「勝つことはもちろん、楽しませることも大事」 心優しきビッグマンの、プロとしての矜恃 #10デイビッド・ドブラス
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「奈良との契約が切れてから1ヶ月ほどは日本に残って、次のオファーを待つつもりだったんだ。ところが次の日にエージェントから電話があって、『大阪に行け』と。もちろん、すぐに『OK』と答えたよ。エヴェッサとは今季のプレシーズンゲームで対戦していいチームだと思っていたし、運営もしっかりしている素晴らしいクラブであることも知っていたからね」
エージェントにOKと返答した翌日から、物事が猛スピードで進んだ。
「あまりに早く次の契約が得られたことに驚きもしたけど、それよりも喜びが大いに優った。だけど、そんな感情に浸っている暇はまったくなかったんだ。木曜日にメディカルチェックを受けてから、エヴェッサの練習に参加。金曜は奈良からの引っ越しで、土曜と日曜はホームで試合だったからね。当然、エヴェッサのセットオフェンスは知らなかったけど、コーチをはじめチームのみんなで助けてくれた。週末の試合(12月4・5日、広島ドラゴンフライズ戦)は2試合とも出て、それぞれ17分と15分のプレータイムがあって、最初の1試合に勝てたので良かったよ」
母国のスペインでキャリアをスタートさせ、これまで5ヶ国を渡り歩き、所属したのはエヴェッサで18チーム目。数多くの経験を重ねてきたベテラン選手だが、今回の移籍に関しては多少の不安もあったと言う。
「最初は少し、怖かったね。みんなが自分のことを尊敬してくれるかわからないし、年齢は40歳だし。それに、B2でもそんなに強いチームではない奈良から来て、どういうふうに扱われるのか、怖さがあったんだ。だけど#25ディージェイ(・ニュービル)や#33アイラ(・ブラウン)らメインのプレーヤーが、すごく助けてくれた。彼らが僕に対してリスペクトの姿勢を見せてくれて、それを見たチームメイトに、僕は尊敬すべき選手なんだという雰囲気が生まれたんだ。彼らの助けもあって、すぐチームに溶け込むことができたよ」
当初はケガでインジュアリーリスト入りしていた、ペリー・エリスの代役の位置付けだった。しかしゴール下で身体を張る献身的なプレーなどが評価されて、契約を延長(エリスは佐賀バルーナーズへ期限付き移籍)。加入から3週間後にはスターターで起用されるようになり平均で21分、長ければ30分以上もプレーする、今やチームに欠かせない選手になった。
「最初にチームに合流したころと比べて、#24カイル(・ハント)がケガでプレーできない期間もあって役割は変わってきているね。最近はメインのセンタープレーヤーとして、オフェンスでもディフェンスでも期待されている。Bリーグはかなりビッグマンが主体になっているので、その特性をこちらも生かさないといけない。自分が役に立つビッグマンだということをチームに印象付けて、みんなが安心できるような活躍をし続けたいんだ」
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「人を助けることが好きなんだ。小学校の教諭の免許を持っていて、先生でもあるんだよ。今も若い選手を助けたいし、コミュニティやチームと関わりたい、チームと関わりたいと思っている。エヴェッサは若い選手が多いチームだし、将来的にB1でかなり活躍する選手が多いだろうから、彼らを助けたいと思っているよ」
その誠実さは、仲間だけに向けられるものではない。
「コートではハードにプレーして、強い選手であることを示したい。それと同時に人間対人間でプレーしているので、優しい面も見せたいと思っている。たとえば試合中にだれかが転んだら、相手チームの選手でも救い上げて試合に戻るのを助けるとか、そういうところも見せたい。試合は、子どもも見ているからね。プレー中に選手同士でどれほど熱くなったとしても、試合が終わったら握手をして、もう争いみたいなものは終わりなんだっていう姿を、子どもに見せないといけない。試合中も試合後も、つねにプロフェッショナルであり続けて、見られている意識を持ちながら、バスケに対して子どもが良い印象を持てる行動を心掛けている」
子どもの手本になり、試合を見に来てくれた人々を楽しませる。これが彼の、プロ選手としての矜恃。
「レフェリーが試合開始の笛を吹いてから、終了のブザーが鳴るまで。つねにプロとして勝つために全力を尽くすという、選手としての哲学もある。それに加えて僕が大切にしているのは、試合に来てくれたお客さんを楽しませること。彼らはただバスケを見に来ているだけではなくて、選手を見に来ている、自分を見に来ていると思っている。楽しい経験をして、家に帰ってほしい。だから笑顔を見せたりと、観客を楽しめませるエンターテイメントの部分も大事にしているんだ」
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「これはもう、自分のアイデンティティ。最初はふくらはぎのサポート的な感じで履き出したんだけど、僕はすごく3Pが入る選手でも筋肉ムキムキの身体でもないから、目立つ部分があまりない。自分も特徴的なところを示したいと思って、今はアイデンティティとしてハイソックスを履いているんだ」
人懐こくて優しく、みんなから愛されるキャラクターから、いつからか“ドブちゃん”の愛称が定着した。エヴェッサに加入してそれほどの時間は経っていないが、クラブスタッフやブースターからも「ドブちゃん、かわいい」と評判だ。
「レバンガ北海道にいたときに付けられたんだけど、ドブちゃんって呼ばれるのは好きだよ。これも、僕のアイデンティティになっている。北海道のブースターはチームとの距離が近い感じで、まだ関係を保っている方もいる。ほとんど、おばさんだけど(笑)。犬の話や子どもの話をして、写真も送ってくれるんだ。今季はアウェイで北海道に行ったんだけど、北海道のブースターのおばさんに『やせ過ぎだから、もっと食べなさい』と言われたよ。頑張って、シェイプしたのに(笑)。大阪の人たちは北海道の人たちよりもしゃべるし、あまり恥ずかしそうじゃないよね。僕が生まれ育ったスペインの文化に、ちょっと似ているところがあって好き。気に入っているよ」
オフの日は観光地などには出かけず、地元の小さな居酒屋や銭湯など、日本の文化を感じられる場所に足を運ぶ。そこで日本の人々と触れ合うのが、楽しみのひとつなのだという。心優しきスペイン人ビッグマンは今日もブースターを笑顔にするため、その大きな身体を張ってプレーする。
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