【鳩スタ殿の13人】#014 神川明彦(鎌倉インターナショナルFC アドバイザー)ー『鳩スタ』には地域に対して愛情が芽生えるような装置になってほしい

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 神奈川県リーグに所属する鎌倉インテルが、民間の力だけでつくり上げた自前のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」(通称「鳩スタ」)。雑草の生い茂っていた古都・鎌倉の広大な空き地に誕生した「鳩スタ」は、その名の通りに「みんなの思い」が形になった場所だ。

 ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、鎌倉出身のサッカー人として創設当初からクラブを強力にバックアップしてきた神川明彦。

(文・本多辰成/スポーツライター)

地元・鎌倉に誕生した「鳩スタ」の光景に感動

2021年10月11日にオープンを迎えた「鳩スタ」 【鎌倉インターナショナルFC】

 昨年10月11日、記念すべき「鳩スタ」のオープンを神川明彦は感慨深い思いで見つめていた。

「初日はもう絶対に行こうとずっと思っていたんですが、本当に感動しましたね。『草っぱらタイム』ということで朝から多くの人が集まっていて。小学生や中学生がサッカーをしていて、おじいちゃん、おばあちゃんの姿もあった。そのわきでは赤ちゃんが寝転んでいる光景なんかもあって、本当に男女問わずさまざまな年代の姿がありました。本当にクラブが掲げる『CLUB WITHOUT BORDERS』を体現する『鳩スタ』で感激しました」

 明治大サッカー部監督時代には長友佑都をはじめとする多くのJリーガーを輩出した名将として知られる神川は、1966年生まれの鎌倉市出身。小学校から高校まで地元の鎌倉でサッカーをし、鎌倉高校時代には全国大会にも出場している。だが、鎌倉のサッカー環境が他の地域に比べて整備されていないことには不満も感じていた。

「鎌倉には芝生のグラウンドもありませんでしたし、他の地域に比べるとサッカーをする環境が整っていませんでした。これはサッカーに限らずスポーツ全体に言えることで、スポーツで環境が整っているのはサーフィンくらい。私自身、鎌倉でサッカーをしていましたから、その意味では『なんで鎌倉に生まれちゃったんだろう?』と恨んだこともあるくらいです」

 指導者になってからも「鎌倉でサッカーをしたい」という思いはずっと持ち続けていたものの、現実を見れば不可能なことに思えた。神川は、鎌倉インテルによる「鳩スタ」プロジェクトの成功を最も願うひとりだった。

「この人たちなら間違いない」と信じて待った「鳩スタ」完成

2020年12月、スタジアム建設発表の記者会見に登壇する神川 【鎌倉インターナショナルFC】

 神川が鎌倉インテルと「鳩スタ」プロジェクトの存在を知ったのは、クラブが創設されて間もない頃だった。クラブ代表の四方健太郎が自らフェイスブックにアップした鎌倉インテル創設の投稿を、共通の友人のシェアによって目にすることとなった。

「最初に目にした時は『鎌倉にサッカークラブをつくる⁉』と驚いてしまって。鎌倉のサッカー環境を知っている私としては『事情を分かった上で言っているのか?』と最初は疑いながらその情報に接しました。でも、実際にオーナーの四方さんやGMの吉田(健次)さんに会ってみると、『この人たちなら間違いない』と思えた。それで、このクラブは信じたいと思ったんです」

 鎌倉出身のサッカー人として本格的にクラブにコミットすることになった神川。だが、心待ちにしていた「鳩スタ」の建設計画は遅々として進まない時期が続いた。その頃は神川も「心配で心配で仕方なかった」と振り返るが、それでもクラブを信じて待った。

「鎌倉インテルに関わる人たちは、『有言実行の猛者たち』というか。四方さんは言うに及ばず、吉田さん、そして『鳩スタ』のプロジェクトを中心となって進めた堀米(剛)さんと、言ったことはやり遂げる人たちだと思っていました。どうなっているんだろうと心配になる時期もありましたが、彼らを信じようと。彼らを信じて僕は一緒にやろうと決めたわけだから、言葉は適切でないかもしれませんが『我慢できた』ということです」

昔のサッカー仲間と再会、「鳩スタ」は人がつながる場所

2021年6月、建設現場の草刈りに参加する神川 【㋚写真】

 グラウンドの建設が決まると、神川は「口だけじゃなく体で示したい」と現場の草刈りや人工芝敷きにも参加。そして、神川がクラブの存在を知ってから3年以上が過ぎた2021年10月、鎌倉市にとっても待望の人工芝フルコートのグラウンド「鳩スタ」はついに完成を迎えた。

「『鳩スタ』でのトップチームの試合はほとんど見に行っていますが、本当にお客さんが目に見えて増えていきました。県リーグ2部でこんなに人が集まるのか、と。ユニフォームを着たりタオルマフラーを持っているサポーターのような方も増えて、選手たちのプレーも明らかに変わった。本当にすごいことだと思っています」

 現在、なでしこリーグに所属するスフィーダ世田谷FCの監督を務める神川だが、忙しいなかでもどうにか時間をつくって「鳩スタ」でのトップチーム公式戦には顔を出している。そんななかで思いがけないうれしい出来事もあったという。

「『鳩スタ』での2戦目でしたか、妻と一緒に試合を見に行ったら『神川!』と声をかけられたんです。誰かと思ったら、小学校、中学校と鎌倉で一緒にサッカーをしていた仲間だった。『俺たちもこの年になってだいぶ先が見えてきたなかで、やっぱり地元にサッカークラブがあったら応援したいよね。俺にも何か貢献できることはないか?』と彼が言ってきたんです。すごくうれしかったですね。昔の仲間と再会することもできて、『鳩スタ』は人がつながる場所にもなっています」

日曜日の朝、トップチームの公式戦の観戦に「鳩スタ」を訪れる 【㋚写真】

「鳩スタ」には地域に対して愛情が芽生えるような装置になってほしい

「鳩スタ」で開催されている鎌倉インテルサッカースクールでは地域の子どもたちの指導に当たっている 【鎌倉インターナショナルFC】

 鎌倉インテルに関わるようになってから、神川はU-10とU-12世代をメインにスクールのコーチを務めてきた。当初はフットサルコートなどで行っていたが、その舞台は今「鳩スタ」となり、週1回、子どもたちの指導に当たっている。

「神奈川県内には多くのサッカースクールがありますが、鎌倉の子たちにとっては近くにあるというのは大きいと思います。『鳩スタ』のようなフルコートでできるところはなかなかないと思いますし、『鳩スタ』でできるようになって明らかに子どもたちの成長も感じています。スクールを退会する子もほとんどいませんし、それは非常に重要なことだと思っています」

 生まれ育った鎌倉でサッカーをしたいけれど、現実を見ればそれは不可能なこと。そう考えていた神川だったが、今、「鳩スタ」がその状況に大きな一石を投じた。今後、この「鳩スタ」が鎌倉という地域とのつながりをさらに深めていくためには「愛」が重要だと神川は考えている。

「ベースとしては愛が一番大事だと思っています。我々がまず『鳩スタ』を心から愛しているという態度で日々いること。選手たちも『鳩スタ』を愛して感謝の気持ちを持って日々の練習をし、週末のゲームでは自分の持っているすべてをさらけ出す。鎌倉の人たちは少し保守的な面もあるんですが、そういったものが伝播して感動を生むと思う。お互いを身近に感じられて、地域に対して愛情が芽生えるような装置、時空間、環境に『鳩スタ』がなれればいいなと思っています」

 鎌倉インテルは死ぬまで付き合っていきたいクラブ。創設当初からそう考えてきた神川にとっても、「鳩スタ」はかけがえのないホームだ。

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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