【フィギュアスケート】北京五輪・女子シングル展望|日本勢はROCの表彰台独占を阻めるか

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【Getty Images/時事】

2014年ソチ五輪では17歳のアデリナ・ソトニコワ、2018年平昌五輪では15歳のアリーナ・ザギトワ。それに続き、おそらく2022年北京五輪でも、ROCのティーンエイジャーが金メダルを射止めるだろう。しかも金のザギトワと銀のエフゲニア・メドベージェワと、1・2を達成した4年前を上回る、表彰台完全制覇さえも予想される。

表彰台完全制覇を視野に入れるROC

中でも絶対的な優勝大本命として名を挙げられるのがカミラ・ワリエワだ。恐るべき15歳はシニア本格転向1年目の今季参加した5つの大会を全て勝ち取り、歴代最高得点を3度も更新した。

まさに完全無欠。北京五輪フィギュアスケート出場女子選手の中では唯一、3回転アクセルと4回転ジャンプの両方を自由自在に操る。つまり女子は4回転が禁止されているショートプログラム(SP)は、3回転アクセルで他を大きく突き放し、4回転解禁のフリースケーティング(FS)では、4回転であらゆるライバルたちにとどめを刺す。

しかもワリエワの長所はジャンプだけではない。膝を柔らかく使ったステップは軽やかで、長くしなやかな肢体が描き出すスピンは優雅そのもの。技術点では最高レベルの4が並び、出来栄え点でさらに高い加点を叩きだす。恐ろしい高速でリンクを駆け巡り、演技構成点ではしばし10点満点の評価さえも受ける。おかげで4回転を2種類3本組み込んだフリー「ボレロ」では、男子トップスケーター顔負けの高得点が約束されている。

ワリエワ以外にもROCには、とてつもなく強力な女子2選手が控える。現役世界チャンピオンのアンナ・シェルバコワもやはり、FSで4回転を飛ぶ。アレクサンドラ・トゥルソワは時に4回転5本という、男子でさえ世界で4人しか試みたことのない極めて難しい構成にさえ、勇敢に挑みかかる。

1月にエストニアで開催されたヨーロッパ選手権では、すでにワリエワ、シェルバコワ、トゥルソワの3人は仲良く表彰台に並んでいる。少女たちは軽やかに、北京五輪でも歴史的快挙をやってのけるかもしれない。

同じ国・地域の選手がフィギュアスケート同一種目の上位3席を独占したのは、オリンピック史上いまだかつて、たったの1度しかない。1908年大会の男子シングルに、5カ国から9人が参加し、スウェーデンの男子3人が全てのメダルを持ち帰っている。ちなみに北京五輪女子シングルには、23の国と地域から30選手が参戦する。

独占を阻む一番手は日本勢、そして…

ROC3強の一角を崩しにかかるのが、日本の女子3選手だ。今季のNHK杯を制した坂本花織はロシア5選手に混じって、日本女子として唯一グランプリ(GP)ファイナル進出を決めた。持ち味の切れ味鋭いスピードと大きなジャンプに加え、フランス人振付師ブノワ・リショーの個性的なムーブメントを体得し、今季は表現力でも極めて高い評価を受ける。シニア転向1年目にオリンピック代表まで駆け上がった4年前とは違って、21歳の全日本チャンピオンには、大舞台での経験も備わっている。

4年前の悔しさをバネに実力を積み重ねてきた樋口新葉と、やはりシニア転向1年目のフレッシュな勢いに乗ってオリンピック初出場を決めた河辺愛菜は、3回転アクセルでROC勢に立ち向かう。世界でも数選手しか飛びこなせない難ジャンプをSPで成功できれば、表彰台を狙える位置でFSへと折り返すことも可能なはずだ。

実際に今季、SPを丁寧にノーミスでこなすことで、ルナ・ヘンドリックス(ベルギー)はROC勢を幾度も脅かしてきた。GPシリーズ・イタリア杯のSPではシェルバコワを上回って首位に立ち、総合でも3位の好成績。1月の欧州選手権でも快挙を繰り返し、ショートではワリエワに次ぐ2位に付けた。初出場だった平昌五輪の16位を上回る成績どころか、北京五輪では今季3度目のサプライズを起こしたい。

またロシアで生まれ、ロシアでフィギュアスケートを始めた選手たち……。エカテリーナ・リャボワ(アゼルバイジャン)、ヴィクトリア・サフォノワ(ベラルーシ)、アナスタシア・グバノワ(ジョージア)、エカテリーナ・クラコワ(ポーランド)、アナスタシア・シャボトワ(ウクライナ)と、ロシアの底力をあらためて思い知るオリンピックにもなりそうだ。

一方でロシアと並ぶフィギュアスケート大国、アメリカ代表の3選手からも目が離せない。マライヤ・ベルの伸びやかな表現力、カレン・チェンの密度の濃いプログラムはもちろん、ジュニア時代はワリエワと対等のライバル関係を築いてきた16歳アリサ・リウのポテンシャルを決して過小評価してはならない。
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