【鳩スタ殿の13人】#009 川又悠史(鎌倉インターナショナルFC 選手)ー『鳩スタ』は喜怒哀楽をみんなで共感できる場所

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 神奈川県リーグに所属する鎌倉インテルが、民間の力だけでつくり上げた自前のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」(通称「鳩スタ」)。雑草の生い茂っていた古都・鎌倉の広大な空き地に誕生した「鳩スタ」は、その名の通りに「みんなの思い」が形になった場所だ。

 ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、クラブ創設1年目から主力として活躍してきた川又悠史。

(文・本多辰成/スポーツライター)

創設初年度、「鎌倉にスタジアムをつくろうとしているクラブ」に加入

2018年12月、昇格トーナメントを制して神奈川県2部リーグへの昇格を果たす 【Taro-Ramos】

 ボランチ、センターバックとしてチームを支える川又悠史が鎌倉インテルに加入したのは、クラブ創設1年目の2018年シーズン終盤。初参戦の神奈川県リーグで、3部から2部への昇格を決めるトーナメントを戦っている頃だった。

「鎌倉にスタジアムをつくろうとしているクラブがある」というのが、最初に耳にした鎌倉インテルの情報だったと川又は記憶している。

「知人から『今年できたばかりで、ゆくゆくは鎌倉にスタジアムをつくろうとしているクラブがあるんだけど入らない?』と紹介されたのが、鎌倉インテルに加入するきっかけでした。その頃は社会人サッカーがどういうものなのかも分かっていなかったんですが、自分たちでつくるというのはすごいな、と漠然と思ったのを覚えています」

 クラブ1年目の終盤に加わった川又は、その後、チームに欠かせない主力選手として鎌倉インテルとともに歩んできた。だが、当初は「鳩スタ」の建設計画については正直なところ、あまり現実味を感じていなかったと振り返る。

「チームに入って社会人サッカーの実情を知ると、正直なところスタジアム建設なんて無理だろう、と。実際、2、3年は実現しないまま過ぎていきましたし、やっぱり夢の話で終わるのかなと感じていました。クラウドファンディングが始まっても3000万円なんていう大金を集めるのは簡単ではないですし、実際に工事が始まった時に初めて『本当にできるんだな』と」

サッカーを楽しみながらも、難しい面もあった「鳩スタ」完成前

「鳩スタ」完成前は市外のグラウンドを転々として練習を行っていた 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 川又は1995年生まれ、埼玉県の出身。埼玉の強豪・西武台高時代には、浦和レッズと大宮アルディージャの下部組織の選手たちに交じって高体連からただ一人、国体の埼玉県選抜に選ばれたこともある。大学は練習の厳しさで知られる国士館大で濃密な4年間を過ごすと、いったん選手生活にピリオドを打った。

「大学卒業後、社会人1年目は友達と趣味でサッカーをやるくらいでした。でも、サッカーのない生活に少しずつ物足りなさや、もどかしさを感じるようになってきて。そんなときにちょうど、鎌倉インテルを紹介されたんです」

 もう一度、サッカーがしたい。そんな思いが溢れ出てきていた時であったため、川又にとっては「鳩スタ」ができるまでの環境もそれほど苦にはならなかったという。

「まずは、サッカーができる環境がある。練習場所は市外のグラウンドを転々としたりフットサルコートだったりしましたが、最低限、芝のピッチでサッカーができていたので個人的にはポジティブにとらえて楽しんでいました。ただ、平日はフットサルコートでしか練習ができないので、ロングボールを蹴る機会がなかった。そういった部分や戦術面の練習などでは、週末の試合に向けて難しいところは感じていました」

「鳩スタ」完成後、クラブ1年目との大きな変化を実感

「鳩スタ」完成後、多くの方が観戦に訪れる中でのホームゲーム 【㋚写真】

 クラブ創設5年目の節目を迎える今シーズン、気付けば川又はチーム在籍期間で言えば最も長い古株の選手となった。「鳩スタ以前」の時代をもっとも長く知る川又だからこそ、「鳩スタ」の完成によって感じる変化も大きなものだった。

「僕の場合、鎌倉出身の人間ではないので、『鳩スタ』ができるまで実はほとんど鎌倉に行く機会がなかったんです。正直、鎌倉の人たちがどう思っているのかという雰囲気を感じることができなかったんですが、『鳩スタ』ができて本当に多くの人たちが試合を見に来てくれる。声をかけてくれる方もいて、1年目のことを考えると変化の大きさを実感しています」

 ホームグラウンドの完成後、「鳩スタ」での公式戦は全勝だった昨シーズン。多くの人たちが見守ってくれていることをはじめ、さまざまな形で注目されていることを実感できるのが選手のモチベーションにつながっているという。

「『鳩スタ』ができて、選手のモチベーションは明らかに上がっていると思います。多くの人たちが来てくれるのもそうですが、ユーチューブで試合が配信されたり、ハイライト動画がアップされたり、カメラマンが試合に来てくれたり。そういった状況が嫌な選手はいないと思いますから。もちろんチームとして徐々に成熟していったこともありましたが、昨シーズン後半戦の好調は『鳩スタ』の力も大きかったと思います」

「鳩スタ」は喜怒哀楽をみんなで共感できる場所

【DAN IMAI】

 川又には、今もサッカーを続けている大きな理由がある。それは、社会人になって日常生活の中では味わえなくなってしまった人間らしい感情がピッチの上には存在しているからだ。

「今、サラリーマンとして働いているんですが、日常生活の中で喜怒哀楽を感じることがほとんどないんです。でも、サッカーではチームメイトや自分のプレーへの怒り、相手に負けたくないという感情、勝った時の喜び、いろんな感情を味わうことができます。それがサッカーを続けている一番の理由かもしれません。『鳩スタ』はそれを表現できて、多くの人たちと共感できる場所だと感じています」

 さらに多くの人々が鎌倉インテルの試合に足を運び、一緒に喜怒哀楽を感じられる。「鳩スタ」がそんな場所になっていくためには、何よりも結果が重要だと川又は考えている。

「大前提として県リーグ2部に埋もれているようなチームでは、いくら面白いサッカーをしようが、いくら情熱的にプレーしようが限界があると思っています。今シーズンは他のチームを圧倒して昇格を決めたい。鎌倉インテルは県2部に埋もれるようなチームではないと思いますし、『鳩スタ』という環境、新加入選手、練習頻度と、その準備は整ったと感じています」

 3シーズン連続で昇格を逃す悔しさを味わった川又だからこそ、昇格という「結果」を求める思いは誰よりも強いのだろう。川又にとって鎌倉インテルで5度目となるシーズンが「鳩スタ」を舞台に始まる。

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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