【スキージャンプ】北京2022:小林陵侑が24年ぶりの金メダルを獲得。混合団体は悔しい4位

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【(C)Getty Images】

大本命としての「ハイプレッシャー」を跳ねのけた。2本の好ジャンプをそろえ、日本の小林陵侑がスキージャンプ男子個人ノーマルヒルで、期待通りの金メダルに輝いた。日の丸が、北京の空にはためいた。

1本目は会心の出来。今季FIS(国際スキー連盟)ワールドカップ全16戦中9勝と、圧倒的な強さでオリンピックに乗り込んできた小林陵侑は、104.5mと飛距離を大きく伸ばした。なにより着地でテレマークを美しく決め、飛型点57.5点は参加50選手中ダントツの高得点を出した。総合145.4点の1本目首位で、上位30人による決勝に進出した。

2本目は強い追い風の中。風の影響を考慮した補正点で、小林陵侑に全体で3番目に高い+5.1点が与えられたほどに、難しい条件下だった。1本目8位や5位の選手が大ジャンプで表彰台に飛び込む中で、その後の選手たちは次々と失速していく。

それでも小林陵侑は飛距離99.5m/飛型点55.5点で、合計129.6点ときっちりまとめた。2本目だけなら5位の成績だったが、総合275.0点で全てを上回り、堂々の優勝をつかみとった。

日本スキージャンプ界にとっては札幌1972、長野1998に続く6大会ぶりの金メダル。つまり日本「国外」で行われたオリンピックで獲得した、初めての快挙となる。

北京2022での日本金メダル1号となった小林陵侑は、ラージヒル1本目で個人・団体通して今大会最長の142.0mを飛び、147.0点の首位で折り返した。

ただ、6点以上のリードで2本目に臨んだノーマルヒルとは違い、今回はマリウス・リンヴィク(ノルウェー)が、ほんの約2点差で背後につけていた。しかも1本目でやはり140.5mと距離を出したライバルは、2本目でも140.0mと大きなジャンプを成功。最後の小林陵侑に大きなプレッシャーをかけた。

小林陵侑にとって金メダル獲得に必要な距離は140.5m。実際の飛距離は138.0mと、ほんのわずかに足りなかった。2本を合わせた得点は292.8点で、リンヴィクに3.3点の逆転を許した。

ノーマルヒル優勝直後に「2本ともいいジャンプができた」と、真っ先にパフォーマンスの出来を喜んだ小林陵侑は、銀メダルに終わったラージヒルでも「空中でばたついた気がするが、自分のできることはできた」と、内容には納得した様子を見せた。

スキージャンプ個人戦で日本人選手が2つのメダルを持ち帰るのは、長野1998でラージヒル金・ノーマルヒル銀を獲得した船木和喜氏に続く史上2人目。ただ、24年前の船木和喜氏は団体戦でも日本に金メダルをもたらした。北京2022での小林陵侑も混合団体、男子団体に参戦したが、いずれも表彰台とはならなかった。

特にオリンピック史上初めて採用された混合団体は、日本だけでなく、多くの参加国にとってフラストレーションを残す結果となった。

悲願の金メダルを目指し、3度目のオリンピックに挑んだ高梨沙羅にとっては、絶対に成功させたい試合だったはずだ。W杯では男女合わせて史上最多の61勝を誇りながら、4年に1度のオリンピックだけは、どうしても勝てずにきた。初出場ソチ2014は4位、平昌2018は3位。北京2022の個人戦も1本目98.5m、2本目100mとK点超えジャンプをそろえたが、メダルには届かず。4位で終えていた。

男子は小林陵侑と佐藤幸椰、女子は高梨沙羅と伊藤有希の4人で参戦した日本混合チームは、それぞれが最大限を尽くした。中でも第1グループの高梨沙羅は、1本目103.0mの大ジャンプで、124.5点の高得点を叩き出す。また、小林陵侑は102.5m、130.1点と、第4グループ内で1位のジャンプを決める。

ところが滑走後の検査で、高梨沙羅がスーツ規定違反を指摘され失格。高梨沙羅を除く残り3選手の合計得点359.9点のみが、日本混合チームの1本目成績として記録された。上位8カ国に2本目への進出権が与えられるが、日本はぎりぎり8位だった。

2本目の日本勢4人は、最終的に4位まで追い上げた。大きなショックを抱えながらも、高梨は98.5m/118.9点を出し、女子1グループ目では2位の成績を出した。続く佐藤幸椰と伊藤有希も着実なジャンプを重ねた。なにより個人メダリストの小林陵侑は、1本目に続き2本目も、最終グループでダントツの106.0m/137.5点を記録した。

メダル候補のドイツやオーストリア、さらにノルウェーさえも、女子選手が同様に失格処分を受けた。苦戦するチームが多い中で、女子個人戦で金のウルシャ・ボガタイと、銅のニカ・クリジュナルが2本ともグループ内で最高得点を出したスロベニアが、トータル1001.5点で史上初の混合団体金メダルを持ち帰った。失格さえなければ、日本は2位に値する得点だった。

スキージャンプの最終種目となる男子団体では、ジャンプ大国、オーストリアが混合でのリベンジを果たした。佐藤幸椰、中村直幹、小林潤志郎、そして小林陵侑で挑んだ日本は、1本目から5位と出遅れた。やはり2本目は小林陵侑がグループ首位の意地を見せたが、ソチ2014以来2大会ぶりのメダルまでは約40点届かず。5位で北京2022を締めくくった。

文=宮本あさか
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