【新日本プロレス】三つ巴のベルト問題で揺れる中、オカダ・カズチカ選手に直撃!

チーム・協会

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

いよいよ目前となった1月4日(火)、5日(水)『WRESTLE KINGDOM 16 in 東京ドーム』2連戦! 初日のメインイベントで鷹木信悟選手のIWGP世界ヘビー級選手権に挑戦する『G1 CLIMAX 31』覇者のオカダ・カズチカ。

三つ巴のベルト問題で揺れる中、いまレインメーカーは何を思うのか? その胸中を直撃インタビュー!!

撮影/中原義史


■『WRESTLE KINGDOM 16 in 東京ドーム』
2022年1月4日(火) 15:00開場 17:00試合開始(※第0試合は16時〜予定)
東京・東京ドーム
 
2022年1月5日(水) 15:00開場 17:00試合開始(※第0試合は16時〜予定)
東京・東京ドーム

結果的には本当にいい1年でした。「コロナと戦う」っていう意味でも希望も見えてきた気がしますし、いろいろな意味でシッカリ戦うことが出来た

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

──まず、この2021年という年はオカダ選手にとってはどんな1年でした?

オカダ 水戸黄門でしたね。

──水戸黄門……その心は?

オカダ 「山あり谷あり」だったということですね。

──なるほど。「人生楽ありゃ苦もあるさ」と。

オカダ いい時もあれば悪い時もあり……って感じで、コロナにかかったのもそうですし、なかなか結果が出なかったことも含めて本当にいろんなことがあった1年でした。

──上手く行き始めたかな、と思ったら、また急停止してしまったり。

オカダ そうですね。1.4東京ドームでオスプレイに勝って、2.27大阪城ホールでEVILにも勝って、「さあ、これから行くぞ!」っていう時に『NEW JAPAN CUP』の1回戦で鷹木さんに負けてしまったり、5月に予定されていた東京ドームでタイトルマッチが決まったと思ったらコロナになってしまったり、前半はなかなか波に乗れない状態でしたからね。そういう状態の中で『G1』では最終的に優勝することが出来たので、結果的にはいい1年だったのかなと。

──ただ、後半に入って一気に巻き返した印象がありますね。

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ なので、結果的には本当にいい1年でした。「コロナと戦う」っていう意味でも希望も見えてきた気がしますし、いろいろな意味でシッカリ戦うことが出来たんじゃないかなと。

──オカダ選手と言えば、年末になると東京スポーツのプロレス大賞絡みのお話がよく出てきますが、今年は1.4の相手である鷹木選手がMVPになりました。

オカダ まあ、今年のMVPは鷹木さんじゃないとおかしいと思いますよ。それぐらいの活躍をしていましたし、あの人以外はあり得ないかなというぐらいの活躍だったと思います。

──ただ、オカダ選手はなんと2014年から昨年まで7年連続でベストバウト賞を受賞されていますよね。コレは本当にとんでもなく凄まじい記録ですけど、今年は受賞出来なかった寂しさはありましたか?

オカダ 寂しさはありますけど、それ以上の試合が出てきたっていうことだと思いますし、この悔しさを糧にまたいい試合をしていきたいなと思います。

──この7年連続ベストバウト賞受賞の前は2年連続MVPを受賞されている。そういう意味で、この10年はまさにオカダ・カズチカの10年であり、新日本プロレス躍進の10年でもありました。

オカダ それこそ10年ぐらい前の新日本プロレスは、後楽園ホールが超満員になったって喜んでいたような感覚もありましたからね。そこからいつでも超満員のような状態に持ってくることが出来た。しかも、自分で出来たっていう自信もありますよね。結局みんなの活躍もあったんですけど、自分中心にやってこれたかなっていう自信はあります。

──そのプライドは凄く感じますし、その10年の躍進の象徴が権利証の代わりに持ち出した4代目IWGPヘビーのベルトなのかなとも思うんですけど。

オカダ まあ、IWGPは新日本プロレスの象徴であることは間違いないし、IWGPがない時代もありましたけど、IWGPリーグ戦から始まってベルトになって、初代、2代目、3代目、4代目といろんな形のベルトがあった。その中でも4代目のIWGPと共にこの10年は盛り上がってきたという感覚はありますね。

やっぱり歓声がさらに戦いを面白くしてくれるんだなと。日本も早くああいう状態に戻れる日が来たらいいなと思います

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

──ちなみに、この10年、新日本プロレスは業界を席巻しましたけど、その最大の敵がコロナだったという感覚はありますか?

オカダ ただ、コロナ禍だったからこそ体験させてもらったことはあると思うんですよ。無観客大会もそうですし、拍手だけで応援してもらう中でプロレスをしたこともそうですよね。お客さんの歓声でどれだけ自分たちは力を得ていたのかも分かりましたし、なんだったら超満員の会場が続いていて慢心していた部分もあったと思うんですよ。

──ああ、なるほど。

オカダ またシッカリ気を引き締めて、新日本プロレスの凄さをプロレスだけじゃなく、会社としても見せていかないとダメかなと思えたので、いいタイミングと言ったら良くないかもしれないですけど、コロナがあって良かったと自分は思いたいですね。ボクは、やっぱりどんな状況でもポジティブでいたいので、いろんな経験をさせてもらったと思っています。

──11月にアメリカ遠征に行かれて、現地ファンの歓声をひさびさに浴びましたけど、改めて歓声の良さを実感されたのでは?

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ やっぱり気持ち良かったですね(笑)。それしかないですよ。「プロレスの盛り上がりって歓声なんだな」と改めて思いました。会場に一体感が出るというか、拍手だけだとどっちを応援しているか分からないじゃないですか? 

──たしかにわかりづらい部分もありますよね。

オカダ やっぱり歓声がさらに戦いを面白くしてくれるんだなと。日本も早くああいう状態に戻れる日が来たらいいなと思いますね。

(鷹木信悟は)「強いレスラー」じゃないですか? でも「強いだけ」ですね

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

──そのコロナ禍で生まれたチャンピオン・鷹木選手が今年は大活躍でしたけど、鷹木選手にとってポイントとなった試合は『NEW JAPAN CUP』1回戦で優勝候補だったオカダ選手を倒した一戦だったとおっしゃってました。

オカダ ただ、ボクにとっては“普通の一戦”ですかね。あの試合で、鷹木さんは波に乗れたかもしれないですけど、ボクからしたらただの負けた試合です。しかも、鷹木さんは今年の『NEW JAPAN CUP』で優勝したわけじゃないし、オスプレイが優勝して、その後世界ヘビー級のチャンピオンになったわけで。ボクはその試合ではないですね。

──ただ、鷹木信悟という選手を改めてプロレス業界に、強烈に認識させた試合だったのかな、という気はしますけど。

オカダ ボクにとっては強烈にではないですね。1回負けただけで「凄えな」とは思わないですし。

──なるほど。その後の6.7大阪城ホールのIWGP世界ヘビー級王座決定戦でも対戦していますが、その試合の前には鷹木選手に厳しいことを言っていた印象があるんですよ。

オカダ 何か言ってましたっけ?

──「オレと対等にモノを言えると思うなよ」とか。

オカダ カッコいいっすね(笑)。

──「住んでる世界もプロレスラーとしてのレベルもだいぶ違う」ともおっしゃっていて。

オカダ でも、負けちゃったんですよね(笑)。

──ええ。試合後には「素晴らしいチャンピオンじゃないかと思います」と認める発言もあったんですけど、現時点で改めて鷹木選手というレスラーをどう見ていらっしゃいますか?

【新日本プロレスリング株式会社】

オカダ まあ、「強いレスラー」じゃないですか? でも「強いだけ」ですね。……やっぱり鷹木さんにも迷いはあると思うんですよ。まだオスプレイには勝ってないですからね。だから、ここで『G1』チャンピオンのボクを倒して、オスプレイも倒せば落ち着く部分はあると思います。やっぱりオスプレイに勝ってないからこそ、引っかかっている部分はあるんじゃないですか? 

──なるほど。

オカダ ただね、チャンピオンって、なかなか難しいですよ。ボク自身もそうでしたから。初めてチャンピオンになった時はただのチャンピオンですよ。チャンピオンとして組まれた試合で、ただ結果を残していた。最初は、プロレス界のことを考える余裕はなかったです。必死に戦って終わりというか、結果的に新日本プロレスのためにカネの雨を降らせたことにはなったんですけど、2回目のほうが余裕はありましたね。

──チャンピオンになるたびに発見や気付きがあったり、どんどんグレードアップしていくということですか?

オカダ やっぱり1回目じゃ難しいですよね。それは棚橋(弘至)さんや内藤(哲也)さんもそうだと思いますよ。

──なるほど。何回かベルトを獲った選手にしか分からない景色があると。

オカダ だから、ヘンな言い方ですけど、鷹木さんは“チャンピオン初心者”なんですよ。もちろん強いんですけど、強いだけになってしまう。飯伏(幸太)さんもこの前が初めてでしたっけ?

──そうですね。今年の1.4東京ドームで獲ったのが初めてのIWGPヘビー級王座の奪取でした。

オカダ その後に統一して、世界ヘビー級チャンピオンになったわけですよね? だから、ここまでIWGP世界ヘビー級のチャンピオンは“初心者しかいない”んですよ。

──たしかに。オスプレイ選手もそうですしね。

オカダ だから、なんか物足りなく感じるんですよ。だって、今までプロレス界でしてきたことでは、オレは負けてないしって思いがありますから。

初めてチャンピオンになった人はやっぱり物足りなく感じるんですよ。「強いけど、強いだけ」というね。

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

──逆にオカダ選手から見て、鷹木選手たちに“足りないもの”って何ですか?

オカダ “敗北”じゃないですか? つまり、ベルトを失うっていうことですよね。そんなこと誰も経験したくはないですよ。でも、失ったからこそまた強くなりますし、見えてくる景色がある。オレがこれだけ新日本プロレスのためにやってきたっていう自信もつくし、この期間はオレの時代だったという感覚も生まれるんですよ。ボクはそれを棚橋さんに教えてもらいましたから。初めてベルトを獲った時の相手も棚橋さんですし、東京ドームで初めてベルトを懸けて戦ったのも棚橋さんだったし、その東京ドームではなかなか棚橋さんに勝てなかったですし、本当にいろんな経験を棚橋さんとしてきたっていうのはありますね。

──棚橋選手との戦いを通じて受け取ったものは、やはり相当大きかったですか?

オカダ まあ、あんまり褒めると棚橋さんが調子に乗っちゃうんで(笑)。でも、みんなそうだと思いますよ。初めてチャンピオンになった人はやっぱり物足りなく感じるんですよ。「強いけど、強いだけ」というね。

──その鷹木選手は「オカダからは焦りを感じる。今年1年はうまくいかないこともあったし、歯車が狂って焦ってんじゃないか?」とおっしゃっていたんですよ。4代目IWGPのベルトを持ったことも「令和の時代になっているのに平成にこだわってる」とおっしゃっていましたね。

オカダ 実際は、4代目のベルトも令和にかかっているんですけどね。

──ただ、「4代目のベルトをどうするのか、ハッキリ言わないのはマニュフェストをハッキリ言わない政治家と一緒だ。プロレスラーだったら公約をハッキリ言って、その過程を見せろ。それがプロだ」って言ってました。

オカダ ボクはプロレスラーは過程じゃなくて夢を見せていかなきゃいけない仕事だと思いますし、歯車が本当に狂ってたら『G1』だって獲れてないですよ。……焦ってるのかな? まあ、焦っててもいいと思うんですよ。自分では気づいていなくても、周りが焦ってるって言うんだったらそれはそれでいいと思います。気が抜けてるわけじゃないんで。

──べつに達観しているわけじゃないと。

オカダ ハイ。鷹木さんの強さももちろん認めていますし、正直余裕はないですよ。その後にオスプレイとの戦いもあるわけですからね。そういう意味ではシッカリ気は引き締めていますね。

──鷹木選手からは、ファンがオカダ選手に完全に乗れてないのではないか、という指摘もありました。

オカダ まあ、乗ってくれる人だけ乗ってくれればいいです。そういう人たちに支えられてボクたちはプロレスをやっているんでね。ボクに乗れないのであれば鷹木さんに乗ってくれてもいいし、それは気にしてないですね。何しろ『G1』が終わって3日後には後楽園のセミファイナルで試合でしたから。「『G1』ってなんだったのかな?」って感じたんですよ。優勝して「はい、おしまい」って。ただの東京ドームの挑戦者決定戦になってしまっている気が凄くしたんですよね。

──『G1』優勝者の価値に疑問が浮かんできたと。

オカダ 今まではIWGPを持っている側だったから分からなかったんですけど、7年ぶりに優勝してそこに気がついて、4代目のIWGPベルトを権利証代わりに持ってきたのも、もっと『G1』の価値が上がればいいかなと思ったからなんですよ。

──そこも優勝を何度か獲っているからこその、気付きというか。

オカダ そうですね。まあ、“『G1』を獲ったことのない人”にはわからないでしょうけど。

本当の気持ちを言うと、鷹木さんとオスプレイが先に試合をやって、まずは本当のチャンピオンを決めてくれって思いますよ。

【新日本プロレスリング株式会社】

──そして4日の鷹木戦に勝った場合、5日はオスプレイ選手と防衛戦です。鷹木選手とは全く違う感情がありますか?

オカダ オスプレイにはそんなに感情はないですよ。今年の東京ドームでも勝ってるし、絶対に倒したい相手でもないですし、「なんでオスプレイがベルトを持っているの?」っていう疑問もないですし。「本当のチャンピオンはどっちだ?」っていうのは鷹木さんとオスプレイ、二人の問題ですからね。

──アメリカの11.14『BATTLE IN THE VALLEY』に出場された時、オスプレイがリングに上がって対戦要求してきてもかなり簡単にOKしてましたもんね。

オカダ まあ、勝ったら防衛するっていうのがチャンピオンの使命じゃないですか。

──自分がチャンピオンになったら、次の挑戦を受けるのも当たり前だと。

オカダ そうなれば4日も5日もどっちも試合が出来るっていう、そのありがたさもありますし、どっちにしろボクは勝つしかないので。オスプレイはオスプレイで鷹木さんに負けてるわけじゃない、ボクはどっちもチャンピオンだと思っているし、東京ドームの対戦相手としては両日とも“いい相手”だと思います。だから、しっかりとコンディションも調整していかないとキツい戦いになるかなとは思ってますけどね。

──実現したら、どちらの試合も相当な激戦になることは必至ですよね。

オカダ ただ、本当の気持ちを言うと、鷹木さんとオスプレイが先に試合をやって、まずは本当のチャンピオンを決めてくれって思いますよ。その上でIWGP世界ヘビー級王者vs『G1』チャンピオンでいいじゃないかと。

──ああ、先に「どっちが本物のIWGP世界ヘビー級王者か論争」にケリをつけてほしいと。

オカダ でも、単純に4日も5日も東京ドームに出たいですし、どっちもメインイベントに上がりたいですし、いろんな人に注目してもらって新日本プロレスを広めたいという気持ちがありますから。2日連続でタイトルマッチって、どの競技でもあり得ないことだと思うし、4日も5日もタイトルマッチ連戦はキツいなって思いますけど、それが出来るのがプロレスラーの凄みなんだ、ということを改めて伝えることになると思いますね。

──こんな離れ業はプロレスラーの中でも、本当に選ばれた人間にしか出来ないことですよね。

オカダ まあ、前回は2日目に負けてますし、今回は2日連続で勝ちたいので、しっかり戦っていくだけですね。

──わかりました。それでは最後に東京ドーム2連戦に向けて、一言お願いします。

【新日本プロレスリング株式会社/中原義史】

オカダ 新日本プロレス創立50周年って言われていますけど、ボクが意識することは全くなくて、何周年でも、何月何日の試合でも、1.4じゃなくても、どの試合でもいつも気合いは入れてます。ただ、節目の年であることは確かなんで、この新日本プロレス50年の歴史を背負うつもりで戦いますし、これから先の50年も「オカダのプロレスがあったからこそ……」って言われるような戦いをします。その始まりとして1.4と1.5でいい結果を残したいので、ボクだけじゃなくて新日本プロレスの応援を、プロレスの応援をよろしくお願いします!
(了)
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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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