【鳩スタ殿の13人】#012 杉之尾剛太(鎌倉インターナショナルFC COO)ー『鳩スタ』はチャレンジできる「壮大なる大人の遊び場」
【鎌倉インターナショナルFC】
ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、鎌倉インテルのCOOを務める杉之尾剛太。
(文・本多辰成/スポーツライター)
スタジアム構想に「これは関わらない手はない」と直感が働いた
「鎌倉インテルが創設されて1年くらいの時だったと思いますが、都内でクラブのお披露目を兼ねたミーティングがありまして。私もそこに呼ばれて行ったひとりでした。その際のプレゼン資料に『KAMAKURA BAKUFUスタジアム』という名称でその後の『鳩スタ』につながる構想が書かれていて、率直に面白そうだなと。自分がやってきた仕事の経験が生かせるかもしれないという直感も働いて、これは関わらない手はないだろうと思いました」
鎌倉市に隣接する逗子市在住の杉之尾。その当時は大手コンサルティング会社に勤務していたが、それ以前には「ITでスポーツと地域を活性させる」というテーマで事業を立ち上げ、多くのJリーグクラブと仕事をしていたこともあった。
大手コンサルティング会社に勤務する傍ら、小学生の指導に関わり子供たちと向き合う(写真右) 【鎌倉インターナショナルFC】
「クラブ代表の四方(健太郎)さん、GMの吉田(健次)さん、プロジェクトを中心となって進めた堀米(剛)さんと、彼らが面白い人たちで。鎌倉インテルのプロジェクトは僕自身も非常に前向きになれるような時間と空間だったので、『鳩スタ』完成までの2、3年という時間はものすごいスピードでいろんなことが進んでいったという感覚です」
子どもたちのためにも、スタジアムを通じた街づくりを
土のグラウンドでサッカーに明け暮れた高校時代の杉之尾(一列目左から2番目) 【鎌倉インターナショナルFC】
「スポーツができる子はみんな野球か陸上をやるような環境だったんですが、僕は『キャプテン翼』の影響でサッカーがやりたかった。でも、サッカー部はなかったので中学までは陸上部に所属していました。高校でようやくサッカー部に入ることができたんですが、高校も大学も土のグラウンドだったので、『鳩スタ』のような環境があるのは本当にうらやましいです」
逗子市に引っ越してきたのが10年ほど前のこと。社会人となってサッカーの現場からは離れていたが、そこも自らが子供時代を過ごした加古川市と同じくサッカーをする環境には恵まれていなかった。
「鎌倉、逗子、葉山のエリアにはサッカーができるようなグラウンドがほとんどありません。サッカーをする子どもたちはみんなマリノスやベルマーレ、横浜FCまで通わなければいけなくて、移動にすごく時間がかかってしまう。僕自身の考えとして、子どもの時は時間の自由度があることが大事だと思っていて、学校やお稽古事などで管理される時間ではなく、自分で決めて遊べる時間をつくってあげることが重要だと思っています。自分自身がサッカーに育ててもらったということもありますが、それ以上にスタジアムを通じた街づくりに興味があってプロジェクトに参加させてもらいました」
サッカーは「言語」、さまざまな人たちがつながる場所に
週末、『鳩スタ』での仕事風景 【鎌倉インターナショナルFC】
「今後のスタジアム構想、さらには都市開発、街づくりというところに向けて現状どうあるべきで、何を志向していくかというところが僕がやらなければいけない仕事だと認識しています。そのためには現状をよく知っておく必要がある。僕自身は現場の仕事をしているわけではないですが、週末には『鳩スタ』に足を運んで、実際に施設がどう使われているのか、来ている人たちがどんな表情をしているのか、一緒に動いてくれている人たちがどういう思いを持っているのかというところを見ながら、今後の戦略を考えています」
鎌倉インテルが掲げる「CLUB WITHOUT BORDERS」というビジョンを体現する場所として誕生した「鳩スタ」。杉之尾も、さまざまな人がつながる場所として「鳩スタ」の未来を描いている。
「僕自身、ニューヨークに遊びに行った時にはセントラルパークでいろんな国の人たちとサッカーをやりまくっていたことがあるんですが、サッカーは『言語』だと思っています。そのコミュニケーション手段を持つことによって、いろんな世代や性別、人種を越えてつながることができる。トップ・オブ・トップのスポーツとしてのサッカーだけでなく、サッカーという言語でコミュニケーションをとれる場所が増えればいいと思いますし、『鳩スタ』がそうなってほしいと思っています」
「鳩スタ」はチャレンジできる「壮大なる大人の遊び場」
『鳩スタ』近隣には東海道線新駅の開業が予定されている 【鎌倉インターナショナルFC】
「今はまだ本当に原っぱにグラウンドができただけの状態なので、色がないところが『鳩スタ』の特徴です。どういう場所にしたいのか、これからみんなで考えながら色をつけていけるところが大きな魅力だと思っています。東海道線の新駅ができれば、その駅を基点にした街ができていく。どんな街をつくりたいのかみんなが声を発することができる状況は、どこにでもあるわけではありません。街づくりにスポーツをインストールするという思いを持ち続けて、皆さんの手でつくるというところに持っていけたら、めちゃくちゃ面白いプロジェクトになるんじゃないかと思っています」
「鳩スタ」は今、杉之尾自身にとっても大切な「チャレンジできる場所」になっているという。
「若い人たちがトライしているので、僕も触発されてチャレンジができる。そういうことができる場所があるというのは、すごくありがたいことです。『鳩スタ』は、『壮大なる大人の遊び場』だと思っています。本気で大人が遊んだ時に何ができるのかということを、子どもたちに見せる機会でもあると思う。やろうと思えばできる、スタジアムだってつくれるんだ、ということを見せられればいいなと思っています」
今、歴史が始まったばかりの「みんなのスタジアム」。その未来を描く上で、杉之尾が担う役割は大きい。
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