男子は高橋英輝が世界選手権日本代表内定!女子は岡田久美子が7度目のV!/日本選手権20km競歩レポート&コメント
【JAAF】
男子20km競歩は、高橋英輝選手(富士通)が、日本陸連が定めた派遣設定記録(1時間20分00秒)を切る1時間19分04秒でフィニッシュ。5連覇を達成した第102回大会以来となる6回目の優勝を果たすとともに、条件を満たして、オレゴン世界選手権20km競歩の日本代表に内定しました。
今回は、東京オリンピック男子20km競歩の銀・銅メダリストで、例年この大会では終盤まで高橋選手と競り合いを繰り広げてきた池田向希選手(旭化成)と山西利和選手(愛知製鋼、前回まで2連勝)が、3月上旬の世界競歩チーム選手権に出場することで不出場。レースは、3kmすぎから高橋選手が先頭に立ち、古賀友太(明治大学)、住所大翔(順天堂大学)の学生2選手がついて上位グループを形成。3人が1km3分55〜58秒のペースでレースを進め、4番手以降との差を広げていく展開となりました。
【JAAF】
2位争いを制したのは、住所選手。高橋選手に突き放されたあと、12周目の周回で古賀選手からも後れ、15km通過の段階では、高橋選手から46秒、古賀選手から15秒の差がついていました。しかし、「ロス・オブ・コンタクト」によりレッドカードが3枚出た古賀選手が16kmの手前でペナルティーゾーンへ。ここで2位に浮上して最後までこの位置をキープ、昨年の元旦競歩でマークした1時間20分46秒を32秒更新する1時間20分14秒の自己新記録で、嬉しい日本選手権「初メダル」を獲得しました。3位は、50kmの元日本記録保持者で、20kmでも19分09秒00秒のスピードを持つ野田明宏選手(自衛隊体育学校)が1時間20分24秒で、4位には2016年リオ五輪男子20km競歩7位入賞の松永大介選手(富士通)が1時間21分23秒で、それぞれフィニッシュ。実力者2選手が復調の兆しを印象づけました。
【JAAF】
最初の1kmを4分32秒で入った岡田選手につくことができたのは、同じく東京オリンピックに出場した河添香織選手(自衛隊体育学校)のみで、最初の2kmは2人でレースを進めましたが、3周目に入ったところで河添選手が置いていかれる形となり、ここから岡田選手の“独り旅”。各周回を4分30〜31秒でレースを進めていきました。しかし、6〜7kmあたりから、徐々に維持が厳しくなり、1秒ずつペースを落としていくことに。10kmを45分22秒で通過したあたりからは、参加標準記録(1時間31分00秒)突破なるかに焦点が移る形となりました。強風が容赦なく体温を奪う過酷な条件となったことも相俟って、終盤は大きくペースダウン。ラップが5分台に落ち込む周回もありましたが、最後まで懸命に粘って1時間33分28秒でフィニッシュ。2年ぶり7回目の日本選手権者となりました。
2位は河添選手で、1時間35分38秒をマーク。3・4位には、学生の薮田みのり選手(武庫川女子大学、1時間35分56秒)と下岡仁美選手(同志社大学、1時間36分02秒)が続き、ともに自己記録を大幅に更新して、日本選手権初入賞を果たしています。
【JAAF】
優勝した各選手のコメントおよび、今村文男日本陸連強化委員会競歩シニアディレクターによる日本選手権総括コメントは、下記の通りです。
【日本選手権獲得者コメント】
高橋英輝(富士通)
優勝 1時間19分04秒 ※オレゴン2022世界選手権日本代表に内定
【JAAF】
自分は、世界大会を見据えると、(20kmの)レースのなかでは10kmと15kmの2つの地点がリズムを変えるポイントだと考えていて、そこに意識を置いている。今日は、10kmまでは(1km)3分55秒から4分くらいのペースでリズムをつくり、そこから少しずつ上げていこうという意識で臨んでいた。終盤でペースを落としてしまったが、(3分52秒に引き上げた)10〜11km以降のところに関しては、自分のやりたいことができたように思う。
後半は、感覚的には、もっとペースを上げられるかと考えていたが、風が強かったことや、ペースをつくった序盤の展開で力を使ってしまっていたことで、思うように上げられなかった。動きも、ラスト5kmは、もっとやわらかく体重を乗せていきたかったのだが、少し硬くなってしまった。それがペースダウンにつながったように思う。
(例年、最後まで競り合った山西利和選手、池田向希選手が不在で)1人のレースとなったことで、少しペースが中だるみしたというか、思うようにいかなかった面はあるが、そこは今後の課題と考えて、取り組んでいきたい。
今回、納得できたのは、(前述した)ラスト10kmから少しリズムを変えられたこと。あとは、「代表に内定する」という目標だけに終わりたくはないという思いがあって、これまでの競歩の先輩たちがやってきてくださったような、「日本の競歩を引っ張るんだ」というような、そういうレースをしたかった。そこに関しては、チャレンジはできたかなと思う。
東京オリンピックで、池田選手、山西選手がメダルを取ったが、これに続いていく選手がいないと、日本の競歩の力はついていかない。私自身も、そこにチャレンジしていく気持ちを常に持ちながら頑張りたい。
岡田久美子(東京陸協)
優勝 1時間33分28秒
【JAAF】
ありがたいことに、今大会は、国際競歩審判員が揃わなくてもタイム(世界選手権参加標準記録やワールドランキングのポイントとして)を認めていただけることになった。そのなかで標準記録を切れなかったことを、今は、すごく残念に思っているのだが、当初は、タイムが認められないかもしれないという状況だったので、連戦して勝ち上がっていき、世界選手権に出場することをターゲットにしていた。連戦を想定していたので、この大会にばっちりと照準を合わせて、自己ベストを目指すというような準備ができていなかった側面はある。
(東京オリンピック以降)10月に結婚、11月に引っ越し・退職など、環境の変化もあったので、この大会に向けて、秋ごろからスピードを出して、強度の高い練習を積むということはできていなかった。スピード練習を行ったのは1月に入ってからだったので、「ちょっと遅かったかな」とも思う。
ただ、連戦を見据えて、距離をじっくり踏んだり、引っ越したことでできるようになった坂や起伏のあるコースで脚をつくったりと、今までやったことのないことに取り組んできた。(この大会では)まだ自己記録の更新や、(派遣設定記録の)1時間30分をどんな状況でも切ることができるというような準備はできていなかったが、環境が変わったなかで初めてのことに取り組んだり、(夫から)身近でサポートしてもらえたりなど、新しいことを積み重ねて、これからまた記録を更新していったり、世界選手権に出場して上位を目指したりしていけたらいいなと思っている。
【日本陸連総括コメント】
【JAAF】
特に東京オリンピックが終わって、パリ・オリンピックへのスタートということでは、今年行われるオレゴン世界選手権に向けては、確実にメダルを獲得することを目標にしている。従来のトップ選手に加えて、U23年代にターゲットをシフトしていきながらパリに向けて強化していきたいと考えているなかで、この大会で上位に学生が複数入ってきていることは明るいニュース。並行して、今まで代表経験のある野田くんや松永くん(大介、富士通・4位)にも復調の傾向がみられたことは、新たに行われる35kmという種目に向けて、いい刺激材料になったと思う。
女子に関しても、やはり風の影響、また、本人のコンディション、さらには、今述べたライバルの存在というところを考えると、優勝した岡田さん(久美子、東京陸協)に関しては、10km以降のペースダウンが大きかった。しかし、生活や練習の環境、またサポート態勢が変わった状況のなかで、これから新しい環境のなかで自分の競技スタイル、または競技に向けた目標設定というものをしていってくれるものと考えている。パリまで2年しかないので、20km、35kmのどちらの種目でも活躍を期待できるようになってほしい。今年に関しては、世界選手権の参加標準記録、あるいは、その後に行われるアジア大会の代表をつかむような目標で頑張ってもらいたい。
2位になった河添さん(香織、自衛隊体育学校)に関しては、確かに風の影響はあったが、自分の目標設定であった1時間31分00秒に届かなかった。河添さんについても、先ほど申し上げた35kmという新しい種目にチャレンジすることも視野に入れながら取り組んでいくことで、新しい自分の才能や新種目に対応する能力が拓かれていくのではないかと感じられるレースだった。
また、男子と同じように、女子でもU23の年代が活躍してくれた点がよかったと思う。ただし、記録面に関しては、ここ数年は横這い状態が続いている。そういったところも踏まえて、今後は、学生年代の女子の競技環境を確認しながら、サポートを充実させていくことも頭において強化を進めていくようにしたい。
【U20選抜競歩優勝者コメント】
古賀文也(大牟田高3年・福岡)
優勝 42分36秒
【JAAF】
今回が、高校最後のレースとなる。高校では3年間、顧問の赤池健先生と奥さんに、本当に支えていただいた。自分があるのは先生と奥さんのおかげだと思っているので、今日は、そういった方々への恩返しとなるレースになったと思う。
春からは、順天堂大学で競技を続ける。昨年、兄(古賀友太、明治大)が東京オリンピックの補欠となった。兄が帰省したときには、一緒に歩いたり競歩の話をしたり、アドバイスをもらったりしている。自分も兄を追いかけながらも、2028年、2024年のオリンピック選手になれるように頑張っていきたい。
まずは、4月の輪島(全日本競歩)が、U20世界選手権の選考会になっているので、そこで今回のように1位になって、U20世界選手権で戦えるよう、練習を積んで、より強化していくことを目指している。自分の持ち味はスピードだが、スピードが上がったときに、浮き(ロス・オブ・コンタクト)が出やすくなる点が課題でもあるので、4月までにスピードを意識しつつ、フォームをしっかりと維持できるような仕上げをしていきたい。
大山 藍(鹿児島女子高1年・鹿児島)
優勝 22分46秒
【JAAF】
競歩は、高校に入って、昨年の6〜7月ごろから始めた。トラックではこれまでに5000m競歩に5回出ていて、12月の長崎陸協競歩大会(高校女子5000mの部)で初めて勝ったが、全国優勝はこれが初めてとなる。入学したときは長距離をしていたが、6月ごろにシンスプリントになって走れなくなったとき、競歩をしている先輩がいて、顧問の先生から「一緒にやったらどうだ?」と言われたので始めてみた。最初は、競歩も長距離もどちらもできたらいいなと考えていたが、今は競歩ひと筋で頑張っていきたいなと思っている。
まだインターハイには出たことがないので、今年はまずは県総体で入賞して、南九(南九州大会)へ出場し、そこを突破してインターハイで入賞できるくらいのレベルになることを目標に頑張りたい。
文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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