「ブレイクダウン対談」NTTリーグワン2022 第10節試合前コラム
【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
ようこそ!ブレイクダウンの世界へ!
試合前日に公開する「試合前コラム」。
いつもこのコラム読むことで翌日の試合がより楽しめる内容をお届けしています。
今回は明日の試合の注目ポイントのひとつ「ブレイクダウン」について、ゲスト選手を交えた対談形式コラムとして掲載したいと思います。
ブレイクダウンが既に大好きな方も
「ブレイクダウンってなに!?」という方も
ぜひこちらのコラムで、ブレイクダウンの世界の住人になってください。
「ブレイクダウン」 ラグビーにおけるボールの争奪戦のこと。主にボールが地面にある「ラック」で両チームの選手がボールが奪い合えば、それはもうすでに「ブレイクダウン」 スピアーズの試合では、平均約85回のブレイクダウンが生じる。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
まずは田村玲一選手です
田村選手(以下、田村) 高校時代はブレイクダウンの狂犬と呼ばれていました。田村です。よろしくお願いします。
ー狂犬ですか?
田村 はい、高校のコーチに言われていました。いまはトイプードルかチワワですね。
―(そんな小型ではないような・・・)
続いて、岡山仙治選手です!
岡山選手(以下、岡山) ブレイクダウンから生まれてきた岡山です!本日はよろしくお願いします!
―ブレイクダウンから生まれたんですか?
岡山 「ブレイクダウンの群れ」の方がいいですか?
田村 「ブレイクダウンの森」の方がよくない?
岡山 「ブレイクダウン王国」でもいいですね。
―つまりブレイクダウンが昔から大好きという理解でいいですか?
田村&岡山
はい!ブレイクダウンが大好きです!
田村 玲一 (たむられいいち)/ 1990年1月20日生まれ(32歳)/奈良県出身/身長180cm体重95kg/天理高校⇒天理大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2012年入団)/ポジションはフランカー 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
岡山 仙治 (おかやまひさのぶ)/ 1998年2月5日生まれ(24歳)/大阪府出身/身長168cm体重90kg/石見智翠館高校⇒天理大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2020年入団)/ポジションはフランカー 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
俺たちブレイクダウンマスターを目指しています
岡山 ブレイクダウンは攻守におけるラグビーのキーになってきます。攻撃では、ブレイクダウンはボールを奪われないで、攻撃を続けることで何度でもアタックのチャンスが生まれます。また、このブレイクダウンでいいテンポでボールを出すことで、攻撃に勢いも生まれ得点に繋がります。
ディフェンス面では、ブレイクダウンでボールを取り返さなければ、どんなにいいディフェンスをしても、ずっとディフェンスし続けることになります。
―なるほど。常にブレイクダウンの度に、攻守が入れ替わるチャンスがあるんですね。
そういった中で、ご自身としてブレイクダウンへのこだわりはありますか?
岡山 さきほど述べた部分で言うとディフェンスでの「ボールを取る」という部分ですね。
ジャッカルというプレーを得意としています。身長の低さを活かした、低い位置でボールをもぎ取るジャッカルを意識しています。
―ジャッカルは低いと有利なんですか
岡山 有利ですね。アタック側のオーバーが剥がしづらくなります。オーバーに入るスペースがなくなるので。
※ブレイクダウンでジャッカルしている選手をアタック側がそのブレイクダウンから押し出すことを「オーバー」と言い、「はがす」とも表現します。
―地面にあるボールを低く持つなら当然、肩や首、頭は相手に見せた状態ですよね?そこに相手からオーバーを受けたら痛くないですか?
岡山 痛いですね!(ニッコリ)
けど、ボールを奪った時の喜びに比べたらそんなの気にしません!!
だいたい1試合1本ジャッカルが決まればいい方。けど目標は1試合に2本。1試合に2本?って思うかもしれませんが、これがめちゃくちゃすごいことなんです。
(自然な流れで横からボソッと)
田村 それが求められている。「ブレイクダウンマスター」には。
―ブ、ブレイクダウンマスター!?
田村 背番号7番をつけているオープンサイドフランカーといわれるポジションは、攻守ともにまず一番最初にブレイクダウンに入り、ブレイクダウンでの仕事の質・量が求められます。いわばブレイクダウンのスペシャリスト。
フラン・ルディケヘッドコーチは、7番の背番号を付ける選手にブレイクダウンマスターを目指すように言っています。
―なんかカッコイイ!ちなみにチームにブレイクダウンマスターとヘッドコーチに認められた選手は?
田村 まだ、いません。それほど難しい存在がブレイクダウンマスターなんです。
「ジャッカル」 タックルをされたプレーヤーからボールを奪うプレー。アタック側にオーバーを入られるまでのほんの1〜2秒で奪う瞬間技。体の強さ、経験値、スキルを必要とする、単純なように見えて奥が深いプレー。「ブレイクダウンマスター」であれば絶対に習得しなければならない技のひとつ。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
田村 ポジショニングの早さですね。
―割りとシンプルですね。ジャッカルのような特別な技があるか思いました。
田村 これには、理由があります。ブレイクダウン関係のルールは、近年ディフェンス側に有利になっています。
例えば、安全面を考慮して首から上の接触はかなり厳しくなっていたり、サイドエントリーと言われる横からブレイクダウンに入る反則が厳しくなっていたり。
さきほどの岡山選手の話をしていたようなジャッカルをされると、アタック側はかなり不利です。
ー確かに。一度ジャッカルに入られたらボールを奪われてしまう可能性は高いですね。
田村 では、どうするか。それは、早くサポート(オーバー)に入ることです。ボールを持った選手がタックルを受けて倒れるまでの一瞬で、ジャッカルする選手とボールの間に自分の体を入れて、スペースを潰すんです。これにはいかにポジショニングを早くとるかが重要です。
岡山 それに加えて、選手の運動量ですね。走るし、倒れてもすぐに立ち上がる。
―なるほど!スピアーズのブレイクダウンは、全員のポジションの早さ、そしてそれを行うための運動量に注目ですね!
攻撃側のブレイクダウンでは、接点が起こる前のサポートのポジショニング、そして確実に相手からの脅威を潰す仕事の正確性が求められる。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
BL東京は「相性がいい」
岡山好きですね。ブレイクダウンがなかったら僕はいる意味ないです。
ーそこまで・・・
田村 僕ら7番(オープンサイドフランカー)は、こだわりますよ。
相手の7番にも負けたくない。
岡山 そうそう!特にスクラムからの1次攻撃は攻守ともに7番の仕事が重要です。
ここでのブレイクダウンに一番早く入るのは7番なので、両チーム互いに7番の仕事の早さと質が重要です。
ここでジャッカルできたら最高にうれしい!!
―なるほど!スクラムからの7番同士の勝負も見所ですね!
岡山 またブレイクダウンはメンタル勝負という部分もあります。
ブレイクダウンを激しくすることで、相手に「ボールに絡みたくない」と思わせることができます。
―ブレイクダウンでその試合のマインドセットを見せることができそうですね。
さて、今回対戦する相手の東芝ブレイブルーパス東京は、ブレイクダウンの点においても、手ごわい選手が多そうですが
田村 ブレイブルーパスさんは、伝統的にガツガツきます。
うちもガツガツいくので、つまり・・・相性が良いですね!」
ー相性がいい?
田村 そうです。「そこでは負けられない」といった部分が色濃く出るでしょう!
岡山 ブレイブルーパスさんは、ボールキャリーやオフロードが多いチーム(記事文末のリンク参照)なので、ディフェンスの機会が増えます。
そこでどれだけやれるかがポイントですね。
まあ、うち(スピアーズ)の7番には末永健雄って男がいるので問題ないです。チームで一番ブレイクダウンマスターに近い存在だと思っています。
―それはすごい!同じブレイクダウンマスターを目指す者として、末永選手の強みは何だと思いますか
岡山 運動量、起き上がりの早さ、体の強さ、プレーの正確性など。
ブレイクダウンを見れば健雄さん(末永選手)がいる。そんな存在です。ジャッカルもそうですが、オフェンスでのオーバーでも相手にジャッカルをされているのを見たことがないです。ぜひ注目してください。
―ブレイクダウンを知りたかったらブレイクダウンマスターの7番、今回は末永選手を見ろ!ということですね!
末永選手は、今季6試合に出場。第10節でも7番の背番号を付けてプレーする 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
岡山 ジャッカルをして相手から反則を奪った後の、全員の喜びようはぜひ見てほしい。
田村 周りはみんな喜んでるけど、ジャッカルした本人はドヤ顔(笑)
岡山 そう!!だいたいみんなに肩叩かれながら胸張ってますよね!
ジャッカルはボールを奪うだけでなく、反則を奪い試合を有利に進めることにも繋がる。写真はマルコム選手のジャッカルで反則を奪った際の様子。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
―例えば
岡山 ありがちなのは、ラックで寝ている選手を相手チームが押さえつけてノットロールアウェイの反則を誘うとか。
※「ノットロールアウェイ」タックラーが横になったまま相手チームのボール供給を阻害したとされる反則。ラックで倒れている選手が急いでラックから離れようとしているのは、この反則を防ぐため。
岡山 タックラーはすぐに起き上がるのが義務なので、いつまでも横になっているとこの「せこい技」の犠牲になります。
―ブレイクダウンは「せこい技」の宝庫でもありそうですね。他にありますか?
岡山 個人的には、ジャッカルしてて押されるでもなく、単純に上から乗られて、膝が地面についてしまって、逆に反則を取られる、とか。
あとは、ジャッカルが低すぎて、膝が地面についていないのに「膝ついてる!自立していない!」ってよく言われます。
※ジャッカルは両足で立ってプレーしていることが原則。自立したジャッカルでないと反則になります。
ージャッカルは自立が大切?
田村 大切ですね。しっかり2本の足で自立して、地面のボールを奪う。ジャッカルする選手の足がつま先立ちだと、自立していないとレフリーに判断されるので、しっかりと踵を地面につけてジャッカルすることが大切です。
ーなら柔軟性もかなり大切では
田村 重要ですよ。ストレッチは欠かしません。
(岡山選手、田村選手が前屈すると、手がぴったりと地面についていました。)
(対談内容は以上)
チーム練習後のジャッカルの個人練習を行う末永選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
ブレイクダウンマスターを目指す選手たちは、みんなで教え合い、協力しながら高め合う 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】
話し出すとブレイクダウンへのそれぞれのこだわりや、情熱がしっかりと現れた対談となりました。
なにより印象的だったのは、ライバルでもあるはずの出場選手たちを手放しで誉め、応援する姿。
ブレイクダウンは、密集の中でゴチャッとしている印象がありますが、そのなかにはチームワークや日々の練習で鍛えた技術が注ぎ込まれています。
1試合に何十回と行われるボールの争奪戦「ブレイクダウン」
この小さな攻防に勝ち続けたチームが、試合の勝者になるのかもしれません。
第10節は、ブレイクダウンにぜひご注目ください。
文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 広報担当 岩爪航
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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