当時は、もちろん、といっては失礼だが、プロップだ。重さをいかしたスクラムで活躍し、公式戦30試合に出場。99年度、00年度には、全国社会人大会優勝、03年度にはトップリーグ初代チャンピオンに貢献した。
「1年目から試合にも出させてもらいましたし、すぐに優勝もできて、いい時に入団することができました」と振り返る。
怪我の影響で2005年度にユニフォームを脱ぎ、その後は、社業に専念。現役時代はエンジニアリング事業部門に所属していたが、引退後は、御崎公園球技場(現在のノエビアスタジアム神戸)を管理する神戸ウイングスタジアム株式会社へ出向した。そこで、ヴィッセル神戸やINAC神戸レオネッサ、サッカー日本代表戦などのスポーツの試合や神戸市の成人式といった文化イベントの運営をスタジアム側の立場で携わった。
「チームだけでなく、広告代理店、イベント業者、設営業者などと関わり、それぞれがどんな動きをしているのかが理解することができました」
スタジアムは神戸市が所有していることから自治体と向き合う機会もあったそうだ。

現役時代はスクラムの強さを武器に入団1年目から試合に出場した。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

5年間のスタジアム勤務の後は、三宮の再開発といった自治体の事業や企業のプロジェクトに対して、神戸製鋼グループの全製品を背負い営業活動を行う神戸プロジェクトグループに異動。やりがいを感じ業務に取り組んでいた2016年8月のある日、当時のラグビー部支援室部長から声をかけられた。
「ラグビー部で採用の担当をしてくれないか」
まさに青天の霹靂だった。
しかも、故・平尾誠二GMたっての希望だというではないか。
「現役時代、平尾さんから名前で呼ばれたことがないんですよ(笑)。嫌われていると思っていましたし、なんで僕なんだろうと」
“トンカツ”。
それが、平尾GMが名付けた平田氏のニックネーム。平尾GMなりの親しみを込めた呼び方だったのだろう。2000年には、平田氏は平尾ジャパンに招集されたこともある。
「試合には出させてもらっていましたが、清水(秀司)さんの控えでしたし、まずは神戸でレギュラーを取らないといけないと思っていましたから、日本代表に呼ばれても、全然嬉しくなかったんです。代表でも平尾さんによく怒られましたね」と回顧する。
「なんで僕がラグビー部に呼ばれたのだろうか…」
採用も担当する、大学時代の先輩で気心の知れた藤チームマネージャーに尋ねると「『平田しかいない』と平尾さんが言われているんだ」と具体的な理由は聞けなかった。
そうして、着任日、闘病されていた平尾GMへ電話をかける。
「電話はお出にならなかったんですが。平尾さんからメールが届いたんです」
そこには「藤との相乗効果を期待している」との1文が。
結局、理由は聞けぬまま、2016年10月20日、平尾GMは帰らぬ人となった。
「平尾さんからのメールは消せずにいますね。なんで呼ばれたのか理由はわからないですが、もらったメールがすべてなのかなと…。しんどい時や仕事に行き詰まった時は、平尾さんからのメールを読み返しています」

チームに関わるすべての人が笑顔になれるように…

 実は、平田氏は、大学卒業後、日本国土開発で1シーズン、プレーしている。しかし、会社の経営状況が悪化し、その煽りを受けてラグビー部は廃部に。そんな時に声をかけてくれたのが神戸製鋼所だった。
「社業に専念して、会社に恩返しして、今度はラグビーに恩返しする時期が来たのかなとも思いましたね」
そう腹を括り、採用担当として東奔西走する日々。それ以外にも、イベント運営や灘浜グラウンドの天然芝改修等にも携わった。また、神戸プロジェクトグループでの経験をいかして、新クラブハウス建設のリーダーとして陣頭指揮も。さらに、新リーグに向けて協会の会議等に顔を出すなど、多忙を極めた。
トップリーグからリーグワンへ。日本ラグビーの激動の時期。
「とんでもない時期にチームに戻ってきたなと思いましたね」
その言葉とは裏腹に、表情は充実感に満ちている。

今シーズンからラグビーセンターでスポンサー営業を行う。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

リーグワンでは、チームの事業性と社会性の向上が求められることになり、その中で平田氏は、営業マーケティンググループの一員としてスポンサー営業を行うことになった。
ちなみに、トップリーグ時代も、スポンサーから協賛していただいていたが、そのほとんどがトレーニングウェアやドリンク、航空券等の提供というサプライヤーとしての契約。
しかし、リーグワンでは、収益を追求しなくてはいけない。
ヴィッセル神戸、セレッソ大阪といったJリーグのチーム、同じく神戸市を拠点に活動するV.LEAGUEの久光スプリングス、B.LEAGUEの西宮ストークスなど、営業担当者からヒアリングし、情報を集めた。そこで、平田氏には1つの疑問が湧いた。
ラグビーは、コベルコ神戸スティーラーズは、マーケットの中で一体どれくらいの価値があるのだろうか。
「広告代理店の方と話をして、プロ野球やJリーグなど、ほかのスポーツと比較しながら、ユニフォームやスタジアムで出す看板等の広告の価値を算定しました。何しろはじめてのことだったので、金額設定が一番頭を悩ませたところでしたね」
スポンサーシップパッケージが決まり、営業活動を開始したのは、昨年10月。1月の開幕に向けて、これまでに培った人脈を活用し平田氏は営業を行い、大和ハウス工業様をはじめとする企業とスポンサー契約を締結。
平田氏は話す。
「契約を結んで終わりではありません。ここからが大事なんです。チームの成績以外のところで、コベルコ神戸スティーラーズに協賛して良かったと思っていただけるようにして、次のシーズンに繋げられるようにしないといけません。セールスだけでなく、スポンサー企業様との信頼関係を創出するのも営業担当の役割なんです」

ホストゲーム開催時にスポンサー企業の看板が正しく配置されているのかを確認するのも業務の1つ。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

試合の日は、昨年10月ラグビーセンターに異動してきた営業担当の女性スタッフと2人でホスト役としてスポンサー企業の方々の対応に当たる。
マンパワーが足りないと感じるが、
「Jリーグのチームには10人近く営業担当がいて、1人につき100社近くかかえているそうです。僕たちももっと頑張らないといけないですね」と自らを奮い立たす。
中期目標は「全体事業費の中でスポンサー収益を3、4割までもっていきたい」と平田氏。
産声をあげたばかりのリーグワン。
リーグとの調整をはじめ、大変なことも多いというが、「笑顔あふれる未来をともに」というチームが掲げるビジョンのよう、選手、スタッフ、ファン、そしてスポンサー企業、チームに関わるすべての人が笑顔になることを目指して奮闘する。
「もともとプロップですからね。チームを影で支えることには慣れているんですよ」
スポーツチームにおいて、スポンサー収入の占める割合は非常に高い。引退した時は冒頭の言葉の通り、ラグビーに再び関わることになるとは思わなかったけれど、現役時代同様に平田氏はスポンサー営業としてチームの屋台骨を支える。

文・写真/山本暁子(チームライター)

ホストゲーム開催時に設けられたスポンサー企業様の観戦席「エグゼクティブシート」に掲げられたエンブレムの前で。 【コベルコ神戸スティーラーズ】

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著者プロフィール

コベルコ神戸スティーラーズ

1928年創部。1988年にチームの愛称である「Steelers」の文字をジャージに採用し、人とボールがよく動く「クリエイティブラグビー」を信条に、1989年の日本選手権で初優勝を収める。以降、1995年まで連続で日本一を勝ち取り、歴代最多タイ記録となる7連覇を達成。2003年度より開幕したジャパンラグビートップリーグでは初代王者に輝き、2018年にはシーズン無敗で日本一に輝いた。 2022年から開幕する「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」では、チーム名を「コベルコ神戸スティーラーズ」とし参戦する。

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