【週刊グランドスラム132】『グランドスラム59』のキャンプ取材がスタートする
内輪話をすると、取材の段取りはこうだ。通常は9時前後にグラウンドに出向き、まずはマネージャーと当日の流れを確認。極力練習に支障のないように、監督、選手に話を聞く。その間カメラマンは練習風景を撮影する傍ら、顔写真撮影用のセッティングと大忙しだ。昼休憩の間には、特写が必要な選手に様々なポーズを取ってもらい、さらには新人の集合写真を。練習中に話を聞き漏らしたり、撮影が終わり切らなければ、練習の終了を待ち、あらためて時間を取ってもらう。
最も時間を要するのは、名鑑用の顔写真撮影だ。万が一でも間違いがないように、用意したホワイトボードにスタッフと選手、各自で背番号と氏名を記入してもらい、それを手にして「はいポーズ」。サクサクと進めばいいのだが、真面目な顔をしてもらいたいのに、順番待ちのチームメイトが笑わせたりするから、時には時間がかかる。数年前からは、球場のビジョン用に笑顔バージョンも撮影しているので、笑わせるならぜひその時に(笑)。
各チームとも、とても協力的で概ねスムーズに終わるのだが、天候不良で室内練習のみとなるとカメラマンは大変だ。どうしても、練習風景のバリエーションが限られるし、光量も足りないし……。そんな時は、僅かな雨の切れ間を見計らい、選手に屋外に出てもらうことになる。
リモート取材が多くなった中で貴重な対面取材の機会
時には思わぬアクシデントもある。例えば、取材日に合流しているはずの新人が、学校の関係で不在。その場合は後日、あらためての撮影となる。新調するユニフォームが全員分出来上がっていないこともある。その際は数名分のユニフォームを着回して撮るから、自分のものと異なる背番号が写らないよう、ポーズの工夫が必要だ。誌面で採り上げる予定だった選手の奥様が当日、めでたく出産したため、急きょ病院に駆けつけた、などということもあれば、不注意で摂った昼食にアレルギー反応が出た選手もいた……。
それでも、各指揮官の野球に関する深い洞察を聞いたり、選手の素顔を垣間見たり、思わぬエピソードが聞けたりするキャンプ取材は、ライターにとっては楽しみな時間だ。時には2週間ほどの出張もあり、コロナ禍になる前は各地の味を楽しむ夜もまた格別。その間、帰京後に格闘することになる原稿については極力考えないようにしていた。
そもそも、ここ2年はリモート取材が多かったから、対面して取材できること自体が新鮮だ。思えば、「クルーズ船で新型コロナウイルスの感染者が見つかりました」というニュースが世間を騒がせ始めたのが2020年のキャンプ取材出張中。ドラッグストアではマスクが品切れになり、カメラマンと「東京オリンピックは大丈夫かな」などと話していたものだ。その時は、まさか延期になるとは思ってもいない。今回はつまり、コロナ下での3度目のキャンプ取材ということになる。オミクロン株による感染の急拡大で、列島は厳戒モード。4班とも、取材が本格化するのは2月に入ってからなので、その頃には何とか沈静化の兆しが見えるといいのだが。読者の皆さまも、どうかご自愛ください。
(文・写真=楊 順行)
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