【鳩スタ殿の13人】#007 藤田航規(鎌倉インターナショナルFC 選手)ー『鳩スタ』にはアメリカで感じたスポーツ文化がある

鎌倉インターナショナルFC
チーム・協会

【㋚写真】

 神奈川県リーグに所属する鎌倉インテルが、民間の力だけでつくり上げた自前のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」(通称「鳩スタ」)。雑草の生い茂っていた古都・鎌倉の広大な空き地に誕生した「鳩スタ」は、その名の通りに「みんなの思い」が形になった場所だ。

 ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、鎌倉市出身でクラブ創設1年目からプレーする藤田航規。

(文・本多辰成/スポーツライター)

鎌倉のサッカー環境が劣っていることを知った小学校時代

 クラブ創設1年目からエース格のストライカーとして活躍してきた藤田航規にとって、鎌倉は生まれ育った場所だ。地元の少年サッカーチーム「FC小坂」でプレーをしていた小学校時代、鎌倉の選抜チームの一員として他の地域の選手たちと交流を持った時、鎌倉がサッカーをする環境として恵まれていないことを知ったという。

「鎌倉には芝生のサッカーコートがありませんでしたが、小学校時代はそれが普通だと思ってやっていました。でも、運よく鎌倉選抜に選ばれて市外や県外の選手たちと交わる機会ができたことで、鎌倉のサッカー環境が他の地域に比べて劣っていることを知りました。中学では鎌倉でサッカーをするという選択肢はなかったので、横浜市のチームでプレーしていました」

 本格的にサッカーを続けていくなら鎌倉を出るしかない。それが鎌倉サッカー界の実情だった。藤田も中学では横浜市のチームに所属し、高校は藤沢市にある湘南学園高に進学。その後、立命館大を経て鎌倉インテルに加入した時、クラブが鎌倉市に人工芝のサッカー場を建設する計画があることを知った。

「『鳩スタ』の建設が予定されていた深沢の土地は、いろいろな計画が持ち上がりながら結局、実現に至っていないと聞いていました。『鳩スタ』についても最初は実現すればいいな、というくらいに考えていたんですが、自分も参加させてもらった一昨年末の記者会見の時に、すごいプロジェクトに参加させてもらっていることを実感しました。多くの報道陣が集まっていて事の大きさを感じましたし、本当に鎌倉にグラウンドができるんだなと」

2020年12月に開催された「鎌倉みんなのスタジアム」建設発表記者会見 【鎌倉インターナショナルFC】

「鳩スタ」にはアメリカで感じたスポーツ文化がある

 もともと海外志向が強かった藤田は、2018年に創設1年目の鎌倉インテルに加入したものの、3カ月ほどプレーした後にアメリカでの挑戦を決意。約2年間ほどクラブを離れてアメリカでプレーするなかで、地域のスポーツを一大イベントとして楽しむアメリカの文化に触れた。

「3部リーグのクラブでプレーしていたんですが、アメリカでは地域のクラブの試合に数百人の観客が集まるのがけっこう普通でした。田舎のチームだと、サッカーの試合が一大イベントなんです。声援を送ったり野次ったりというのがあって、それが選手のモチベーションにもつながることを実感しました。『鳩スタ』ができて、そういった環境が鎌倉にもできつつあるのをうれしく思います」

 週末に地域の人たちが集まり、地元クラブの試合を楽しむ。会場にはキッチンカーの飲食店が出店され、食べたり飲んだりと思い思いの時間を過ごすことができる「鳩スタ」の空間は、藤田がアメリカで見た光景にも近いものだ。

「『鳩スタ』ができて一番変わったのは、クラブが鎌倉に接点を持つ機会が増えたことだと思います。これまではチーム名に『鎌倉』とついていても、実際には練習は横浜でやっていたり、なかなか鎌倉との接点を持つことができていませんでした。今は鎌倉の街を歩いていてインテルのポスターが貼られているとすごくうれしいですし、自分がその一員であることに誇りを感じています」

『鳩スタ』での勝利後の集合写真 【㋚写真】

「鳩スタ」ができ、週末の試合に向けた準備も意識が変わった

 アメリカ時代に経験したのと同様に、多くの人たちが集まる中での試合は選手のモチベーションアップにつながることを『鳩スタ』でも実感している。『鳩スタ』での初の有観客試合となったデスペルーホ藤沢戦では、前半に先制を許したものの後半に藤田の2ゴールで逆転。昨シーズン、『鳩スタ』完成前には一度もなかった逆転勝利を記録した。

「多くの方が見に来てくれることは、プレーにも影響したと思います。日曜日の朝早くから自分たちの試合を見に来ることに時間を費やしてくれる人たちが目の前にいるので、変なプレーはできない。見られていることでより責任感も生まれて、週末の試合に向けた準備も意識が変わった気がします」

 開幕から多くの人たちが見守る「鳩スタ」で試合を行うことができる今シーズンは、神奈川県リーグ1部への昇格を果たす手ごたえも感じている。しかし、昇格は「目的」ではないとも藤田は考えている。

「サッカーは勝利を求めてやるものなので、必然的に昇格を目指して戦うことになります。ただ、一番にあるのはもっと地域とつながっていきたいということ。もっと多くの人たちに鎌倉インテルを知ってもらい、巻き込んでいきたい。個人的には、昇格はあくまでその手段だと思っています」

『鳩スタ』初の有観客でのリーグ戦は藤田航規の2ゴールで逆転勝利 【㋚写真】

鎌倉への貢献、「鳩スタ」が外国人も集まる場所になればいい

 鎌倉で生まれ育った藤田には、サッカーを通じて鎌倉に貢献したい、何かを還元したいという思いが強くあるという。

「この年齢でサッカーを続けている意味というのは、自分がうまくなりたいというだけではありません。自分が続けてきたサッカーを通して鎌倉に還元したい、ちょっとでも誰かに貢献したいという思いも自分の中には強くあります。貢献と言ったらちょっとおこがましいかもしれないですけど、鎌倉インテルが地域の人たちにとって週末の楽しみのひとつになれればいいなと思います」

【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 さらに、藤田自身のアメリカでの経験も踏まえて、「鳩スタ」が外国人も集まる場所になってほしいとも思っている。

「今はコロナ禍で難しい面もありますが、インターナショナルを掲げているクラブなので、『鳩スタ』が外国人の方たちも集まる場所になればいいと思っています。自分もアメリカに行った時にはなかなか人とつながることの難しさを感じたんですが、サッカーをきっかけに知り合いや友だちができて、楽しい生活を送ることができました。『鳩スタ』が、そういう場所になればいいなと個人的には思っています」

鎌倉「みんなのスタジアム構想」クラウドファンディング実施中!

【鎌倉「みんなのスタジアム構想」クラウドファンディングの詳細は下記の関連リンクをご確認ください。】

クラウドファンディング限定リターンとして勝ち色ユニフォーム登場!

【鎌倉インターナショナルFC】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント